「5月10日0時」
尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領が公言した大統領府開放の日付だ。5月10日午前0時を期して新大統領の任期が始まるため、これと同時に大統領府を公開するという意志の表れだ。これは現職の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の「引っ越し日程」に直結している。大統領府は文大統領が退任前日の9日、通常業務を終えた後、「ソウル市内の某所」に移動し、一晩を過ごしてから、翌日の大統領就任式に出席すると発表した。
大統領府側「警護など事前協議なしに開放押し進めている」
ソウルに私邸のない文大統領が予定より1日早く官邸を空けるのは通常の状況ではないというのが大統領府内外の意見だ。尹錫悦次期大統領側は「10日午前0時大統領府開放」を公言しながらも、文大統領が「いつどのように」官邸を離れるかについて事前協議をしなかったことが確認された。10日の次期大統領就任式まで警護などのための措置だという話もあるが、大統領府内では退任する大統領に対する礼遇がないという不満の声もあがっている。
大統領府関係者は17日、「10日午前0時から開放されれば、多くの人々が大統領府に押しかけるかもしれない」とし、「引き継ぎ委側からは、就任式に出席のために文大統領が大統領府から出発した後に開放するか、それとも官邸は開放しないかに関する協議が全くない」と説明した。大統領府を開放すれば、官邸前にユーチューバーなど多くの人々が集まる可能性があるにもかかわらず、引き継ぎ委側が文大統領の警護問題などについての意見交換もなく、開放を押し進めているというのだ。大統領府はこのような状況で、文大統領が10日午前、尹錫悦大統領の就任式前まで官邸に留まるのは無理だと判断した。
「大統領がいつどのように出ていけば良いのか分からない状況を作った」
大統領府関係者は、「おやすみになる方を追い出すわけにはいかないではないか」というキム・ウンヘ前次期大統領報道担当の発言も「リップサービスだと思う」とし、「そうでないなら、0時に開放するという話をしてはいけない。大統領がいつどのように出れば良いのか分からない状況を作ることもなかったはずだ」と述べた。これに先立ち、キム前報道担当は尹次期大統領が就任とともに大統領府に絶対に行かないという意志を表明し、「5月10日午前0時をもって、尹次期大統領は大統領府の完全開放するという約束を必ず履行する」と述べた。
文大統領の公式任期は5月10日午前0時の直前までだ。「ソウル市内の某所」に移動しても、軍統帥権はこの時間まで文大統領にある。これと関連し、文大統領が滞在する場所に国防部などとの「ホットライン」を設置する作業が必要だという意見もある。
一部では「引き継ぎ委が大統領府側に開放に備えるため、現大統領官邸前に公衆トイレを設置するよう通知した」という噂も流れたが、これは事実ではないという。大統領府関係者は「大統領府開放を準備する業者側が官邸前を見に来たのは事実だが、トイレ問題のため(早く出ることを)決めたわけではない」と述べた。引き継ぎ委報道担当室は14日、「大統領府開放後、市民の便宜のための簡易トイレを設置する計画だが、設置時期は5月10日以降になる予定であり、現在の大統領府秘書室に事前設置を要請する計画は全くない」と明らかにした。
金泳三・金大中・李明博元大統領らはソウルの自宅で「最後の夜」…盧武鉉元大統領は官邸で
金泳三(キム・ヨンサム)、金大中(キム・デジュン)、李明博(イ・ミョンバク)元大統領は就任式前日に大統領府を後にしたが、彼らはソウルに自宅があった。ソウルに自宅のない盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は、李明博次期大統領が官邸のインテリアに使えるよう、2日間大統領府を離れたが、就任式前日大統領府官邸に戻り、最後の夜を過ごした。盧大統領は就任式当日の朝、大統領府職員たちに見送られながら、大統領府を後にした。
大統領府は、文大統領が9日の執務後、大統領府を離れ、10日の就任式に出席した後、梁山(ヤンサン)の自宅に移動する予定だと明らかにした。梁山の自宅にはオ・ジョンシク大統領府企画秘書官とシン・ヘヒョン副報道官らが同行するという。オ・ジョンシク秘書官は大統領府で5年間、文大統領の至近距離にいた参謀であり、シン副報道官は文大統領の国会議員時代から補佐してきた。「前職大統領礼遇に関する法律」によると、前職大統領は秘書官3人(1級1人、2級2人)と運転手1人について国家の支援を受けることができる。