首相候補のハン・ドクス氏の任命同意案処理が不透明な中、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はチュ・ギョンホ経済副首相の首相権限代行体制で内閣を構成する迂回路を選ぶことにした。尹大統領は、ひとまず次官人事を通じて行政の空白を埋める一方、就任後できるだけ早く長官を任命し、国務会議の構成要件を満たそうとするものとみられる。
尹大統領は9日、パン・ギソン企画財政部第1次官など15部処の次官人事を発表した。尹氏は「政府運営に空白を生まないようにするという意志を込めて、就任直後に発令する予定」だと述べた。
しかし次官は、国家の主要政策を議決できる国務委員(日本の閣僚に相当)ではない。憲法第88条2項は「国務会議は大統領と首相をはじめ、15人以上30人以下の国務委員で構成する」と定めている。政府組織法施行令である「国務会議規定」第7条は「次官が国務委員の代わりに出席し関係議案に関して発言することはできるが、表決には参加できない」と規定している。
このため、尹大統領は就任後、国務会議の構成要件を満たすために国務委員の任命を強行するものとみられる。そのための具体案がチュ・ギョンホ首相権限代行体制だ。
尹大統領側はひとまず就任当日の10日、ハン首相候補に対する任命同意案を国会に送る予定だ。しかし、ハン首相候補の任命同意案は国会の敷居を越えるのはかなり難しい見通しだ。168議席を持つ共に民主党が、ハン候補の任命同意案に否定的な立場を示しているからだ。
民主党が現在の基調どおり、ハン候補の任命同意案を否決した場合、尹大統領はキム・ブギョム首相の提請(推薦)を受け、チュ・ギョンホ経済副首相を任命する計画だ。その後、チュ候補が首相権限代行として尹大統領に長官の任命提請権を行使し、尹大統領は人事聴聞経過報告書の採択の可否とは関係なく、長官の任命を強行するという構想だ。
9日までに国会人事聴聞経過報告書が採択された候補は計7人。これに加え、尹大統領が早ければ10日午後か11日頃、民主党が強く反対するハン・ドンフン法務部長官候補やチョン・ホヨン保健福祉部長官候補、ウォン・ヒリョン国土交通部長官候補、イ・サンミン行政安全部長官候補、パク・ポギュン文化体育観光部長官候補ら5人の任命を強行すれば、尹錫悦政権の新長官は12人になる。
この場合、国務会議の定足数を満たすためにはさらに4人の国務委員が必要だが、政治家出身でないキム・ヒョンス農林畜産食品部長官やムン・スンウク産業通商資源部長官、チョン・ヨンエ女性家族部長官、ムン・ソンヒョク海洋水産部長官の4人が国務会議に参加すれば定足数を満たせる。
文在寅政権で任命された長官とのぎこちない同居は避けられないが、民主党出身の長官の助けがなくても、12日または13日の国務会議で30兆ウォン(約3兆700億円)半ばの補正予算を議決できるようになるということだ。
一方、文在寅大統領は同日、ユ・ウンヘ社会副首相兼教育部長官、イ・イニョン統一部長官、パク・ポムゲ法務部長官の辞表を受理した。