本文に移動

北朝鮮のキム・ヨジョン氏「韓国の防衛相、先制攻撃の妄言…クズ、狂人、対決狂」

登録:2022-04-04 06:22 修正:2022-04-06 07:58
ソ・ウク長官「発射兆候見られれば、精密打撃する能力あり」発言に、キム・ヨジョン副部長が「談話」を発表 
「委任によって厳重警告」…ソ長官と「南朝鮮軍部」猛非難 
パク・ジョンチョン書記も談話発表…尹次期大統領の「先制打撃」発言を念頭に置いた可能性も
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長が「(平壌)中区域の瓊楼洞に立ち並ぶ普通江川岸の段々式住宅区を視察された」と、「労働新聞」が3日付、1-2面に13枚の写真を添えて報道した/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 朝鮮労働党中央委員会のキム・ヨジョン副部長が「南朝鮮(韓国)は、国防部長官という者が軽々しく吐き出した妄言のせいで、深刻な脅威に直面することもあり得る」とし、「我々は南朝鮮に対する多くのことを再考する」と述べたと、「労働新聞」が3日付で報じた。

 キム副部長は個人名義の「談話」で、「南朝鮮軍部が我々に対する深刻な水準の挑発的な刺激と対決の意志を表した以上、私も委任によって厳重に警告する」とし、このように述べた。「委任によって」という表現は公式的には「労働党中央委」、実質的には金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記兼国務委員長の「委任」による談話という意味だ。

 キム副部長は「1日、南朝鮮国防部長官は我が国に対する『先制打撃』という妄言を吐き出し、共和国に反対し対決しようとする狂気をあらわにした」としたうえで、「狂人」や「クズ」などと罵倒した。彼女は「核保有国に対し、『先制打撃』を軽々しく口にするなど、自分たちにとっても決して得にならない客気に駆られた言動を見せた」とし、「同じ民族に銃を向けたくてしかたがない対決狂」だと非難した。

 これに先立ち、ソ・ウク国防部長官は1日、陸軍ミサイル戦略司令部と空軍ミサイル防御司令部改編式に出席し、「(北朝鮮の)ミサイル発射の兆候が明確な場合、発射の原点と指揮・支援施設を精密打撃できる能力と態勢も備えている」と述べた。キム副部長はこれを「『先制打撃』妄言」と規定した。

キム・ヨジョン朝鮮労働党中央委副部長/朝鮮中央通信聯合ニュース

 パク・ジョンチョン労働党中央委員会書記もソ・ウク長官の発言を狙った「談話」を発表し、「我が軍部を代表し、一つだけ明確に警告する」とし、「もし南朝鮮軍が我が国を相手に先制攻撃のような危険な軍事的行動を敢行すれば、我が軍隊は総力をあげて、容赦なく、軍事的に最も強い力をソウルの主要標的と南朝鮮軍を壊滅させることに集中する」と明らかにした。パク党書記は、キム・ヨジョン副部長の談話とともに、「労働新聞」の4面に掲載された「談話」で、「核保有国に向かって『先制打撃』を口にするなんて、気が狂ったのか、それとも間抜けなのか。対決意識に溺れた狂人だ」と述べ、ソ長官に暴言を浴びせた。

パク・ジョンチョン労働党中央委書記=労働新聞より//ハンギョレ新聞社

 「対南事業を統括」するとされるキム副部長と「軍序列1位」のパク書記の連続談話は、2020年6月に開城(ケソン)南北共同連絡事務所ビル爆破(2020年6月16日)に及んだいわゆる「対北朝鮮ビラ事態」を連想させる。キム副部長の対南非難談話は、昨年9月15日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領を名指しで批判した「談話」以来、201日ぶり。「パク・ジョンチョン談話」は、「米国をはじめとする敵対勢力」を狙って人民軍総参謀長の資格で2019年12月14日に発表した談話以来、841日ぶり。

 何よりもキム副部長とパク書記の談話が労働党中央委機関紙として「人民の必読書」である「労働新聞」に載った事実に注目する必要がある。状況の展開によっては、2020年6月の対北朝鮮ビラ事態のように、「言葉」に止まらず「行動」につながる可能性があるからだ。さらにキム副部長は「委任によって」という言葉で、自分の談話が「公式見解」であることを強調しており、パク書記は「南朝鮮軍部の反共和国対決の狂気について、我が人民と軍隊が必ず知らなければならないため、私はこの談話を公開する」と明らかにした。「人民と軍隊」に公表した以上、いかなる形であれ「後続措置」を取る可能性が高い。

 ただし、キム副部長とパク秘書が談話の標的を「南朝鮮国防部長官ソ・ウクの危険な妄言」と「南朝鮮軍部による反共和国の対決狂気」に限定した事実に留意する必要がある。ひとまず、文大統領を含む文在寅政権全体を狙った談話ではないという政治的線引きと読めるためだ。南北間の「実質行動」を含む軍事的衝突に突き進むというよりは、「予告性の警告」に近いものと見られる。

 これに関し、金正恩労働党総書記兼国務委員長が「(平壌)中区域瓊楼洞に立ち並ぶ普通江(ポトンガン)川岸の段々式住宅区を視察された」と、「労働新聞」が関連ニュースを同日付1~2面に13枚の写真を添えて報道したことは注目に値する。「祖国の繁栄と人民の幸せのために不眠不休で労を惜しまない敬愛なる金正恩同志の愛民献身」という「労働新聞」の表現のように、金総書記の最優先の関心事は「人民の暮らし」という政治的なシグナルと言えるからだ。金正恩総書記の普通江川岸高級住宅団地の現地指導には、キム・ヨジョン副部長も随行した。

 また、キム副部長とパク書記の談話では取り上げなかったものの、尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領が大統領選挙期間に「先制攻撃」関連の発言を何回も公にした事実を念頭に置いたものと考えられる。二つの談話が表向きにはソ・ウク長官と「南朝鮮軍部」に照準を合わせたが、根本的には5月10日に発足する「尹錫悦政権」の北朝鮮政策の牽制が狙いである可能性がある。

 何よりも金正恩総書記の「人民の暮らし」への関心を示す活動を1~2面に、キム・ヨジョン談話とパク・ジョンチョン談話を4面に掲載した「労働新聞」の記事配置は、それ自体が北朝鮮首脳部の内外に向けた「政治シグナル」と言える。2020年6月の対北朝鮮ビラ事件当時の開城南北共同連絡事務所爆破と各部門決起大会など対南強硬基調をキム副部長が主導し、金総書記が「対南軍事行動計画の保留」を決定(2020年6月24日労働党中央軍事委第7期第5次予備会議)し、南北関係の緊張を低めた前例を想起する必要がある。

 北韓大学院大学校のヤン・ムジン教授はまず「4月の緊張高潮の時期を控え、本格的な名分争いのための声明戦の始まり」だとし、「今後、南北関係対決構図を本格化するという予告」とみることができると述べた。韓国政府内外では4月中旬以降、金日成(キム・イルソン)主席の生誕日(太陽節、4月15日)110周年と韓米合同軍事演習が重なり、「強対強」で対峙する恐れがあるとみている。

 最近の朝鮮半島情勢の流れをみる限り、その可能性が高いとは言えないが、「労働新聞」が金正恩総書記の「人民の暮らし」に関連した活動を際立って強調したことから、韓米両国政府の対応方向によっては北朝鮮の「行路変更」の可能性を排除できないという希望混じりの観測もある。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1037275.html韓国語原文入力:2022-04-04 02:32
訳H.J

関連記事