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韓国教育相、1カ月で辞任…尹大統領の無理強い、混乱を残しただけ

登録:2022-08-09 02:10 修正:2022-08-09 08:07
飲酒運転、論文重複掲載、パワハラ問題 
芋づる式に上がる疑惑にもかかわらず、聴聞会なしで任命 
「満5歳入学」「外国語高校廃止」拙速推進 
教育界「教育の非専門家…予告された惨事」
パク・スネ社会副首相兼教育部長官が8日夕、ソウル永登浦区汝矣島の韓国教育施設安全院で辞任の意を表明している=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 飲酒運転、論文の重複掲載、パワハラなどの疑惑が持たれ、資質が問われた中で任命が強行されたパク・スネ社会副首相兼教育部長官が、就任からわずか1カ月で8日に辞任した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権で国務委員の辞任は初めて。

 パク副首相はこの日午後5時30分、ソウル汝矣島の韓国教育施設安全院で緊急記者会見を行い「本日、私は副首相兼教育部長官職を辞任する。私が受けた教育の恩恵を国民に返したいという気持ちひとつで駆け抜けてきた。非常に力不足だった」と述べた。続けてパク副首相は「学制改編など、すべての問題に対する責任は私にあり、私の不覚」と述べて、取材陣の質問を受けずに席を立った。

 キム・インチョル教育部長官候補が娘の奨学金受給の「親の七光り」疑惑などで脱落した後、「教育の非専門家」であることや芋づる式に持ち上がる疑惑などに対して教育界の内外から懸念が表明されていたにもかかわらず、「2度目の脱落はない」としてパク・スネ氏の任命を強行した尹錫悦大統領の無理強いが、教育現場の混乱ばかりを大きくしたという指摘が出ている。

人事聴聞会なしに任命された「疑惑だらけ」の長官

 5月26日のパク副首相指名後、様々な疑惑が持ち上がったが、最大の欠格事由は「泥酔飲酒運転」の前歴だった。パク副首相は2001年12月、免許取り消し基準(0.1%)の2.5倍に達する血中アルコール濃度0.251%で運転中に摘発され、翌年9月に250万ウォンの罰金刑の宣告猶予処分を受けた。同年に道路交通法違反(飲酒運転)の疑いで起訴され、宣告猶予処分を受けた人の割合は0.67%に過ぎず、パク副首相の処分は極めて異例だった。

 問題は、飲酒運転の前歴と教育部長官業務の関連性だ。教育部は今年1月に、飲酒運転で摘発されて懲戒を受けた教員は校長任用請求から永久に排除するとする内部基準を設け、市・道の教育庁に伝達している。校長任用請求権者である教育部長官が、当の本人は泥酔運転してもいかなる不利益も受けなかったにもかかわらず、飲酒運転を理由として教員を校長任用から排除するという状況になったのだ。さらにパク副首相は「深く反省している」と言うにとどまり、最後まで飲酒運転の理由さえ明らかにしていない。

 パク副首相は、同じ論文を複数の学術誌に重複掲載するなど、研究実績を膨らませたという疑惑も持たれている。1999年に提出した論文を米国交通学会に重複提出した事実が明らかになり、2011年8月に韓国行政学会から「論文の自己盗用」で論文掲載取り消しと2年間の投稿禁止の懲戒を受けており、2012年3月には韓国政治学会からも「重複掲載」で論文掲載取り消しと3年間の投稿禁止という懲戒を受けていたという疑惑だ。2回の投稿禁止懲戒は学者として不名誉なことであるにもかかわらず、パク副首相は「自主撤回したもの。投稿禁止懲戒を受けたことは知らなかった」として、疑惑を提起したメディアに対する法的対応を示唆してもいる。

 ソウル大学公共成果管理研究センター長在職時には所属の助教に個人研究室の掃除をさせたという「パワハラ」疑惑まで提起されたが、パク副首相は先月4日、国会空転の中で人事聴聞会なしに任命された。

「教育の非専門家」無理な政策で脱落

 任命後にも疑惑提起は続いたが、パク副首相は結局は「無理な政策推進」で辞任した。パク副首相は先月29日、尹錫悦大統領に、小学校の入学年齢を現行の満6歳から満5歳へと引き下げる学制改編案を報告した。2018年1月~2022年12月生まれの児童の25%を4年にわたり順次繰り上げ入学させるという具体案も示した。教育現場に大きな混乱を招く政策だったが、保護者や教育庁などとは事前協議が全くなされておらず、拙速行政だとの批判があふれた。

 世論の収拾過程では「右往左往」し、混乱に拍車をかけたた。4年分割入学に反発が強まったことを受け、パク副首相はラジオに出演し「入学の操り上げに12年かけることも可能だ」と発言し、「学制改編案はカードの無利子分割払いか」と嘲笑された。結局2日に大統領室とパク副首相は「国民の意思に反して政策を推進することはできない」とし、事実上の政策撤回の立場を明らかにした。外国語高等学校についても「2025年の一般高校への転換」方針を明らかにしたものの白紙に戻す可能性を示唆したことで、またしても拙速行政だとの批判を浴びた。

 教育界の内外からは、解決すべき課題の山積する教育部の長に「教育の非専門家」を据えた時点で予告されていた惨事だったと指摘されている。パク副首相は「行政の専門家」で、経歴において教育との接点は事実上皆無だ。任命時に教育界からは「パク・スネ任命の強行は韓国の教育の方向性の喪失につながるだろう」という懸念の声があがっていた。市民団体「私教育の心配のない世の中」のチョン・ジヒョン共同代表は「教育は『百年の大計』であり、緻密に計画を立てるべき分野だが、非専門家を長官に据えたことでこのような事態が起きた」とし、「事態を招いた尹大統領の責任は大きい。次の長官は教育をよく知り、教育界と意思疎通のできる人物でなければならない」と語った。

キム・ミンジェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/1053938.html韓国語原文入力:2022-08-08 17:42
訳D.K

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