過去最高に暑かった韓国の秋夕(チュソク、旧暦8月15日の節句)を後にして、米ニューヨークに飛んできた。国連総会の開幕とともに始まった気候ウィークに参加するためだ。
ニューヨークの街や会議で出会った人々の表情はそれほど明るくはなかった。米国の大統領選挙まで6週間を切ったからだ。ドナルド・トランプ候補が当選した場合、米国の気候政策が後退し、気候変動問題が手の施しようもなく深刻になるというのが、人々の懸念の大きな理由だった。米国は他の国の政策に大きな影響を及ぼす覇権国であるだけでなく、世界最大の石油・ガス生産国になったため、そのような懸念が分からなくもなかった。
では、本当にトランプ候補が当選すれば、気候変動への対応は終わりなのだろうか。逆にカマラ・ハリス候補が当選したらまだ希望の光が見えるだろうか。短ければ6週間、長ければ4年間の「気候問題」について懸念を抱いている人なら頭から離れない質問だ。
トランプ候補が当選した場合、気候問題は終わりなのかという質問に答えるのに良い事例がある。トランプ政権1期目だった2017年から2020年当時の話だ。パリ協定を脱退するというトランプ候補の公約よりも、米国の石炭産業と労働者の雇用を元に戻すという約束が大書特筆された。トランプ候補は大統領当選後、米国環境庁の首長に全石炭業界のロビイストを任命したりもした。
しかし、トランプ政権1期目の結果は、言葉とは逆のものだった。石炭産業の労働者たちは再び仕事場に戻ることができなかった。むしろより多くの労働者が石炭発電と鉱山から離れざるを得なかった。75基の石炭発電所が閉鎖された。パリ協定の採択を率いたバラク・オバマ政権2期目よりも早いスピードだった。結局、トランプ政権が終わる頃、石炭産業の雇用は2017年に比べて24%も減った。
その間、世界では何が起きたのだろう。世界の新規石炭発電所への投資は同期間中に80%減少した。最後に残った「石炭金融」支援国だった韓国、中国、日本による石炭への投資も2020年に事実上終わりを迎えた。英国を基点に拡散した2050年炭素中立(カーボンニュートラル)宣言は、トランプ大統領の1期目の任期が終わる前に韓国、中国(2060年炭素中立達成)、日本が参加して急速に広がった。
そのようにトランプ政権1期目は石炭産業の日没と共に進んだ。そのためか、今回の大統領選挙で石炭産業を元に戻すという話はあまり出てこない。「石油・ガス最強国」がその代わりになったが。
米大統領の影響力を過小評価してはならないが、その影響を過大評価してもならない。 すでに変わった歴史の道筋は、簡単には前には戻れない。その流れは「インフレ抑制法案」(IRA)を通じて米国内の多くの州の再生エネルギー産業・インフラとして根付き始め、欧州では「ネットゼロ産業法」として現れた。石炭・液化天然ガス(LNG)の最大輸出国の一つであるオーストラリアは、新規鉱山・ガス田の温室効果ガス排出がカーボンニュートラルになるよう強制する規制を導入した。
水の流れを変える力は、むしろ他のところから生まれる。今年のニューヨーク気候ウィークは数千人に達する青少年団体「未来のための金曜日」(Fridays For Future)が作り出した力だ。4年前、アジアで初めて政府の温室効果ガス削減目標を対象に訴訟を起こし、勝利した韓国の青少年たちが作り出した力だ。オーストラリア政府が多くの石炭・ガス資源を後にして「再生可能エネルギー超大国」になるという宣言を作り出した力だ。英国の新政権が全世界の再生エネルギー転換を加速化するために「再生エネルギー連盟」を新たに始めるようにした力だ。 米国テキサスで多数のLNG輸出事業にブレーキをかけ、結局ジョー・バイデン政権の新規LNG輸出許認可の暫定中止決定を引き出した地域共同体の力だ。
これまで水の流れを変えてきた力が衰えない限り、歴史は前進する。