元・現職の米国駐在特派員の集まりである韓米クラブ(会長イ・ガンドク)が発行する外交安保専門季刊誌「韓米ジャーナル」が25日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と米国のドナルド・トランプ前大統領がやり取りした親書を公開した。金委員長は親書で、「韓国を経由せず、米国と直接交渉したい」という意思を繰り返し示す一方、韓米合同軍事演習に対する不快感をあらわにした。
「韓米ジャーナル」は最新号(10号)で、金委員長とトランプ前大統領が2018年4月から翌年8月までやりとりした親書27通を全文公開した。これに先立ち、米国のジャーナリストのボブ・ウッドワード氏も2020年9月に出した『RAGE(レイジ)怒り』でこのうち一部を引用した。
両指導者間の初めての親書は、マイク・ポンペオ前国務長官が中央情報局(CIA)長官として極秘裏に訪朝した直後の2018年4月1日に送られたもの。金委員長は「両国の間に存在する問題を解決し、否定的な両者関係を終わらせるため、大きな一歩を踏み出す用意がある」と書いており、トランプ前大統領は「両国関係の画期的な改善のために協力することを心待ちにしている」と答えた。
金正恩委員長は親書で何度もトランプ前大統領とトップダウン方式の談判を望むという意向を示した。
金委員長はシンガポール朝米首脳会談(2018年6月12日)の合意事項の履行過程で、ポンペオ前長官に対する不信感を示し、トランプ前大統領と直接交渉したいという内容の親書を送った。金委員長は特に同年9月18~20日、平壌(ピョンヤン)で開かれた南北首脳会談直後の書簡で、「私は今後、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領ではなく、閣下(トランプ大統領)と直接朝鮮半島の非核化問題を話し合うことを望んでいる。今、文大統領が私たちの問題に示している過度な関心は不要だと考える」とも書いた。
しかし、朝米関係は首脳間の親書のやり取りが続いていたにもかかわらず、ハノイ首脳会談(2019年2月27~28日)が物別れに終わったことで、膠着局面に入った。公開された両指導者間の最後の書簡(2019年8月5日付)で、金委員長は韓米合同軍事演習に強い不快感を示し、予定されていた朝米実務交渉を延期すると伝えた。
金委員長は、「そちら(米国)が悩みの種としている『ミサイル脅威』と『核問題』の最も重要な原因は、我々の安全を脅かすそちら側と韓国軍の軍事的行動だ」とし、「このような要因が取り除かれるまでは、以前とは異なる結果を期待できない」と付け加えた。その後、実務会談(2019年10月5日)が開かれたが、朝米関係は急速に冷え込んだ。