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韓国、わずか1カ月で止まった日常回復…その裏には政府の4つの失策

登録:2021-12-06 08:06 修正:2021-12-06 08:57
専門家6人が診断した「ウィズコロナ」の失敗の原因 
(1)高齢層のワクチン免疫力低下の予測失敗 
(2)一度に解除された新型コロナの防疫措置 
(3)不十分だった重症患者用の病床の増床計画 
(4)コロナ回復患者の一般病床への移送戦略の不明確さ
韓国政府は日常回復の開始後に急激に広がっている新型コロナの流行を統制するため、6日から4週間、私的な集まりでの最大人数を首都圏では6人、非首都圏では8人に制限し、防疫パスの適用施設を室内の大衆利用施設全般に拡大する=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 韓国政府は、6日から再び「社会的距離措置」(ソーシャル・ディスタンシング)の強度を引き上げる。6日から4週間、私的な集まりへの参加人数は首都圏で6人、非首都圏で8人に制限され、カフェや飲食店などでも「防疫パス」(ワクチン接種証明・陰性確認制)の適用が義務化される。先月1日に段階的日常回復(ウィズコロナ)を宣言してから、わずか5週間後のことだ。先月初めの段階では、政府は今月中旬には、先月よりも防疫措置を緩和する「日常回復第2段階」への移行を構想していたが、わずか5週間で状況は正反対に向かっている。

 政府が日常回復計画を先送りし防疫を強化せざるを得なかった理由は何だったのだろうか。また、日常回復計画を継続するためには、どのような点を補わなければならないのだろうか。本紙は5日、6人の防疫・医療専門家に意見を聞いた。

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「すでに10月には重症・死亡率が上昇していたが、予測が不十分だった」

 まず、政府の予測に対し、新型コロナの感染者と重症患者の増加の規模が大きかった。中央防疫対策本部の5日0時基準の発表によると、韓国内の新規感染者は5128人で、1日に初めて5000人を超えてから、5日連続で5000人台前後が続いている。重症患者数も、1日から5日連続(723人→733人→736人→752人→744人)で700人台を超えた。嘉泉大学吉病院のオム・ジュンシク教授(感染内科)は、「(新型コロナの)流行予測を誤ったようだ」と述べ、「流行の状況がこのように本格的に増えるまでには時間的な余裕があると判断していたようだ」と分析した。

 政府の予測失敗は、ワクチンを接種した高齢層の免疫力低下や、新型コロナ患者の重症化率の増加などの状況を考慮していなかったからだという評価が出ている。カトリック大学医学部のペク・スニョン名誉教授(微生物学教室)は、「(ウィズコロナを施行する前の)10月には、すでに新型コロナ患者の重症化率と死亡率が高まっていた。さらに、(ワクチン接種者の)免疫力が低下していた」と指摘した。翰林大学聖心病院のチョン・ギソク教授(呼吸器内科)も、「政府は重症患者を中心に(新型コロナの流行を)管理すると言っていたが、それならば準備と予測をしていなければならなかった」と述べ、「予測指標が悪化していたことも無視していた」と指摘した。

 準備されていた水準に比べ、一度に防疫措置が解除された点も、日常回復第1段階の失敗の原因に挙げられた。段階的日常回復計画は全部で3段階あるが、先月1日に実施された第1段階に、防疫解除措置があまりにも集中していたということだ。嘉泉大学医学部のチョン・ジェフン教授(予防医学)は、「大規模集会の実施制限と私的な集まりでの人員制限以外の制限措置は、実は第1段階でほとんどすべて解除された」とし、「医療システムや防疫システムにおいて(新型コロナの感染拡大と重症患者の増加規模が)増加するスピードが極めて速く、医療能力の増加速度が相対的に追いつくことができなかった」と述べた。

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重症患者が増えても病床確保が容易でなかった

 専門家らは特に、病床の準備不足もウィズコロナを継続できなくなった主な理由だと口をそろえる。重症患者の増加に比べ、重症患者用の病床を円滑に確保できなかったという評価だ。これは二つの側面から探ることができる。一つ目は、病床の増加計画が不十分だったという点だ。ペク・スニョン教授は、「臨時病床でも作る方法を考慮しなければならなかったが、プランBが全くなかった。全国にいるパートタイムの医者を雇用すれば、新型コロナを専門に担当する臨時病床は十分に作ることができる」と指摘した。チョン・ギソク教授も、「公立病院を新型コロナ専門の病院にしたり、民間病院を借りて6カ月または1年間補償し、新型コロナ専用病床を確保しなければならない」と述べた。政府は先月、病床確保に対するインセンティブを増やし、各病院で重症患者用の病床を確保するための行政命令などの措置をとったが、施設や人員などの面で適切な数の重症患者用の病床を確保するには十分でなかったという評価だ。

 二つ面に、集中治療室に入れられ回復した人々を「ステップダウン」(感染から回復した患者を一般病床に移すこと)する戦略など、既存の病床運営計画も明確ではなかったという指摘だ。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は、「集中治療室にあまりにも多くの軽症患者が長く入院しているのも事実」だと述べ、「大学病院は重症患者病床だけを運営しており、ステップダウン病床は運営していない。政府がこのような仕組みをつくったのが根本的な間違い」だと指摘した。このように、集中治療室と一般病床がある病院が連携されていないと、集中治療室への入院が長引くという指摘だ。キム教授は、「患者の容体が好転したら一般病室に移せる病院であれば、集中治療室には5日ほど入院すればいいが、別の病院に移送するとなると(患者の)容体はもっと良くならなければならず、10日ほど入院することになる」と説明した。

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防疫強化で設けた時間は4週間、今からでも行わなければならないこと

 専門家らは、政府が防疫措置を強化した現時点までの「第1段階日常回復」の過程で明らかになった問題点を、すみやかに補わなければならないと指摘している。チョン・ジェフン教授は、「防疫措置で4週間の時間を設けた」とし「段階的日常回復に移行するためには、病床や人員などの強化が止まってはならない。医療システムへの負荷を減らすためには、ハイリスク群へのブースター接種(追加接種)も積極的に行わなければならない」と主張した。

 さらに、誰が集中治療室で治療され、誰が在宅治療を受けることになるのかを、早期に識別する基準も設けなければならないというのが専門家らの説明だ。国立中央医療院のチョン・ギヒョン院長は、「病床待機者が少しずつ増加しているが、重症になる可能性がある症状を早期に選りわけ、そのような人々への措置を取ることが重要だ」とし、「重症度の分類と適切な病床割当が円滑に進められるよう努力しなければならない」と分析した。そのためには、在宅治療に対する信頼度を高めることも重要だ。チョン院長は、「在宅治療の細かい点を補い、国民の不安を減らさなければならない」と説明した。

 新型コロナ患者をケアする医療スタッフが十分に現場に投入される構造も必要だ。オム・ジュンシク教授は、「重症病床や在宅治療の関連で働く医療スタッフが離れないよう支援することが極めて重要だ」と述べ、「医療スタッフと自治体の現場スタッフに、予算と人員の支援をすることなく実施を強要してはならない」と指摘した。キム・ユン教授も「勤務中の看護師に対する処遇を改善し、人員を追加しなければならない。病棟に数年間勤務し、3年または5年の熟練した看護師は、短期間に教育すれば集中治療室に勤められるようにすることが可能だろう」と予想した。

 さらに、小規模の自営業者がソーシャル・ディスタンシングに積極的に参加できる対策も必要だ。チョン・ジェフン教授は、「段階的日常回復から防疫を強化する方向に移らなければならないことは、今回が最後にはならないはずで、次もこのような状況が生じることがありうる」とし、「国民にもう一度ソーシャル・ディスタンシングに参加してほしいと伝えるためには、参加する国民に対して補償基準が用意されていなければならない」と述べた。

パク・チュニョン、クォン・ジダム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1022073.html韓国語原文入力 :2021-12-06 04:59
訳M.S

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