ユーラシア大陸の反対側で核戦争の危機が高まっている。ロシアは先月末、占領中のウクライナのドンバス地域を住民投票を通じて正式に領土に編入した。もはやロシアにとっては、この地域に対する外部の攻撃は「論理的に」自国領土に対する攻撃となる。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「あらゆる手段を動員して領土を守る」と述べ、核兵器使用の可能性を暗示している。
万が一プーチン大統領が核兵器を実際に使用した場合、その後の事態がどう展開されようと、その流弾が朝鮮半島に飛んでくる可能性がある。暗黙の合意で維持されてきた核兵器不使用のたがが外れるからだ。
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韓米日共同訓練と北朝鮮の強硬対応
時を同じくして、最近朝鮮半島では核戦争の危険性が大きく取り上げられている。朝鮮半島の安保状況で2022年に現れた重要な変化は、核戦争の危険性の高まりといえる。今年1月末、北朝鮮労働党政治局会議で金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は、米国と韓国に対する期待を完全に捨て、これまで維持してきた核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)試験に対するモラトリアム(停止期間)の廃棄検討を指示した。北朝鮮は今年3月24日と5月4日にICBMと推定される弾道ミサイルの試験発射を実行に移し、韓米日の政府関係者と専門家は追加の核実験の可能性を絶えず提起した。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、文在寅(ムン・ジェイン)前政権時代に多少遅らせた「3軸体系」の構築に拍車をかけている。「3軸体系」は、北朝鮮の核ミサイル攻撃の兆候を探知し先制攻撃でこれを無力化するキルチェーン(Kill chain)、ミサイル防衛、北朝鮮指導部を除去するための斬首作戦が含まれる大量報復など、一連の軍事措置で構成されている。
韓米合同演習も「乙支(ウルチ)フリーダムシールド」(UFS)という新しい名前をつけて規模と回数を増やして「正常化」した。合同演習は、北朝鮮地域に対する反撃、収復、軍政実施まで含まれる作戦計画の実行演習だ。北朝鮮が極端な拒否反応を見せるのはこのためだ。UFS演習が終わった先月2日、米国の空母が9月末に東海(トンヘ)で合同海軍演習を実施するという計画が発表された。UFSに参加しなかったいわゆる米軍の「戦略資産」が展開されるというのだ。
北朝鮮は9月8日、最高人民会議で「朝鮮民主主義人民共和国の核戦力政策について」という法令を採択した。法令によると、「国家核武力に対する指揮統制体系が敵対勢力の攻撃で危険に直面する場合」と定められた手続きに従って「核攻撃が自動的に直ちに断行される」。具体的に提示された核兵器使用の条件は、北朝鮮に対する核兵器または大量殺戮兵器の攻撃が敢行されるか差し迫っていると判断される場合や、国家指導部と国家核兵器指揮機構に対する敵対勢力の核および非核攻撃が敢行されるか差し迫っていると判断される場合など、5項目にわたる。
9月26日から4日間、米国の原子力空母ロナルド・レーガンが率いる強襲戦団が東海で韓米合同演習を実施した。9月30日には自衛隊の準イージス級駆逐艦1隻が「堂々と」参加した中、対潜水艦戦訓練も行われた。公海上ではあるが、東海という場所の意味は重大なものであり、狭い海域で展開された戦力の密度から見れば、まさに戦争を彷彿とさせる威嚇的な面がある。
一方、北朝鮮は韓米日空母戦団の共同訓練に対抗し、9月25日から10月9日まで「戦術核運用部隊」訓練を実施し、10月10日に多数の写真とともに詳細を公開した。10月12日にはさらに長距離巡航ミサイルを発射した。訓練中、北朝鮮は飛行距離4500キロメートルの中長距離弾道ミサイルを含むミサイルを7回発射し、北朝鮮軍史上初めて内陸地域で戦闘機150機が同時に出撃する訓練を行った。
特異なのは、9月25日に発射された短距離ミサイルは韓米の情報判断とは異なり、貯水池から発射されたものであり、戦略核潜水艦を完成させる前にまず潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の性能を検証したものとみられる。それこそ、あらゆる手段を総動員した軍事力示威といえる。さらに重要なのは、金正恩委員長が訓練を直接指導しながら「対話する必要性を感じない、核戦闘兵力を全方面で強化しなければならない、相応の軍事的対応措置を強力に実行しなければならない」と発言したという点だ。(2に続く)
ムン・ジャンリョル|国防大学元教授・韓国軍事問題研究院客員研究委員