大統領室が突然発表した878億ウォン(約90億円)の迎賓館新築推進について、16日、政界では与野党を問わず批判が殺到した。大統領室全体の移転費用は496億ウォンで、青瓦台の迎賓館を活用するとしていた尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の発言と相反するため、与党「国民の力」からも納得しがたいという反応が出ており、共に民主党は、水害で苦しんでいる国民の意思とはかけ離れた行動だとして「関連予算を全額削減する」と述べた。結局、尹錫悦大統領は新築計画を全面撤回した。
尹大統領は同日夜、「青瓦台(旧大統領府)を国民にお返しした後、大統領室の資産ではなく国家の未来資産として国の品格にふさわしい行事空間を設けようとしたが、このような趣旨を十分に説明できなかったという残念さがある」とし、「直ちに予算案を回収し、国民に心配をかけることがないようにせよ」と述べたと、キム・ウンヘ大統領室広報首席が伝えた。
この日午後までは、大統領室は「国民の立場としては移転しなかったら発生しない費用と考える可能性もあるだろう」としながらも、「国益を高め、国の品格に相応し国内外の来賓を出迎える空間が必要だという点で、(迎賓館の新築は)避けられない側面がある」と主張していた。しかし大統領室は、同日午後8時25分頃、尹大統領の「撤回メッセージ」を出した。迎賓館新築計画に対する世論が冷ややかだという点を大統領室が一歩遅れて確認し、慌てて計画を中止したものとみられる。尹大統領は就任前の3月20日、「青瓦台の迎賓館や本館を、夕方の国賓晩餐会のような行事をする時に使うこともできる」と述べており、緊縮を強調し既存の迎賓館活用に重点を置いていた。
しかし、大統領室移転費用は徐々に増え、現在までに明らかになったものだけでも、当初尹大統領が述べていた移転費用496億ウォン(約50億円)をはるかに上回っている。先月、大統領室が国防部や行政安全部、警察庁などの今年第2四半期の予算から306億9500万ウォンを使った事実が明らかになっている。迎賓館の新築を中止しても、費用負担は依然として残っている。大統領室移転によって尹錫悦大統領夫妻が漢南洞(ハンナムドン)の外交部長官公館に入ったため、新しい外交部長官公館の造成費用として策定された金額は21億4700万ウォン(約2億2400万円)だ。共に民主党のイ・ヒョンソク議員が明らかにした。さらに、大統領室移転に伴い連鎖的に移動しなければならない合同参謀本部の移転費用の推算額も2980億ウォン(約300億円)に達する。
野党は、水害と物価高で困難に直面している国民の暮らしとはかけ離れた行動だとして、大統領室の迎賓館新築構想を強く批判した。民主党のイ・ジェミョン代表は全羅北道全州市(チョンジュシ)で開かれた最高委員会会議で「迎賓館を建てるのに878億ウォンならば、被災者1万人に1千万ウォン近い支援金を支給できるのではないか」とし、「国民は物価や雇用であらゆる苦痛を受けているのに、なぜ急ぎでもないこのようなことに千億ウォン近い予算を注ぎ込むのか分からない」と述べた。民主党のパク・ホングン院内代表は、「大統領室が“オオカミ少年”のような(繰り返し嘘をつく)予算を編成し、民生苦で苦しんでいる国民をまた騙した。国会予算決算特別委員会の審査を通じて全額削減する」と述べた。正義党も「今になって『国の品格』や『不可避性』に言及し数千億の予算を増やすのは、国民が納得しない」と述べた。
与党も、経済危機のなか野党との予算審議が容易でない状況で、突然迎賓館新築を持ち出した大統領室の行動に当惑を隠せなかった。ある初当選議員は「私たちでさえも『青瓦台の迎賓館を使うと言っておきながら、なぜ話が変わったのか』と思うのだから、野党は当然だろう」と話した。他の首都圏選出議員も「経済が厳しいと言って政府にも予算削減を要求しているのに、900億ウォン近いお金をかけて迎賓館を建てるというのを誰が納得するだろうか」と話した。国民の力の関係者は「迎賓館新築を取り上げるなら事前の下作業が必要だったが、全くなかった。大統領室は行政官を変えるのではなく首席秘書官らを全員変えるべきだ。政務感覚がないにもほどがある」と述べた。
結局、尹大統領が取り消したが、民主党は「迎賓館新築の指示の真相を明らかにしなければならない」と鋭く批判した。キム・ウィギョム報道担当は書面論評を通じて「かつて、大統領夫人のキム・ゴンヒ女史が『青瓦台に入ったらすぐに迎賓館を移さなければ』と言ったことを、国民ははっきりと覚えている」とし「迎賓館新築が誰の指示なのか、国民が問うている」と述べた。キム報道官は、「大統領室の移転から迎賓館の新築まで、大統領室をめぐる各疑惑と論争を究明しなければならない。大統領室をめぐる疑惑を終わらせられる方法は、特検を通じて真実を究明することだけだ」と強調した。