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韓国の新旧権力、今度は「検察改革」めぐり衝突

登録:2022-03-25 06:24 修正:2022-03-25 08:17
政権引き継ぎ委員会、共に民主党の「検察捜査権の完全剥奪」の圧力受け、法務部の業務報告を急遽取り消し
尹錫悦次期大統領が今月24日午前、ソウル鍾路区通義洞の引き継ぎ委前のテント記者室を訪れ、質疑応答をしている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

合同参謀本部は24日、北朝鮮のICBM発射に対応し、東海上で合同地・海・空ミサイルを発射したと発表した。写真は2017年7月5日、東海岸で行われた韓米合同弾道ミサイル打撃演習で、「玄武2A」(左)と「ATACMS」が同時発射さ 政権引き継ぎ委員会が24日、尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の検察公約に反対の立場を明らかにしてきたパク・ボムゲ法務部長官を問題視して、同日午前に予定されていた法務部の業務報告を突然取り消した。大統領執務室の移転や韓国銀行総裁・監査委員の人選問題で触発された「新旧権力の衝突戦線」が、検察権の強化を掲げた尹氏の公約と共に民主党が再び持ち出した「検察捜査権の完全剥奪(検捜完剥)」を軸にして広がっている。尹氏も「現政権で検察改革を5年間進めてきたにもかかわらず、それができなかったと自ら認めるのか」と述べるなど、不快感を露わにし、「新旧権力の衝突戦線」の前面に出た。

 引き継ぎ委の政務・司法・行政分科委員らは同日午前9時、ソウル通義洞(トンウィドン)の引き継ぎ委事務室で記者会見を開き、「国民が選出した次期大統領の公約に対し、約40日後に政権交代で退任する長官が省庁業務報告を翌日に控え、正面から反対する行為は無礼で理解できない。憤りを禁じ得ない」と法務部に業務報告の猶予を通知したと発表した。同日午前9時30分には法務部、午前11時には最高検察庁の業務報告が予定されていた。

 業務報告の前日、パク長官は記者団に対し、尹氏が公約として掲げた法務部長官の捜査指揮権の廃止について、「検察に対する民主的統制がまだ必要だ」とし、反対の意を示した。また、検察に独自の予想編成権を与える公約については、特殊活動費の使用内訳の公開などを前提に余地を残しつつも、「立法事案」であることを強調した。これを受け、引き継ぎ委員らは「パク長官が検察の独立性と政治的中立性を強化しようとする尹次期大統領の真意を歪曲した」として、法務部の業務報告を突然取り消した。引き継ぎ委は業務報告の方向を修正し、今月29日以前に再び報告を行うよう調整すると発表した。尹氏の公約に賛成の立場を明らかにした最高検察庁の業務報告は、そのまま行われた。

 引き継ぎ委員である検察出身のユ・サンボム国民の力議員は「業務報告の延期は引き継ぎ委員らが決定したことであって、尹次期大統領の意中とは関係ない」と述べた。政治家出身のパク長官が大統領選挙直後から何度も「公約に反対」の立場を明らかにし、引き継ぎ委も前日「法務部長官の反対の立場」に触れ、最高検察庁と切り離して業務報告を受けることを明らかにした状況だった。にもかかわらず、突然再びこれを問題視したのは、前日、韓国銀行総裁候補者の人選問題をめぐり、大統領府と衝突した尹氏の意向が働いたものとみられる。

 特に、「巨大野党の院内代表」選出を控えた民主党が、尹錫悦政権の発足前に「検捜完剥」など文在寅政権の検察改革を最後まで成し遂げると表明したのがきっかけになったようだ。大統領選挙前、民主党はチュ・ミエ元法務部長官が進めた「検捜完剥」が多くの論議を巻き起こしたことを受け、検察と警察の捜査権調整の効果を見守るとして、中断もしくは速度調整に入った状態だった。これに関し、尹氏は通義洞(トンウィドン)引き継ぎ委事務室前で記者団に対し、「現政権の検察改革というのは検察の中立性を守るためのものだ。5年間も進めてきたのにもかかわらず、それができなかったと自ら認めるのか」と述べた。さらに「(検察に)独立的権限を与えるのがより中立に寄与する。長官の捜査指揮権は特に必要ない」とし、公約履行の意志を明らかにした。

大統領職引き継ぎ委員会が法務部の業務報告を電撃的に取り消した今月24日午前、政府果川庁舎に法務部の職員たちが出勤している/聯合ニュース

 政府省庁が次期大統領の国政哲学など新政府の政策基調に応える方向の業務報告をするのが慣例だったことから、退任を控えて次期大統領の公約にブレーキをかけるパク長官の態度が不適切だという指摘もある。一方、過去の引き継ぎ委も、前政権の政策と基本方向が異なる時は、別途懇談会や課題別の作業部会などを構成して、意見の隔たりを埋める方法を取っており、業務報告そのものを拒否したことはなかった。

 引き継ぎ委が法務部の業務報告を再び受けると発表したが、法務部の検事らが「尹錫悦引き継ぎ委」が望む業務報告を再び作り、報告するのは難しいと見られている。現在の政策基調と180度反対の内容を政治家出身のパク長官が承認する可能性はないからだ。このため、法務部の業務報告が白紙化される史上初の状況もあり得ると言われている。法務部の業務報告には、引き継ぎ委が再報告を要求した検察権のほかにも、犯罪予防政策や女性児童人権、矯正、出入国など国民の暮らしと治安と直結する主要事案も含まれている。検察権の強化問題で、これらの事案が後回しになったわけだ。パク長官は同日午前、業務報告の取り消しおよび報告内容の修正の可能性を問う記者団の質問に「今日はコメントを控えさせていただきたい。申し上げるべきことは全部申し上げた」と答えた。その後、退勤の時に業務報告の内容を修正したかを尋ねた記者団の質問にも「特別な変動事項はなかった」と述べた。

キム・ナミル記者、オ・ヨンソ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1036095.html韓国語原文入力:2022-03-25 02:32
訳H.J

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