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[寄稿]また「戦術核」、朝鮮半島の非核化を放棄しようというのか

登録:2021-08-31 06:09 修正:2021-08-31 06:42
キム・ソンベㅣ前国情院海外情報局長・国家安保戦略研究院首席研究員

 北大西洋条約機構(NATO)のような核共有制度や戦術核兵器の再配備をめぐる論議が再燃している。「恐怖の均衡」(balance of terror)など、過去の冷戦時代の遺物とされる言葉まで再登場している。朝鮮半島の時間が巻き戻されているようだ。

 NATOの核共有制度は基本的に冷戦の遺産だ。米国は、旧ソ連の核の脅威に対応するために、欧州と朝鮮半島に核兵器を前進配備した。NATO同盟国とは核共有協定を結んだが、在韓米軍は核兵器を独自に統制した。韓国軍には戦時作戦統制権がなかったから、ある意味では当然のことだった。

 核共有は実質的に戦術核兵器の再配備とあまり変わらない。同盟国の領土内で米軍が核兵器を管理し、核の使用が決まれば同盟国の航空機に搭載して投下する方式だ。核兵器発射コードは米大統領が管理し、同盟国には核使用拒否権はあるが、命令権はない。

 核共有や戦術核兵器の再配備の主張は、米国の核の傘、すなわち拡大抑止に対する不信感に基づいている。実際は、韓米同盟の拡大抑止でも核抑止は十分だ。米国本土だけでなく、朝鮮半島に近いグアム基地から発進する爆撃機や海上発射核兵器を通じて即時対応ができるからだ。どうせ戦術核兵器の発射権が韓国にないなら、韓国領土内に核兵器があるかどうかに、大きな違いがあるだろうか。むしろ北朝鮮と周辺国の最優先標的になり、有事の際の核先制攻撃の対象になるだけだ。

 最近、欧州の専門家たちはむしろ戦術核兵器の配備なしに核の傘を提供するアジアモデルに注目している。NATOの核共有制度は戦術核兵器の保管に伴う安全性や維持費用、環境汚染などの問題があるのに対し、韓国と日本の場合、戦術核兵器の配備がなくても核の傘の信頼性を維持できると評価されている。実際、欧州の米国の同盟国に残っている戦術核兵器の規模も100基という象徴的な水準だ。

 核共有や戦術核兵器の再配備は、米国の受け入れを前提にするという点で現実性に欠ける。米国の戦術核兵器は最大7300基に達したが、脱冷戦後には削減し続け、現在米国本土に130基、欧州同盟国に100基だけが残っている状態だ。米国本土に残した戦術核兵器はインド太平洋地域の万一の事態に備えた非常用だ。現実的に実行可能ではない政策について、無駄な論争をする必要があるのか疑問だ。

 核共有や戦術核兵器の再配備を求める主張の最大の問題点は、北朝鮮の核保有を認めることと同じであるという事実だ。戦術核兵器の再配備は、朝鮮半島非核化共同宣言に真っ向から反するものだ。北朝鮮に非核化を要求できなくなる。事実上、朝鮮半島の非核化の放棄を意味する。

 朝鮮半島の非核化を放棄して選ぶ代案というのが恐怖の均衡だとは、驚くべきであり納得もできない。冷戦時代に誕生したこの言葉は、核戦争の結果、皆が滅亡するという恐れが戦争を抑止するという概念だ。しかし、これが作動するには、敵対国同士がいわゆる相互確証破壊(MAD)、すなわち先制核攻撃を受けた場合に相手に致命的な打撃を加えられる程度の核戦力を備えなければならない。これは戦術核兵器では成立しにくい概念であり、戦略核兵器が必須だ。結局、朝鮮半島で恐怖の均衡が作動するためには、無制限な軍拡競争が伴わなければならない。

 核共有や戦術核兵器の再配備は、陣営の論理で用いたり、政治的に扱う問題ではない。韓国の安全保障環境に及ぼす影響があまりにも大きいためだ。朝鮮半島の安全保障をめぐるジレンマは永遠に続き、韓国国民は核戦争の不安を抱えて生きていかなければならないかもしれない。本当にそのような未来を望むのか。

//ハンギョレ新聞社
キム・ソンベㅣ前国情院海外情報局長・国家安保戦略研究院首席研究員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1009746.html韓国語原文入力:2021-08-3019:09
訳H.J

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