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[梨泰院惨事]事を大きくした警察の対処…通報あったのに警官増員なし、なぜ?

登録:2022-11-03 03:38 修正:2022-11-03 09:01
警察のずさんな対応「首脳部責任論」へと拡大
2日、梨泰院惨事犠牲者の追悼空間が設けられた梨泰院駅1番出口から梨泰院交番が見える。惨事当日の政府と警察の対応に大きな問題があることが明らかになり、激しい批判が起きている/聯合ニュース

 梨泰院(イテウォン)惨事発生の4時間前から「圧死しそうだ」という通報が入るなど、危機の兆候が強く表れていたにもかかわらず、警察が警官を追加投入したのは最初の通報を受けてから5時間が過ぎた深夜0時ごろだったことが明らかになり、警察首脳部の判断ミスに対する批判世論が高まっている。警察の独自捜査でも、通報を受けたソウル警察庁が龍山(ヨンサン)警察署に指令を下した過程と警察力投入が遅れた理由を集中的に掘り下げるとみられる。

 2日の本紙の取材を総合すると、ソウル警察庁による機動隊の追加投入は、死者がすでに多く発生していた深夜0時近くになってようやく行われた。事実上、多くの犠牲者が発生する原因を提供したわけだ。さらには、事件現場の総責任者である龍山警察署のイ・イムジェ署長は惨事直前まで龍山の大統領室の近くで「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領退陣を求める」集会の現場の規制にあたっていたことが確認された。この集会は午後9時ごろには終わっていた。市民の「圧死」を伝える通報が入ってきていた時刻だ。このような警察の無責任な対応が相次いで明らかになったことで、警察首脳部、特にソウル警察庁のキム・グァンホ庁長とユン・ヒグン警察庁長官の責任論が強く提起されている。

 112番通報は、112状況室から管轄の警察署に指令を出すシステムになっている。今回の梨泰院惨事の場合は、ソウル警察庁112状況室が通報を受け、龍山警察署に確認するという過程を経た。問題は、状況把握を通じた上部のきちんとした指令が下されなかったということだ。警察出身のある国会議員は本紙に対し「警察力の増員決定もソウル警察庁長が行うもの」とし、「警察首脳部は龍山警察署を問題視しているが、ソウル警察庁こそ(問題の)核心」だと指摘した。

 上部への報告そのものも遅れた。ソウル警察庁長が最初の報告を受けたのは、事故発生から1時間21分も経ってからだった。警察の説明によると、龍山警察署のイ・イムジェ署長は29日午後11時34分にソウル警察庁のキム・グァンホ庁長に初めて報告の電話を入れたが、キム庁長は電話に出なかった。キム庁長は夜11時36分の2回目の電話で、口頭で事故発生の報告を受けた。キム庁長が事故現場に到着したのは30日午前0時25分。ユン・ヒグン警察庁長官が最初の報告を受けたのも、事件発生から1時間59分後の午前0時14分。イ・イムジェ署長が尹大統領退陣集会の警備の指揮にあたっていたことが、報告の遅れに影響を与えたとみられる。

 2日の大統領室の発表によれば、事故発生38分後の29日午後10時53分に消防庁状況室から大統領室国政状況室に事故内容が報告され、国政状況室長が午後11時1分に尹大統領に報告した。尹大統領が事故の報告を受けた時刻より、ソウル警察庁長と警察庁長が状況を把握した時刻の方が遅かったというあきれた状況だ。警察が消防当局や大統領室と直ちに連絡を取れる大統領室国政状況室という「ホットライン」が構築されているにもかかわらず、警察首脳部が事故発生を把握したのが大統領室より1時間ほど遅かったというのも疑問点だ。ソウル警察庁は、そもそも龍山警察署の支援要請が遅れたとの立場だ。ソウル警察庁の関係者は「龍山警察署がソウル警察庁に機動隊の支援を要請したのは、事故が発生して1時間以上経った29日午後11時24分ごろだった」とし、「要請を受け、直ちに機動隊13個中隊を出動させた」と釈明した。しかし「圧死」を警告する通報が事件発生の4時間前からあったことを考えると、適切でない釈明にみえる。

 現場に出動する警察力が足りなかったわけでもなかった。事故当日の夜、龍山区の三角地(サムガクチ)駅付近と光化門(クァンファムン)で集会が行われ、機動隊が投入されていたが、両集会とも午後10時以前に解散し、梨泰院近隣に待機中の機動隊もあったことが分かっている。実際に龍山警察署は同日午後11時17分ごろ、管内に待機していた機動隊を投入している。光化門で行われた集会に動員されていたために投入する警察力がなかったのではなく、適切な上部の判断と命令がなかったのだ。ある機動隊所属の現職警察官は「緊急の状況が生じれば、すでに他の現場に投入されていたり、退勤した機動隊でも、2時間以内に出動できるようになっている。判断と決定さえすれば、あとは投入すれば良い」と説明した。

 大統領室移転などに伴うこのところの大統領関連の警護のため、龍山警察署の警備方面の担当警官の疲労が蓄積していることで、出動が遅れたのではないかとの疑惑も提起されている。匿名の複数の現職警察官たちは2日、本紙に対し「龍山警察署の警備担当の警察官たちは、このところ業務過重で非常に苦しんでいる」という趣旨の発言をした。梨泰院惨事発生後、最初に収拾にあたるべき龍山警察署の警備要員が、本当に必要な瞬間に投入できなかったということだ。

 最初の112番通報を行ったAさん(52)は「梨泰院駅1番出口の前に立っていた時、ものすごい数の人が、事故の起きた路地に押されるようにして上っていくのを見て112番に通報した。人がこんなに集まることは分かっていたのに、なぜ警察は警官を配置しなかったのか疑問だ。主催者がいなかったというのは責任逃れだ。果たして政府は最善を尽くしたのか問いたい」と指摘した。

チェ・ユンテ、ナム・ジヒョン、ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1065508.html韓国語原文入力:2022-11-02 20:31
訳D.K

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