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中国、軍事演習を朝鮮半島の西海まで…韓国、米中間での「綱渡り」に危機

登録:2022-08-08 09:59 修正:2022-08-08 10:23
中国、台湾の海6面で72時間演習後 
渤海・西海南部などで軍事演習を続ける予定 
軍用機が台湾海峡の中間線を大規模に越えるなど 
中国の軍事脅威の日常化、「ニューノーマル」の懸念高まる
中国人民解放軍の軍用機が、台湾に近い福建省平潭島上空を飛んでいる=福建/ロイター・聯合ニュース

 ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問直後、台湾を包囲し72時間続いた中国人民解放軍の軍事演習が7日昼に終わった。中国軍はこの期間に島全体を封鎖し、上空を横切る弾道ミサイルを発射するなど、1~2年前までは想像もできない事実上の侵攻「予行演習」を繰り広げた。中国が演習を西海南部と渤海湾まで拡大し、台湾海峡の緊張が朝鮮半島周辺にまで迫っている。米中の力と力が正面から衝突する台湾海峡の軍事的緊張が日常化した場合、朝鮮半島の安全保障にも少なからぬ影響を及ぼすことになる。

 中国海事局は5~6日、ホームページを通じて、江蘇省連雲港市と接した海州湾の海上で6日から15日までの10日間、毎日午前9時から午後7時まで実弾射撃訓練が行われると明らかにした。この期間、同地域の5つの海域には安全のため船舶の進入が全面禁止される。中国海事局はこれとは別に、遼東半島の端に位置する旅順に面した渤海湾でも8日から来月8日までの1カ月間、軍事任務が進められると明らかにした。具体的な訓練内容は公開されなかったが、船舶の航行を禁止したことから実弾射撃訓練が行われるものとみられる。

 新たに公開された軍事演習は、台湾に対する軍事圧迫の延長線上で行われるものと推定される。中国が台湾を攻撃すれば、台湾と面している東部戦区だけでなく北部戦区と南部戦区に属する艦隊も動員されるため、これらも訓練しなければならない。中国は2020年8月にアレックス・アザー米保健長官が台湾を訪問した後も、同月11日から9月末まで、渤海湾・西海・東シナ海・南シナ海の4海域で相次いで軍事演習を行った。この演習が韓国を狙うものとは思えないが、台湾危機が日常化すれば、朝鮮半島をめぐる安保環境にも少なからぬ変化が生じかねない。台湾有事の際、在韓米軍を動員する「戦略的柔軟性」についての議論が本格的に始まる可能性があり、台湾海峡の平和と安定を守るという名目で、日本の自衛隊のように韓国も軍事的寄与をすべきという要求が頭をもたげる可能性もある。台湾危機が日常化することは、韓国が「対岸の火事」のように眺めてはいられない重大な安保状況の変化となる。

 これに先立って行われた中国軍の武力示威も、類例のない非常に強力な軍事演習だった。中国軍は4日、台湾に向けて「東風」系列の弾道ミサイル11発を発射した。このうち4発が史上初めて台湾上空を横切った。台湾国防部は同日の夜、「主要経路が大気圏外にあり、台湾の地上地域には何の害もない」とし、国民を安心させようとした。中国軍は演習期間中、長距離砲を発射し、軍用機と戦艦を台湾海峡に送り、実弾射撃訓練を行った。

 中国軍用機の台湾海峡通過も、毎日数十台ずつ大規模に行われた。2020年8月の米保健長官の訪問の際は、中国軍用機2機が台湾海峡の中間線を越えて大きな論争になったが、3日と4日にはそれぞれ22機が中間線を越えたのに続き、5日には68機もの軍用機が中間線を越えた。このような演習内容を総括すると、初日に台湾の中心部および軍事基地や空港などを弾道ミサイルで攻撃して無力化し、2日目には本土のミサイル戦力と海・空軍が合同で周辺の艦船を除去した後、3日目には台湾本島に対する全面攻撃に出る訓練を行ったのではないかという分析が出ている。6日夜、中国東部戦区はこの日「陸地を打撃する訓練」を行ったと明らかにし、台湾国防部も公式ツイッターを通じて「台湾を攻撃する模擬訓練を行うものと判断される」と明らかにした。

 中国は、ペロシ議長に「平手打ちされた」今回の状況を、逆に台湾を軍事的に圧迫し、独立勢力に確実な警告を送ることに積極的に活用している。中国国防大学の孟祥青教授は、官営「中国中央テレビ(CCTV)」に出演し、台湾に最も近接して訓練が行われ▽台湾の海6面を包囲し▽台湾上空を横切るミサイルを発射したことなどを成果として挙げ、「我々が望めばいつでもどんな形でも台湾を攻撃できるということを示した。台湾の独立勢力と外部の干渉勢力に打撃を与えた」と主張した。

 これに対し、台湾は中国の全方位的圧迫に対抗する対抗訓練を進めながらも、中国の強力な演習が日常化する新しい均衡(ニューノーマル)が生まれることに懸念を示した。台湾国防部は6日、「弾道ミサイルの発射と台湾海峡の中間線侵犯のような中国軍の活動は、非常に挑発的な行為だ」と批判した。米ホワイトハウスも同日、報道官声明で「中国はこのような活動(軍事演習)を通じて現状を変更しようとしている。これは挑発的で無責任であり、誤った判断の危険性を高める」と主張した。

 台湾海峡の軍事的緊張状況が日常化すれば、これに対抗するために日米同盟はさらに強化され、韓国に対する要求も高まることになる。米国防総省は先月29日、韓米国防長官の会談後の発表資料で「両長官は朝鮮半島の安保環境とインド太平洋地域の幅広いイシューについて議論」し、「韓米日3カ国協力の重要性について意見を共にした」と明らかにした。米国ではすでに、韓米同盟を北朝鮮だけでなく中国の脅威にも対抗できるよう再調整すべきという声が出始めている。ともすれば米中間で「戦略的綱渡り」をしなければならない韓国に災難のような状況変化が起きかねない。

北京/チェ・ヒョンジュン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1053784.html韓国語原文入力:2022-08-08 07:40
訳C.M

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