野党「国民の党」のアン・チョルス候補は20日、「私はこれから自分の道を歩む」と述べ、野党第一党の「国民の力」のユン・ソクヨル候補との野党候補一本化の提案を撤回した。大統領選挙の終盤の変数と言われてきた野党候補一本化の可能性がひとまずなくなったことで、残り17日の選挙戦は再び揺れ動いている。
アン候補は20日午後、国会の疎通館で緊急記者会見を行い、「1週間待って見守った。これ以上の無意味な過程と時間は整理する」と述べ、大統領選を独自完走するとの意思を明らかにした。アン候補は13日の大統領選候補登録の直後、ユン候補に対し、有権者による予備選挙方式の世論調査での一本化を電撃的に提案していたが、「これ以上(ユン候補の)回答を待つことは無意味だと結論付けた」との立場を明らかにしたのだ。アン候補はユン候補に対し「3週間の本選挙のうち1週間という十分な時間を与えた。一本化が実現しなかった責任は野党第一党とユン候補にあるということを明確に申し上げる」と述べ、すべての責任を国民の力に負わせた。
アン候補はこの日の記者会見の冒頭で、自らの一本化提案について「どうにかして一本化フレームに閉じ込めようとする政治環境と構図を克服するための苦肉の策であり、政権交代のために力を合わせてほしいという世論の意を受け入れようとしたもの」と説明した。アン候補は、候補一本化の対象だった国民の力に対しての感情的な批判に会見時間の半分近くを割いた。アン候補は国民の力に対し「私の提案を受けたユン候補からは、1週間が過ぎても何の返事もなかった。むしろユン候補の意思だと言って野党第一党の様々な人々が割って入ってきて、私の一本化提案の誠意をおとしめ、歪曲した」と批判した。そして「我が党が直面した不幸に乗じて、喪中に候補辞退説や京畿道知事代価説を流すなど、政治的謀略をためらわなかった」、「この一週間の無対応と一連のフェイクニュース流布によって、野党第一党は一本化の意志も誠意もないということを、十分かつ明確に示した」と強く非難した。公式の選挙運動初日の15日、国民の党の遊説バスの事故で同党の地域選挙対策委員長ら2人が死亡し、アン候補が選挙運動を中断した際に、国民の力から出たと推定される根拠のないデマに言及して、不快感をあらわにしたのだ。アン候補は続けて「(ユン候補の回答を)さらに待つということは、私自身はもちろん、私を大切に思ってくれるすべての党員同志と全国の支持者の方々にとって屈辱的なものになる」とし「傷つけられ侮辱されることは、私がやめさせなければならなかった」と一本化交渉の決裂を宣言した背景を語った。
アン候補の独自完走発表により、今回の選挙が多者構図で繰り広げられる可能性が高まったことで、保守層の分裂、中道層の民意の変化が予想される。「イ・ジェミョン-ユン・ソクヨル」2強による超接戦の薄氷構図の中、アン候補を取り込むための両者の求愛は最後まで熾烈なものになるとみられる。
まだ一本化の扉が完全に閉ざされたわけではないという解釈も示されている。龍仁大学教養学部のチェ・チャンリョル教授(政治学)は本紙に対し「アン候補は選挙動力を復活させ大義名分を見出すため、ボールを改めて国民の力の方へと投げかけている」とし「薄氷状況のユン候補側は、何とか一本化を成し遂げるための努力を続けるとみられる。一本化の可能性は選挙前日まではまだ残っているということ」との見通しを示した。