ハン・ドクス大統領権限代行首相の無責任な大統領選挙への「様子見」が長期化している。大統領選に出馬する公職者の辞任期限(5月4日)が2週間後に迫っているにもかかわらず、出馬するかどうかについては明らかにしていない。20日に公開された英日刊紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューでも、大統領選出馬について「まだ決めていない」と述べた。いったい何を狙ってこのように時間稼ぎをしているのか。
国民の大多数が、大統領選挙をてんびんにかけるのをやめ、過渡期の国政管理に専念することをハン代行に望んでいる。17日に発表された全国指標調査(NBS)では、「ハン代行の大統領選出馬は望ましくない」とする回答(66%)が「望ましい」(24%)の3倍近かった。与党「国民の力」でも、親尹錫悦(ユン・ソクヨル)系の一部を除けば、「ハン代行はこれ以上、国政の空白と混乱に対する懸念をふくらませてはならない」という声が強い。権限代行の責務を果たすために不出馬を宣言することが、それほど難しいのか。
ハン代行の様子見が続いていることで、莫大な国益のかかる対米関税交渉を見守る国民たちの心配と不安もさらに高まっている。出馬の大義名分づくりを焦るハン代行が、公職者の辞任期限前に目に見える成果を上げようとして、早まった交渉に臨むこともありうるからだ。実際にハン代行はフィナンシャル・タイムズのインタビューで、米国の液化天然ガス(LNG)と旅客機の購入、海軍造船分野での協力の強化、米国の求める非関税障壁について議論するなどの意向を明らかにしている。今週の「2プラス2高官級交渉」を前に、韓国の「カード」を一つ残らずばらしてしまったわけだ。
さらに当惑するのは、このインタビューで安保議題である「在韓米軍防衛費についての再交渉」の可能性にまで言及していることだ。ハン代行は「貿易交渉で防衛費分担金問題も議論されうるのか」と問われ、「事案の性格に従って」防衛費協定を改めて議論する意思があると語った。韓米はすでに昨年末に、2030年まで適用される防衛費協定に合意している。しかしトランプ大統領は今月9日のハン代行との電話会談後、関税と合わせて防衛費分担金まで議論する「ワンストップ・ショッピング」に言及しつつ、再交渉を迫ってきた。ハン代行は、国益を最優先とするなら、自身の「臨時管理者」としての立場を前面に掲げてでも、安保議題である防衛費の再交渉は分けて対応し、最大限時間を稼ぐ必要がある。だがハン代行は「権限代行と選出職大統領で、できることに違いはない」として、自身の越権を正当化してすらいる。
ハン代行の無責任な行いで、大統領選挙の管理と通商交渉にはいずれも暗雲が垂れ込めている。ハン代行は、国民の忍耐が限界に達していることを直視しなければならない。