ハロウィーン(31日)を3日後に控え、ソウル龍山区梨泰院(ヨンサング・イテウォン)はすでにお祭りムードだった。「スーパーマリオ」、「スパイダーマン」など様々なコスチュームを着た人々が三々五々集まってきた。そして、ハロウィーンの悪夢が梨泰院を襲った。
昨年もハロウィーンの雰囲気を楽しもうとする市民17万人が3日間にわたり梨泰院を訪れたが、今回のハロウィーンは3年ぶりにノーマスクでの開催だったため、いつにも増して活気に満ちていた。警察はハロウィーン期間中一日あたり10万人の人出を予想した。コロナ禍で大打撃を受けた自営業者たちも期待を隠せなかった。同日、3年ぶりにフェイスペインティングの露店を開いたというDさん(22)は「2019年当時、400人ほどの方々に足を運んでいただいた。今年も多くのお客さんが来てくれると思っている」と語った。
■ 28日夕方から集まった人たち…警察も「1日10万人の人出を予想」
28日、「花金」を楽しもうとする仕事帰りのサラリーマンたちまで加わり、梨泰院は足の踏み場もないほど賑わっていた。居酒屋の前には人だかりができ、ハミルトンホテル裏の路地を通るのに、肩がぶつかり合うほどの混雑だった。すでに危うい瞬間もあった。当時、SNSには「人波に押されて転んだ」という書き込みが掲載された。しかし、事故当日の週末より比較的人出の少ない平日の夕方だったため、人命事故にはつながらなかった。29日にも人目を引く仮装をした人たちが、午後の早い時間から梨泰院を訪れた。
ユニークな雰囲気を楽しむために子連れで梨泰院に来たファミリー層もいた。妖精のコスチュームを着た子どもと共に梨泰院を訪れたJさん(35)は「昨年も子どもと一緒に梨泰院に来たが、その時より人が多いようだ。子どもが喜んでいる」と楽しそうに語った。時間が経つにつれ、ハミルトンホテル周辺の「群衆密度」が急激に高まった。ハロウィーン期間中、1日に約10万人が集まると予想していた警察は、特別な追加措置を取らなかった。これに先立ち、警察は「犯罪への対応」のため、200人以上を梨泰院一帯に配置すると発表した。
■ 29日午後10時15分、最初の通報「人が下敷きになっている」
お祭りの現場で苦しい悲鳴が響き渡ったのは29日午後10時10分頃だった。ソウル総合防災センター(119)に午後10時15分頃、「人が下敷きになっている」という最初の通報があった。前日と同日午後、人々の笑い声でいっぱいだったハミルトンホテル脇の路地だった。幅3.2メートル、長さ40メートルほどの路地は、梨泰院駅方向に向かって急な下り坂になっている。119への通報から2分後の午後10時17分頃、龍山消防署から最初の救助隊が出動した。
ハミルトンホテルの向かい側の梨泰院119安全センターから消防ポンプ車と救急車が事故現場に到着したのは10時21分だったが、人でいっぱいの路地の入り口までたどり着くのは容易ではなかったという。惨事現場を埋めた人波をかき分けることができず、救助活動が本格的に始まったのはすでにゴールデンタイムがかなり過ぎた後だった。すぐそばで惨事が起きていることも知らなかった人たちは酒を飲みながらハロウィーンを楽しんでいた。
■ 11時50分、消防当局「対応第3段階発令」
下り坂の現場で、人たちは心停止状態で救助された。消防当局は心肺蘇生法が必要な救助スタッフの増員を要請するため、対応第2段階を発令した。11時50分頃、消防当局は対応第3段階を発令し、ソウルを含む首都圏全域の消防救急車とスタッフを総動員した。
■ 午前1時45分、最初の公式発表「2人死亡」
消防当局は翌午前1時45分頃、2人が死亡したと初めて公式発表を行った。その後、死亡者数は急増した。消防当局は午前2時50分頃、公式ブリーフィングを開き「ハロウィーンイベント中に群衆が転倒し、多数の死傷者が発生した」とし、「死亡者は120人」だと明らかにした。当局は心停止状態など重傷者が多かったため、死亡者数は急激に増えたものと推定した。
■ 30日午後11時、死者154人
30日午後11時現在、死亡者は154人と集計された。死亡者は40カ所余りの病院の霊安室に分けて移送された状態だ。梨泰院が外国人に国際的な観光名所として知られているため、外国人死亡者も26人に上った。負傷者134人は病院で治療を受けている。重傷者が36人に達し、追加の死亡者が出る可能性もある。
一方、ソウル市は30日午後5時30分現在、龍山区漢南洞住民センターに「梨泰院圧死事故」関連の行方不明者届が計4149件受け付けられたと発表した。