記録がないと言い逃れしていた日本政府が、衆議院議員の指摘を受け、強制徴用被害者が厚生年金へ加入していたことをようやく認めた。被害者支援団体は「今回も脱退手当として99円(韓国ウォンで1000ウォン)を支給するのか」として日本政府を糾弾した。
市民団体「勤労挺身隊ハルモニと共にする市民の会(市民の会)」と社団法人日帝強制動員市民の会は7日、光州広域市議会市民疎通室で記者会見を開き、「日本年金機構は先日、チョン・シニョンさん(91)の厚生年金加入を認めた」と発表した。
1944年から45年にかけて、三菱重工業の名古屋の工場で強制労働させられたチョンさんは昨年1月、他の強制徴用被害者、遺族とともに三菱重工を相手取って損害賠償請求訴訟を起こした。三菱重工側は法廷で、強制動員の記録がないとして責任を回避している。
被害者は日本の支援団体を通じ、今年6月に日本年金機構に厚生年金の加入記録を照会したが、「記録がない」という回答を受けた。続いて、年金番号を保管していたチョンさんと支援団体は、日本の本村伸子衆議院議員に支援を要請。本村議員は8月に厚生労働省に再調査を要求した。2カ月後、厚生労働省は本村議員に「戦時中に厚生年金被保険者名簿を消失した。『被保険者記録回復基準事務取扱要領』にもとづき、チョンさんの厚生年金加入を認める」と回答した。チョンさんの厚生年金の加入期間は11カ月だった。
被害者支援団体は反発している。チョンさんと日本で共に働いていたヤン・クムドクさん(92)のケースから見て、チョンさんの年金脱退手当も99円と予想される。日本年金機構は、これさえも受け取り手続きについては本人に通知していない。2014年にはキム・ジェリムさん(91)ら4人の強制徴用被害者が、代理人の口座を通じて199円を受け取っている。
市民の会のイ・グゴン代表は「日本年金機構はチョンさんに対し、厚生年金脱退手当を直接受け取りに来いという態度を示している。日本人や在日韓国人には貨幣価値の変動を考慮して支給しているのに、韓国人にだけは76年前の額面で支給している」と批判した。
この日の記者会見に出席したチョンさんは、「日本では東南海大地震で友人たちが亡くなり、爆撃機が飛んでくるたびに隠れてぶるぶる震えていたことを覚えている。お腹がすいてゴミ箱からご飯を拾って食べたり、海辺で泣いたりした。悔しくても日本に金を受け取りに行く」と述べた。ヤンさんは「日本政府は謝罪の一言がそんなに難しいのか。国民とジャーナリストには関心を持って立ち上がってもらいたい」と訴えた。
光州・全羅南道地域の強制徴用被害者と遺族87人は、2019年4月と昨年1月の二度にわたり、三菱重工などの戦犯企業11社を相手取って光州地裁に集団損害賠償請求訴訟を起こした。このうち三菱重工(原告16人)と住石ホールディングス(元住友石炭鉱業、8人)の裁判が進められている。原告企業は、強制動員の記録がなく、1965年の韓日協定で個人請求権は消滅しており、請求権の消滅時効も過ぎていると主張している。