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[ニュース分析]金総書記はなぜ45カ月ぶりに「核・ICBM」カードを取り出したか

登録:2022-01-21 06:17 修正:2022-01-21 08:06
バイデン大統領の無関心に痺れを切らし「承認に向けた闘争」? 
核実験「検討」指示で交渉可能性残し、米国にボールを渡す 
中国の五輪考慮し、故金日成主席の誕生日の4月15日前後に行動起こす可能性も
朝鮮労働党の金正恩総書記が労働党政治局会議で、対米「信頼構築措置を全面的に見直し、暫定中止したすべての活動を再稼動する問題を速やかに検討するよう」該当部門に指示したと、「労働新聞が」今月20日付1面全面にかけて報道した/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)総書記兼国務委員長が「核実験、大陸間弾道ロケット(ICBM)発射実験のモラトリアム(一時猶予)」措置を撤回する意向を示した。「経済・核並進路線の終了」と「社会主義経済建設に総力集中」の戦略路線を採択した2018年4月20日の労働党中央委員会第7期3回全員会議で、「核試験と大陸間弾道ロケット発射(実験)の中止」を宣言し、ドナルド・トランプ米大統領とシンガポール首脳会談(2018年6月12日)で、「核・ICBMのモラトリアム」を約束してから3年9カ月ぶりの動きだ。

 米国のジョー・バイデン大統領就任1周年(1月20日)に合わせて発表した、対米政策の重心を「交渉模索」から「対決」に再び移す可能性があるという「警告」だ。

 2019年2月、ハノイで2回目の朝米首脳会談が物別れに終わって以来、3年近く続いてきた朝鮮半島情勢の膠着局面にこれ以上耐えられなくなり、積極的交渉であれ、対決・衝突であれ、米国に選択を迫る対米シグナルだ。長期化する「制裁・コロナ禍・経済難」のために乱れた民心をなだめ、活路を見出すための布石でもある。朝鮮半島情勢が重大なヤマ場を迎えている。

 問題は米国政府の反応だが、バイデン大統領は111分にわたる就任1周年記念記者会見で「北朝鮮」については一切言及しなかった。内戦レベルの激しい政派対立やオミクロン変異株の大流行、米中戦略競争、ウクライナ危機など内外の難題を抱えるワシントンで、「北朝鮮」はまず関心事ではないことを裏付けている。逆説的に、金総書記が「核・ICBM」カードを45カ月ぶりにちらつかせ、米国に向かって「承認に向けた闘争」に再び乗り出した理由でもある。

 ただし、金総書記が19日に主宰した労働党中央委第8期第6回政治局会議と関連した「労働新聞」20日付の1面の報道文を注意深く読むと、北朝鮮は直ちに核実験やICBMの発射実験を行うと予告したわけではない。政治局が「対米対応方向を討議」し、「信頼構築措置の全面見直し」と「暫定的に中止していたすべての活動の再稼働」を「決定」したのではなく、こうした問題を「速やかに検討することを該当部門に指示した」という内容だ。核実験とICBMの発射実験のような戦略的軍事行動の可能性を米国に「警告」しながらも、「経路変更」の可能性も同時に残しているわけだ。バイデン大統領が「相応の措置」を提案し、積極的に乗り出すなら、北朝鮮体制の特性からして、金総書記の「決断」を名分に「非核化交渉」へと旋回することもあり得るとみられる部分だ。

朝鮮労働党の金正恩総書記が労働党政治局会議で、対米「信頼構築措置を全面的に見直し、暫定中止したすべての活動を再稼動する問題を速やかに検討するよう」該当部門に指示したと、「労働新聞が」今月20日付1面全面にかけて報道した/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 問題は「時間」があまりないということだ。故金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記の誕生日は、北朝鮮で「民族最大の慶事、太陽節」(4月15日)と「光明星節」(2月16日)と呼ばれているが、北朝鮮側はこの時期に合わせて核実験や長距離弾道ミサイルの発射実験を行った前例がある。3回目の核試験は光明星節を4日後に控えた2013年2月12日に行われた。金正恩体制とオバマ米政権の関係が決定的にこじれる契機となった長距離弾道ミサイル「光明星2号」(2009年4月5日)と「光明星3号」(2012年4月13日)の発射は、太陽節を控えて行われた。

 北朝鮮側が実際の核実験、ICBMの発射実験のような戦略的軍事行動に乗り出すなら、北京冬季五輪(2月4~20日)と重なる光明星節より、太陽節に合わせる確率が比較的高い。同時に「対米対応」と「慶祝」を兼ねるなら、核実験よりは平和的な宇宙利用を掲げた「人工衛星打ち上げ」として大陸間弾道ロケットが選ばれる可能性が高い。

 これらを踏まえると、北朝鮮側が提示した1次期限は「太陽節」と言える。複数の元韓国政府高官は、北朝鮮が「しばらくは各種談話と多様な中低レベルの軍事行動で米国に圧力をかけ、態度の変化が見られなければ、太陽節頃に衛星打ち上げとしてICBMを発射する可能性がある」と予想した。

 ある元統一部長官は「内外の難題に直面したバイデン大統領は『北朝鮮問題』に集中する余力がなく、習近平中国国家主席は在韓米軍の前進配置と戦力増強の口実になる朝鮮半島の軍事的緊張の高まりを負担に思う」とし、「金総書記の不満と困難が理解できないわけでもないが、自制と知恵が求められる時」だと述べた。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1028225.html韓国語原文入力:2022-01-21 02:32
訳H.J

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