878億ウォン(約90億3000万円)規模の迎賓館の新築方針が明らかになってからわずか1日で、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の指示により「白紙撤回」されたことを機として、大統領室の業務のあり方や態度が俎上にのっている。執務室を青瓦台(旧大統領府)から龍山に無理やり移転したことにともなう追加費用の発生と混乱が続いているが、大統領室は迎賓館新築の白紙撤回を尹大統領の「勇断」と美化するばかりで、根本原因は何なのかの説明や謝罪には消極的だ。
大統領室が旧大統領府の迎賓館に代わる新たな施設に関する立場を覆したのは、それが明らかになってわずか6時間後。迎賓館新築に800億ウォン台の予算が編成されたことに対する批判が相次ぐと、大統領室は16日午後のブリーフィングで「国益を高め、国の格に相応しく内外の賓客を迎える空間が必要だ」とし、不可避であることを強調した。尹錫悦大統領が就任前の今年3月、龍山への執務室の移転費用を496億ウォン(予備費。約51億円)と約束してからわずか6カ月後であり、「国益」を理由に言を翻したわけだ。しかし、批判が相次いだことから、尹大統領は同日夜に「迎賓館新築全面撤回」を指示し、キム・ウンヘ広報首席は午後8時30分ごろ「直ちに予算案を撤回し、国民に心配をかけることがないようにせよ」という尹大統領の指示を公開した。反対世論が強いうえ、多数党である共に民主党が強く反対しており、国会での予算案可決は難しいとみられることから、慌てて撤回したものとみられる。しかし、大統領室は日増しに増える執務室移転費用をめぐる批判について、真摯な釈明はしていない。
龍山への移転費用問題に関する大統領室の説明不足は今回が初めてではない。執務室移転に伴う費用として国防部、行政安全部、警察庁などに充てられていた今年第2四半期の予算306億9500万ウォン(約31億6000万円)が使われたことが明らかになったことを受け、大統領室の高官は1日、「関係省庁が自律によって執行する費用であり、(直接的な)移転費用ではない」と釈明した。大統領執務室を龍山に移すことで発生する費用を「付帯費用」として振り分け、批判を避けようとしたのだ。龍仁大学のチェ・チャンニョル教授(教養学部)は、「先の大統領室の『移転費用ではない』という釈明は苦しいもので、一般常識に合わない表現だ」とし、「国民の反対世論を謙虚に受け止め、大統領が決定を変えた経緯などを詳しく説明すべきだった」と述べた。
大統領室は、尹大統領の就任後に浮上したさまざまな疑惑についても、国民の目線とは距離のある対応を示してきた。イ・ウォンモ人事秘書官の妻のA氏が尹大統領の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議への出張に同行し、「民間人随行」批判が起こった当時、大統領室は「A氏はその他の随行員という身分であり、すべての行政的手続きを法に則って経ている」と釈明した。しかし当時、内部でもA氏の同行は不適切だったという話はあった。尹大統領の就任式(5月10日)の招待名簿についても、大統領室は「名簿が残っていない」と述べたにもかかわらず、後に「一部残っている」とするなど、一貫しない態度を示している。
「議題と戦略グループ:ザ・モア」のユン・テゴン政治分析室長は、「現在の大統領室の釈明を見ると、慌てて見え透いた嘘で覆い隠そうとしているように感じる」とし、「迎賓館の新築問題も、大統領室移転の当初にどんな建物の新築が必要なのか争点を一度に公開すべきだったのに、中途半端な立場を示してばかりいる」と述べた。同氏は「依然として大統領室の政務や企画が弱いから生じる問題」だと指摘した。