本文に移動

米中「ペロシ議長」めぐる激突、微妙な綱渡り…「右往左往」するのは韓国のみ?

登録:2022-08-05 06:06 修正:2022-08-05 08:30
[ペロシ米下院議長のアジア歴訪が残したもの] 
 
中国、軍事・経済報復を台湾に集中 
米国、「エサに食いつかない」軍事対応自制 
両国、水面下で調整…「台湾独立」持ちださない 
 
前政権の対中政策を「屈従外交」と批判した尹錫悦政権 
「中国刺激」懸念したかのように態度を変える 
台湾、「米国の支持を確認」外交成果を得る
中国軍のヘリコプターが4日、台湾対岸の福建省の沖合を飛行している=福建/AFP・聯合ニュース

 今月2~3日の台湾訪問を経て、韓国と日本への訪問で終える米国のナンシー・ペロシ下院議長のアジア歴訪は、台湾に非常に負担の重い試練を課している。米中は、ペロシ議長の「台湾訪問」以降も互いを刺激する決定的なラインは越えておらず、今後負担すべき外交的・経済的なコストは台湾が担うことになった。2017年に在韓米軍にTHAAD(高高度防衛ミサイル)を配備した後、中国の激しい経済的報復を受けることになった韓国の状況を思い起こさせる。

 中国人民解放軍は、4日正午から3日間、台湾を封鎖しようとするかのように、主要な港湾の周辺を密に包囲した状態で、陸海空軍の合同演習を始めた。今回の演習期間では、史上初めて台湾上空を横切るミサイルも発射する。今回の事態を機に、台湾海峡の中間線を出入りする中国軍の挑発も日常化するものとみられる。ペロシ議長の訪問以降、台湾全体が当面の間、中国の露骨な軍事脅威に苦しめられることになった。

 3日には経済報復措置も打ちだした。中国政府は、台湾の「台湾民主基金会」と「国際合作発展基金会」を独立を企てる機関に規定し、両機関との協力を禁止した。台湾産の農産物と海産物の輸入も一時中断した。しかし、対立を強める発端となったペロシ議長や米国に対しては、厳しい「言葉の爆弾」だけを放つだけで、具体的な対抗措置は打ちださずにいる。

台湾を包囲して危険な訓練を始める中国。黄色は今回の訓練区域、薄青は1995~1996年の第3次台湾海峡危機の際の訓練区域//ハンギョレ新聞社

 米国の対応も同様だ。中国が台湾を包囲し露骨に軍事的圧力を加えても、非難するだけで直接の対応は控えている。新型コロナウイルスに再感染し隔離されている米国のジョー・バイデン大統領は3日朝(現地時間)、国家安全保障チームとの電話会議で、「自由で開かれたインド太平洋に対する支援、プーチンの戦争に対応するウクライナに対する持続的な支援」などを論議したと、ツイッターで明らかにした。この会議で中国の軍事演習に対する対応方針が議論されたとみられるが、これに先立ち、米国は「軍事的正面対抗」はしないという意向を繰り返し表明している。ホワイトハウスの国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官は、1日と2日の会見で「米国はエサに食いついたり武力誇示に巻き込まれはしない」と述べ、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)も、3日のNPRのインタビューで「私たちは緊張が高まるのを望まない」という立場を強調した。

 さらに、米中が今回の事態の影響を減らそうと進めた「水面下での努力」も少しずつ明らかになっている。米国務省高官は、先月初めにインドネシアで開かれた主要20カ国・地域(G20)外相会議で、米国のアントニー・ブリンケン国務長官が中国の王毅外相に「ペロシ議長の台湾訪問の決定が近づいている」ことを事前に伝えていたと語った。ブルームバーグ通信も3日、ホワイトハウス国家安全保障会議の高官らがペロシ議長と面会し、訪問自制を要請したが断られた後、中国との連絡チャンネルを確保し、対立が高まらないよう努力したと報じた。ペロシ議長も「台湾独立」を口に出すような決定的なラインは越えず、ホワイトハウスは「一つの中国」の原則に対する支持に変わりはないという点を繰り返し強調した。2日夜に中国外交部に呼ばれたニコラス・バーンズ中国駐在米国大使は「緊張の高まりを防ぐため、中国と協力する準備ができている」と述べた。

 このような「外交騒動」のなかで1人で緊張したのは韓国だった。ペロシ議長は訪問先のシンガポール・マレーシア・台湾などで該当国の首脳と直接会談したが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と会うことはできなかった。尹大統領が「休暇中」という点が表向きの理由だが、中国を過度に刺激することを懸念した結果だと読みとれる。大統領選挙を控えた1月、「THAAD追加配備」などを派手に叫び、文在寅(ムン・ジェイン)政権の中国に対する「三不」(三つのノー:THAAD追加配備、米国のミサイル防衛システムへの編入、韓米日軍事協力の禁止)を「対中屈従外交」だと批判した時と比較すると、180度態度が変わった。ペロシ議長の今回の歴訪で台湾は莫大なコストを支払うことになったが、米国の「固い支持」を確認する大きな成果を得た。米日同盟の強化に全力を注いでいる日本も、台湾問題を軍事力強化の名目として活用する一貫した態度を示している。右往左往し巻き込まれたのは、強硬な対中政策を掲げた韓国の保守政権だけだ。

北京・ワシントン/チェ・ヒョンジュン特派員、イ・ボニョン特派員、キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1053556.html韓国語原文入力:2022-08-05 02:40
訳M.S

関連記事