尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と岸田文雄首相は16日の首脳会談で、独島(トクト)や日本軍「慰安婦」問題など韓日間の敏感な懸案について、一体どのような話を交わしたのだろうか。これに対する韓日当局の釈明が食い違い、正確な事実を把握するのは難しいが、両国政府の説明とマスコミ報道をまとめると、どのような議論が行われたのか最大限事実に近く対話内容を再構成することができる。
結論から言えば、両首脳は(1)慰安婦合意(2)福島県産などの水産物輸入(3)2018年末に発生した「哨戒機問題」など、両国間の3つの敏感な懸案について意見を交わしたものとみられる。ただ、独島▽佐渡鉱山のユネスコ世界遺産登録は、韓国政府の説明どおりこの日の話題にはならなかった可能性が高い。
先の3大懸案について議論が行われたと判断する根拠は、日本のマスコミが政府高官の話として両首脳の対話内容を非常に詳しく報道しているためだ。産経新聞は20日付で、日本政府高官の話として、岸田首相が尹大統領との首脳会談で、慰安婦合意▽福島県産などの水産物輸入▽哨戒機問題に対する事実認定と再発防止などを求めたと伝えた。
この報道によると、岸田首相が哨戒機問題について言及すると、尹大統領は「これは互いの信頼関係に問題が生じて発生した。これから信頼関係が生まれていけば、互いの主張をかみ合わせていける」と述べた。同紙は尹大統領のこの回答に対して、韓国政府はこれまでレーダー照射自体を認めなかったとし、尹大統領は首脳会談で事実関係を否定しなかったという解釈を付け加えた。日本の海上自衛隊が主張するように、韓国の艦船が日本の哨戒機に向かって射撃統制レーダーを照射したということを尹大統領が事実上認めたかのように報道したのだ。しかし、尹大統領はこのような問題が発生した理由は両国間に信頼関係がなかったためだと述べただけで、日本の主張を受け入れたわけではないものとみられる。
同紙はさらに、慰安婦合意の履行や福島県産などの水産物の輸入規制の撤廃などについては「岸田首相は(これらも)求めたが、進展はなかった」とだけ伝えた。岸田首相がこの問題を取り上げたが、尹大統領が反応しなかったか、日本の望む回答をしなかったという意味と解釈できる。パク・チン外交部長官は18日、「韓国放送」(KBS)に出演し、慰安婦問題などが「議題として議論されたことはない」とし、「首脳間の対話は公開できない」という曖昧な立場を示した。当初、両国は慰安婦問題を議題にはしなかったが、岸田首相がその場でこの話を持ち出したことを暗示する話だ。
このうち国民の関心度の高い慰安婦合意は、2015年12月、岸田首相が当時の外相として合意内容を発表する記者会見に臨んだ。そのため2021年10月に首相に就任した後も合意履行を主張し続けてきた。日本はこの合意の履行に関して、韓国政府が2018年11月に和解・癒やし財団を解散させ、日本大使館前の「平和の少女像」も撤去していないなど、合意を守っていないとする立場だ。また、国際社会で韓国政府が慰安婦問題に言及するのも合意違反だという立場を維持している。福島県産の水産物の輸入撤廃も、国民の健康権と直結する食の問題であるため、世論の反応に敏感にならざるを得ない。しかも、日本政府の世界貿易機関(WTO)提訴に対し韓国がかろうじて逆転勝訴した事案であり、譲歩が容易な問題ではない。
しかし、独島問題と朝鮮人強制動員が大規模に行われた新潟県の佐渡鉱山の世界遺産登録問題は、当日具体的な議論は行われなかったものとみられる。産経新聞もこの日の報道で「(独島・佐渡鉱山を巡る問題に関しては)個別に取り上げなかったという」と伝えた。
ただし、今後日本政府がこれらの問題の解決を要求してくることは明らかだ。岸田首相の側近である木原誠二官房副長官は16日、首脳会談後に日本の記者団と行った非公開ブリーフィングで、独島▽慰安婦▽哨戒機▽水産物輸入規制などの懸案についてどのような対話が交わされたのかという質問に対し、「韓日の懸案についてはうまく対処していこうという趣旨を明らかにした。これらの事案の中には竹島問題も含まれる。あわせて慰安婦の問題も日韓合意の着実な履行を求めた。レーダー照射問題はわが国の立場に沿って発言した。(水産物の輸入規制についても)言及した」と述べた。発言の意味は理解しにくいが、慰安婦▽哨戒機▽水産物輸入規制については明確に言及し、独島問題は同日取り上げなかったが、今後両国が論議しなければならないテーマだと認識しているという意味と解釈できる。