ソウル市が江南区(カンナムグ)など浸水常襲地域6カ所に「大深度雨水トンネル」(雨水貯留排水施設)を建設することにした。半地下住宅を含めた建築は認めず、従来の半地下住宅も最大20年にわたって順次廃止する案も進める。
ソウル市のオ・セフン市長は10日、「立場表明文」を発表し、「2011年以降中断していた浸水常襲地域6カ所に対する雨水貯留排水施設の建設を再び進める」と明らかにした。今回の大雨の時に被害が大きかった江南駅一帯をはじめ、道林川(トリムチョン)と光化門(クァンファムン)一帯は2027年まで、銅雀区舎堂洞(トンジャック・サダンドン)一帯と江東区(カンドング)、龍山区(ヨンサング)一帯には2030年まで雨水トンネルを設置する。下水道管路の整備を行うと共に、小規模の雨水貯留槽、雨水ポンプ場も建設する。このためには3兆ウォン(約3040億円)の事業費がかかるとソウル市は推算した。
オ市長は「1時間当たり95~100ミリの豪雨を処理できる32万トン規模の貯留能力を保有した雨水貯留排水施設がある陽川(ヤンチョン)地域は浸水被害が全く発生しなかった。該当施設がない江南地域は時間当り処理能力が85ミリに過ぎず、大規模浸水被害につながった」とし「地方債を発行してでも事業を推進する」と明らかにした。
雨水トンネルは、都心の地下に巨大な管を埋めて集中豪雨の時に水を貯める役割を果たすと同時に、既存の下水道管路の代わりに水の流れを迂回させる施設だ。2011年7月、牛眠山(ウミョンサン)の山崩れ以後、当時オ市長が7カ所に設置しようとしたが、以後就任したパク・ウォンスン市長は陽川区新月洞(シンウォルドン)を除く他の地域の事業は調整した。パク前市長は普段地下道路として使って大雨の時には貯留槽として利用する「スマートトンネル」や地下排水施設を新設・拡充する方がより効果的だと判断した。
ソウル市立大学のイ・ヨンジュ教授(消防防災学)は、「陽川区で見たように、設置時の被害範囲を減らし、浸水時間を短縮するなどの効果が期待できる」と語った。一方、カトリック関東大学のパク・チャングン教授(大韓河川学会長)は、「(雨水トンネルのない)光化門は雨の被害がほとんどなかった。また、舎堂洞にはスマートトンネルの実施設計が進められているが、別途雨水トンネルを建てるのは理解しがたい」とし、「江南駅も排水トンネルの本工事が完了し、近隣排水口などとの連結が終われば、その効果を確認してから(雨水トンネルの建設を)推進しても遅くない」とし、相反する意見を示した。
ソウル市は「半地下居住世帯の安全対策」も打ち出した。対策によると、今後の建築認可の際、地下・半地下階は住居用として認可しない。ソウル市は「2012年の建築法改正で浸水常襲地域の地下階は住居用建築許可を出さなくても良いことになったが、その後も地下・半地下住宅が4万戸以上建設された」とし、「浸水の有無を問わず地下・半地下には人が居住しないようにする」と明らかにした。既存の半地下住宅は20年にわたって漸進的になくしていく。このため住居用地下住宅の用途転換を誘導し、借家人に公共賃貸住宅入居機会等を提供する。現在、ソウルには約20万戸の住居用地下・半地下住宅がある。
与党はオ市長の側面支援に乗り出した。国民の力のパク・ヒョンス院内報道担当は同日、政府与党協議後「雨水トンネルの設置が急がれるため、関連予算を来年度予算案に反映するよう強く要請した」と述べた。