梨泰院(イテウォン)惨事と関連し、警察庁特別捜査本部が2日、ソウル警察庁と龍山(ヨンサン)警察署など8カ所で家宅捜索を行った。惨事発生4時間前から絶叫に満ちた112通報が殺到したにもかかわらず、全く対応できなかった経緯を把握するためにも、現場で手がかりを探すのは必要だ。だが、現場の対応は上層部の指揮体系と切り離して考えることはできない。見せかけの捜査や現場責任論に流れることを警戒すべきだ。
警察庁は1日、梨泰院地域を管轄する龍山警察署を相手に監察に着手した。これについて第一線の警察官たちは、当日現場で勤務した人々に責任を負わせようとしていると言い、指揮部を強く批判している。梨泰院交番に勤めるある警察官は、警察イントラネットに「解散に当たる警察の数より地下鉄とバスで集まる人の数が数倍多く、他の通報にも対応しなければならなかったため、20人ではとうてい間に合わなかった」と書き込み、当時の状況を振り返った。梨泰院交番所属の警察官が、市民を帰そうと泣き叫び、孤軍奮闘する動画を指揮部も見ていないわけではないだろう。
ソウル地域の安全と警備などを総括する機関の責任者であるソウル警察庁のキム・グァンホ庁長が、惨事発生から1時間21分後に初めて報告を受けた事実も衝撃的だ。行政安全部はもちろん、大統領室よりも遅れて惨事発生の事実を知ったわけだ。龍山警察署のイ・イムジェ署長が携帯電話で報告したというが、すべての通報がソウル警察庁の112状況室に集まることを考えると、到底納得できないことだ。第一線の警察署で対応し切れないことが発生すれば、ソウル警察庁レベルで人員配置などを決めなければならないという点を考えると、機動隊を適時に投入できなかった決定的な原因はここにあるのかもしれない。梨泰院惨事の根本的な原因は、事前にも事後にも警察の指揮体系が全く機能しなかったことにあるのが、ますます明確になっている。徹底した調査が求められる。
このような中、警察庁が主な市民団体の動向を把握し、内部文書を作った事実も明らかになった。今回の惨事が大統領執務室の移転問題などに飛び火する可能性があり、進歩派団体が「政権退陣運動」を展開するかもしれないという内容が書かれていた。市民社会を敵対的に捉える見方も問題だが、惨事直後に警察が真っ先に政権の安危を案じていたということに呆れるばかりだ。かつて査察を日常的に行っていた情報警察の復活という指摘も避けられないだろう。同文書の作成経緯と、どこまで報告されたのかも必ず明らかにされなければならない。