尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が初等学校への入学年齢を満6歳から満5歳に引き下げる方針を明らかにした後、保護者と幼稚園・保育園の教師および教員団体が一斉に反発し、撤回を求める署名運動や集会など、全方向からの反対の動きが起きている。産業人材育成ばかりに偏った政策で、幼児の発達状態や子どもの世話の空白を考慮せず、社会的議論のない拙速で意思疎通不在の行政という指摘だ。
パク・スネ社会副首相兼教育部長官は29日午後、ソウル龍山区(ヨンサング)の大統領執務室で尹錫悦大統領と面談し、初等学校への入学年齢を満6歳から満5歳に下げ、中・高校と大学入学・卒業年齢も1年ずつ前倒しにし、早めに社会に進出させる学制改編案などの業務計画を報告した。
大統領室関係者は先月31日、本紙に対し「韓国のように超少子化の国では、生産可能人口を早く確保するためにも当然必要なこと」だとし、「教育界で長い間議論されてきた内容を、教育部で再び積極的に推進するという趣旨」と述べた。
教育部は、制度初期には2019~2022年生まれを25%ずつ順次満5歳で入学させる案を検討中だ。これによれば、2025年に2018年1月~2019年3月生まれ、2026年に2019年4月~2020年6月生まれ、2027年に2020年7月~2021年9月生まれ、2028年に2021年10月~2022年12月生まれが入学することになる。統計庁の資料によれば、2025学年度の場合、就学対象は2018年生まれの32万6822人と2019年1~3月生まれの8万3030人を合わせた40万9852人。2025年入学生の場合、入試・就職などで生涯全般にわたり競争する同級生が8万3千人余り増えるということだ。
このようなニュースに、保護者と幼稚園・保育園の教師、教員団体はみな反発している。満5歳が小学校に適応できるかという発達過程に対する研究と考慮がなく▽競争と私教育(学習塾など)が強化される可能性があり▽保育園・幼稚園で受け持っていた(共働き家庭などの)子どもの世話問題が深刻化し▽大統領の公約や政権引継ぎ委員会でも議論されたことのない政策だという批判の声があがっている。
市民団体「私教育の心配のない世の中」や教師労働組合連盟、全国私立幼稚園連合会など31の市民・教員団体連合である「満5歳初等学校就学阻止のための汎国民連帯」は、1日午後2時、龍山(ヨンサン)の大統領室前で初等学校への入学年齢の下方調整に反対する集会を開く。31日、複数の母親たちのネットコミュニティでは、汎国民連帯の「満5歳初等学校入学反対署名」の文章がシェアされた。
全国教職員労働組合と韓国教員団体総連合会もそれぞれ声明を出し、今回の学制改編案に対する反対意思を明確にした。進歩系の全国教職員労組はこの日、「小学生は机に座って40分間集中しなければならないが、幼児に机に座って40分集中しろというのは暴力であり児童虐待」だと批判した。保守系の韓国教員団体総連合会は29日、「乳児期の児童の発達の特性を考慮していない」とし、「莫大な財政投入が必要なのはもちろん、今後の入試、就職などで特定の年齢に不利益が発生する可能性がある」と明らかにした。
前政権が社会的論争の末に推進できなかった学制改編案を、公論化や意見収集の手順を踏みもせず発表したことも議論を呼んでいる。そのうえ、パク副首相は「まだ(市・道の)教育庁と公式に話し合っていない」とも明らかにした。全国国公立幼稚園教師労組は29日、声明を出し「満5歳の初等学校就学は国政課題にもなかったことであり、幼児教育学界および現場とのいかなる議論の手続きもなしに突然確定発表された」とし、「学制改編という非常に重要な議論において、関連する現場を完全に無視した処置」と明らかにした。全国私立幼稚園連合会は30日、声明で「重要な国家教育政策の基礎が何の協議もなしにパク・スネ長官の独断で報告された」と批判した。
教育部は今後発足する国家教育委員会と共に、社会的議論の過程を経るという立場だ。教育部の関係者は同日、本紙に対し「まだ政策というよりは政策議題の段階」だとし、「今後、国民の意見収集と社会的議論の過程を経る予定」だと話した。大統領室の高官は「教育部長官のアジェンダであり方向性であるので、これから様々な話を聞いて具体化するものと理解している」と述べた。