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尹大統領、警察治安監人事覆し…自ら「大統領パッシング」の波紋広げる理由は?

登録:2022-06-24 06:27 修正:2022-07-07 06:36
警察の治安監人事が覆された未曽有の事態に 
大統領室や与党の権力者による介入の可能性を排除し 
「大統領の裁可なしに警察独自で人事補職」 
わずか半月前の治安正監人事の際も、裁可前に発表
尹錫悦大統領が今月23日午前、ソウル龍山の大統領室庁舎に出勤し、取材陣の質問に答えている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 韓国の警察の治安監(警察の階級の一つ)人事が発表から2時間で覆された事態について、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が「国の綱紀を乱した」と警察を叱責したことで、波紋がさらに広がっている。人事を覆す過程を振り返ってみると、大統領室内部や国民の力などの権力者の介入も疑われる状況であるのに、警察が国の綱紀を乱したという発言で事態を収拾しようとしたためだ。警察内部では、側近である行政安全部長官を通じて法務部検察局と類似した警察局の新設を目指す尹大統領が、自身の意思に反発する警察の「手綱を締める」ための発言と受け止められている。

 23日朝に尹大統領が発した強い警察批判に、警察内部は大きく動揺している雰囲気だ。大統領が自ら「大統領の裁可も出ていない人事案が流出した」、「警察自らが行安部に推薦した人事をそのまま実行した」と述べ、任命権者である自分を無視したという見方を示したからだ。

 尹大統領の「大統領パッシング(排除)」発言とは異なり、わずか半月前に行われた治安正監(警察の階級の一つ)人事の時も、警察庁内定発表(8日)→大統領裁可(9日)の順で行われた。キム・チャンリョン庁長も、同日午前に真相把握のために警察庁を訪れた共に民主党の議員たちと面会し、「警察庁が上げた人事案と異なる1次案を示された」と説明したという。大統領の発言を警察庁長が反論する初めての状況が起きたのだ。キム庁長に会った民主党のペク・ヘリョン議員は、「警察庁が提出した人事案と異なる案が(行安部から)1次案として示され、その後、再び修正された。1次案は行安部と明確に話し合われたものだという。むしろ2時間のあいだにどんなことが起きたのか明らかにしなければならない」と述べた。行安部または大統領室で人事案が修正された可能性があるということだ。実際、2時間後に補職が変わった7人のうち、キム・ハククァン警察庁企画調整官がソウル警察庁自治警察次長に左遷されたことについては、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に国政状況室で勤務したためという噂も流れている。

 警察内部では「警察が大統領をパッシングし、自主的に人事を発表するというのは常識的にあり得ない」と呆れている様子だ。離任のあいさつもできないように急いで人事を発表し、これを2時間で覆す一連の過程は、警察局の新設などに反発する警察組織に今後5年間の「服務指針」を与えたという見方もある。行政ミスとして収められることを、大統領が「警察が国の綱紀を乱した」と発言し、あえて波紋を広げた意図があるということだ。ある警察幹部は、「(大統領が)午後10時に人事を決裁し、翌朝9時までに赴任せよというのはどう説明できるのか。警察組織は何も言うなといっているようなものだ」と話した。

第21代国会上半期の行政安全委員長を務めた共に民主党のソ・ヨンギョ議員と前半期の行政安全委員会所属の議員たちが今月23日午前、尹錫悦政権の警察統制糾弾と警察の中立性を訴えソウル西大門区警察庁を抗議訪問し、警察庁のキム・チャンリョン庁長など指揮部と面会している/聯合ニュース

 これと関連して尹大統領は、警察統制案と見られる警察局の新設について、「検察組織も法務部に検察局を置いている」とし、「問題になることはない」と述べた。過去に警察関連業務を受け持っていた大統領府民情首席室を廃止したため、「当然治安や警察事務を引き受ける行安部が指揮統制をすべき」というのが尹大統領の主張だ。

 ただし、二つの組織を単純比較するには歴史的脈絡や法規定、組織構成などが全く異なる。まず政府組織法上、治安・警察事務は行政安全部の管轄ではない。軍事政権時代に威勢をふるった内務省(現行安部)治安本部が、民主化後の法改正で廃止されたためだ。一方、法務部は1948年の政府組織法制定当時から法務部長官が検察事務を管掌するよう一貫して規定している。検事が裁判官に準ずる強力な身分保障を受けており、捜査・起訴権を持っているため、最小限の牽制装置として長官による文民統制の余地を残したのだ。長官から主要職務を前・現職の検事たちが担当する法務部を、一般公務員が大部分である行安部と比較すること自体が、主要基準を「検察」に置く検察総長出身の大統領の限界だという専門家もいる。 建国大学法科大学院のハン・サンヒ教授は、「国家機関の権限は法律で定めなければならず、法律に明文化された意味に収まらない場合は消極的に解釈しなければならない。治安に関する権限を警察庁に付与したのに、行安部長官が行使できると解釈できる余地はない」と指摘した。

パク・スジ、ソ・ヘミ記者ham@hani.co.kr(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1048273.html韓国語原文入力:2022-06-2323:59
訳H.J

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