尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領は24日、朴槿恵(パク・クネ)政権の歴史国定教科書推進の主役だったイ・ベヨン元韓国学中央研究院(韓中研)院長を特別顧問に任命した。臨時政府の正統性を否定し、親日や独裁を美化したとの批判を受けて廃棄された国定教科書を主導した人物を、尹次期大統領が特別顧問という象徴的な地位に就けたことで、李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵両政権時代の「歴史的退行」の試みが新政権で繰り返されるのではないかと懸念する声があがっている。
尹氏はこの日、梨花女子大学の元総長でもあるイ・ベヨン元院長を特別顧問に任命した理由について「普段から国民を愛し、恐れることを知る愛民精神こそが真の国家指導者像であることを強調してきた同氏の価値観は、尹錫悦政権と志向するところが一致する」と述べた。特別顧問は政治の重鎮たちを中心に構成され、次期大統領の諮問に答えるほか、各界各層との意思疎通の窓口役として活用されてきた。尹氏は16日にも、特別顧問としてユン・ジンシク元産業資源部長官、韓京大学のイム・テヒ前総長、イ・ソクチュン元国務調整室長、パク・ポギュン元中央日報副社長、キム・ヨンファン元科学技術部長官、デジタルソウル文化芸術大学のイ・ドングァン総長、ユ・ジョンピル元国会図書館長を任命している。尹氏は今回の引き継ぎ委の特別顧問に、李明博元大統領引き継ぎ委にいた人物を大勢抜擢している。
イ・ベヨン元院長は保守派の歴史学者で、李明博政権で教育科学技術部傘下の諮問機関である歴史教育課程開発推進委員会の委員長を務め、朴槿恵政権では2013年9月から2016年9月まで韓中研の院長を務めた。韓中研は国史編纂委員会、東北アジア歴史財団と共に歴史研究の3大国家機関に数えられる。2018年に教育部が発行した「歴史教科書国定化真相調査白書」によると、イ元院長は大統領府の推薦により、歴史国定教科書編纂審議委員として活動した。当時の国定化推進過程では、大統領府が歴史教科書の具体的内容に関する指示を下したケースが多く、イ元院長も大統領府首席やそれ以上の地位にある複数の人物と接触していたことが白書に記されている。イ元院長は、教育部が中学校の歴史教科書と高校の韓国史教科書の国定化を発表する2015年10月の記者会見の席に出席してもいる。
朴前大統領の弾劾をわずか3カ月後に控えた2016年11月28日に公開された歴史国定教科書は、朴正煕(パク・チョンヒ)政権の「功」を水増しする一方で「罪」を合理化しており、親日派についての記述も既存の検定教科書に比べて大幅に削られていた。朴正煕維新独裁の3選改憲が国家安保のための選択であるかのごとく読み取れるように表現した部分もあった。一部のニューライト学者を含む極右陣営の主張を丸ごと受け入れ、1948年8月15日を「大韓民国政府樹立」ではなく「大韓民国樹立」と修正した。これは、臨時政府や抗日運動の歴史と意味を薄れさせるという批判を受けた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2017年の就任直後に歴史国定教科書の廃棄を指示し、教育部は2018年6月に「歴史教科書の国定化の試みは権力の横暴であり、時代錯誤的な歴史教育の壟断だった」として謝罪した。
歴史学界と歴史教育界からは、直ちに憂慮の声があがった。朴槿恵政権の歴史教科書国定化阻止の先頭に立ったある元教授は「国定教科書を作った政府の主要人物を再び重用すれば、その人の歴史観が新政府の政策に反映されざるを得ない」とし「全国民的な反対にぶつかっただけに国定化という形式は取らないだろうが、現行の検定教科書を『左寄り』などと決め付けて内容を修正しようと試みる可能性はある」と懸念を示した。全国歴史教師会のパク・レフン会長も「イ元院長は当時、国定化の先頭に立った最も中心的な人物」とし「歴史は国家が独占できるものではなく、様々な解釈が必要であるにもかかわらず、朴槿恵政権は彼らが考える『正しい歴史観』だけを強要することで国民的反対にぶつかった」と述べた。パク会長は「歴史教育において退行的な試みは二度とあってはならない」と強調した。