「韓日関係の悪化という政治的問題とは別に、釜山(プサン)と福岡の広域経済圏を作る必要があります」
釜山市とハンギョレ統一文化財団が開いた「2021ハンギョレ-釜山国際シンポジウム」2日目の18日午後、「危機の韓日関係、釜山市の役割は」というセッションで、釜山商工会議所のイ・ヨンファル常勤副会長はこのように提案した。
韓日関係はこれまで、日本軍「慰安婦」問題や強制労働賠償などの歴史問題に加え、2019年の日本政府の輸出規制措置以降、膠着局面を抜け出せずにいる。他の討論者たちも韓日関係の悪化で数十年間築いてきた釜山と日本の交流協力関係が揺るがないよう努力すべきだと強調した。
■「釜山-福岡広域経済圏を形成すべき」
釜山と福岡は直線距離で210キロメートルほどの距離だ。国境を越え両都市をつなぐ超広域経済圏プロジェクトは、2008年から始まった。両都市が北東アジアの経済ベルトの軸になるという目標に共感したからだ。その後、両都市は経済協力会議を発足させ、多様な交流と協力を続けてきた。
イ副会長はこれにさらに集中すべきだと主張する。彼は「両都市は観光やサービス、産業、貿易など経済的に密接な関係を結んでいる。特に自動車や鉄鋼、化学など産業構造の側面からも相互補完的要素がある。相乗効果が大きい」と述べた。さらに「釜山市の積極的かつ安定的な政策作りと実行の意志が必要だ」と強調した。
東西大学のイ・ウォンボム教授(日本語学科)も「韓日関係が悪化し、釜山と日本の地域都市間の草の根交流が中止され、地域経済に悪影響を及ぼしている。国境を越えて釜山-福岡広域経済圏が作られれば、両国の中央政府間の関係悪化を牽制する役割も果たせる」と説明した。
イ副会長は「韓日海底トンネル」を広域経済圏形成の核心要素に挙げた。「海底トンネルは両都市の経済協力を加速できるインフラになるだろう。人的・物的交流が拡大されれば広域経済圏の形成の呼び水になると期待している」と述べた。ただし「海運と航空運送の補完性、政治的利点などに関する議論が先に行われるべきだ」と付け加えた。
■「民間交流協力の活性化に努めるべき」
釜山と日本の大学生など民間レベルの交流協力活性化への支援が必要という主張もあった。
イ・ウォンボム教授は「釜山圏と福岡圏の大学が締結したコンソーシアムを活用し、『釜山-福岡版エラスムス』を作るなど、互いを理解できる基盤を作る支援策を講じるべきだ」と述べた。エラスムスとは、欧州国家間の調和を図るために欧州連合(EU)が実施している大学生交流プログラムだ。
オンラインで参加した立命館大学の勝村誠教授(政策科学部)は「中高年層の韓国に対する世論は悪化したが、若い世代ではK-POP、ドラマなど、韓国に対する人気と関心は依然として高い。大学では韓日関係の悪化にかかわらず、韓国語を学ぼうとする学生が増えた」と伝えた。
勝村教授は「若い世代は韓国社会をもっと深く知りたいと思っている。両国の若い世代のために両国の相互理解につながる教育プログラムの開発にもっと力を入れなければならない」と述べた。イ教授も「韓日の民間団体が5年間の努力の末、2017年に『朝鮮通信使に関する記録』をユネスコ『世界の記憶』に共同で登録することに成功した。こうした肯定的な記憶を広く知らせることで、韓日関係を未来志向的に発展させていくべきだ」と強調した。
■「人間に対する信頼が韓日関係改善に役立つ」
「義人イ・スヒョン」の初の評伝『イ・スヒョン、1月の日差し』を書いた図書出版ホミバッのチャン・ヒョンジョン代表は「イ・スヒョンさんの人生は『人間に対する信頼』に集約される。彼を記憶し、追悼する韓国と日本も、人間に対する信頼をもとに互いに頼り合うことができるだろう」と述べた。
イ・スヒョンさんは2001年1月26日、東京の新大久保駅で線路に落ちた客を助けて亡くなった。釜山市教育庁は同年、釜山子ども大公園の学生教育文化会館広場にイ・スヒョン追悼碑を建てた。2005年、韓国を訪問した麻生太郎外相が同追悼碑に参拝し、献花した。
チャン代表は「イ・スヒョンさんが在学した赤門会日本語学校には彼を追悼する銅板と公園が作られた。新大久保駅の入り口にも、彼を追悼する銅板が設置された。毎年1月26日には、日本市民が追悼式を行っている。彼の犠牲精神が韓国と日本の両国に依然として感動を与えている」と述べた。さらに「韓日関係は厳しいが、イ・スヒョンさんが残した『人間に対する信頼』は両国のあちこちに様々な形で残っている。これをもとに両国が持続可能で肯定的な未来を共に描くことができる可能性を模索していくことを願っている」と述べた。
司会を務めたキム・テマン国立海洋博物館長は「今回の討論会は、韓日関係を正常化する過程を釜山から先に始めようという趣旨で開催された。釜山市が韓日関係の正常化の基礎を築ける役割を研究し、考えるきっかけになればと思う」と述べた。