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「K防疫」の主役、医療従事者「栄光はなく、傷と孤独だけが残った」

登録:2021-07-16 03:25 修正:2021-07-16 11:13
手記集『コロナと戦った1年、私たちの汗と涙』を見ると 
ストレスや重圧に苦しみ、「私は感情のゴミ箱なのか」自嘲も 
周囲から「感染源」の烙印も
12日午後、ソウル陽川区のパリ公園に設置されたコロナ移動選別診療所で。ある医療スタッフの顔に汗が流れている/聯合ニュース

 「私たちは人手、装備、物品などの基本的な支援を受けられないままコロナ時代を迎え、使命感ひとつで2年近く防護服を着て、隔離区域で8時間もトイレにも行けず重症患者たちと死闘を繰り広げる。しかし、先制隔離室に勤務する私たちに栄誉と栄光はなく、傷と孤独だけが残っている」(全国保健医療労組組合員、看護師のAさん)

 この1年間、コロナ禍の最前線で戦ってきた全国保健医療労組所属の医療従事者の記録だ。同労組は13日、『コロナと戦った1年、私たちの汗と涙』と題する手記集を出版し、看護師や医療技師、准看護師などの苦労と哀歓を25の文章で綴った。

 15日に目を通した同手記集には、膨大な業務量と精神的ストレスに苦しむ医療従事者の奮闘がありのままに描き出されている。檀国大学医療院の集中治療室で22年間勤務してきた看護師のキム・ヒョンジョンさんは「4種の保護具(ガウン、マスク、ゴーグル、手袋)を着用し、ドアを閉め切った空間で数え切れないほど多くの器具を扱い、患者を看護していると、ゴーグルの中に湿気がこもって汗が流れ、非常につらい。マスクによる息切れ、食事の時間になっても食事に行けない患者の救急状況など、コロナ患者を看護する現場の状況は、目に見えるよりずっと大変だ」と語る。釜山大学病院の消毒看護師シム・ボファさんは「手術を行っている患者が新型コロナウイルス感染が疑われるという電話連絡を受け、手術中だった部屋にいた医療スタッフが全員隔離されるという事件もあったし、医療機器メーカーの納品を受けるために5分ほど対面した業者の職員が感染者だったという連絡を受け、手術室の看護師が隔離されるということもあった」とし「私たちは初めて経験する予測不能の環境にさらされ、あまりにも大きな身体的・精神的ストレスと重圧に苦しんだ」と吐露した。

猛暑特報が出された14日、ソウル広場の臨時選別検査所で医療スタッフが体を冷ましている/聯合ニュース

 コロナ検査を受けに、あるいは陽性判定を受けて病院を訪れた患者たちの暴言にも、医療従事者は無防備にさらされざるを得なかった。ある地方医療院の看護師Bさんは、「コロナ検査の実施後に陰性が出ないとかんしゃくを起こしたり、陰圧隔離病棟から看護師を押しのけて出て来て、看護師室を指差して暴言を吐いたりする患者もいた。血液透析が必要な自己隔離患者が『監視カメラで私を監視するのか、家に帰る』と言って毎回看護師に暴言を吐くケースもあった」「勤務中にいきなり暴言を浴びると『この人たちの感情のゴミ箱になるために私はここにいるのか』という気がして、宿舎に帰って一人で涙を流して眠ることもあった」と語る。

 危険な「感染源」だとの烙印を周囲の人々から押される現実に対する寂しさと無念さも吐露されている。看護師のAさんは「アパートでエレベーターに乗るのだが、医療院に勤めているという理由で階段を使うよう言われたという同僚看護師、医療院に勤めているという理由で担任の先生から子どもを学校に通わせないでほしいと言われたという同僚看護師の話を聞いた時、胸が痛んだ」と語る。

 感染症専門病院に指定された公共病院や圏域応急医療センターの持続可能性に対する懸念も示されている。公共病院に所属するある医療労働者は、「感染症専門病院となったことで辞めていった専門医は無視できない割合を占めており、現在は空席となっている診療科目もある。貧弱な現在の賃金水準とコロナ患者のみを看る状況の長期化が、病院を去る医師の増加を招いている」と指摘し、「専門病院の最初の1年は、一般患者を1人も受け入れることができなかったため、病院の絶対的収益が減少した一方で、既存の人件費はそのまま支出することになり、はるかにひどい赤字となった」と懸念を示す。

 ある大学病院の救急室の看護師Cさんは、「コロナ感染が疑われる患者が救急室の隔離区域に入室できなければ、病院の建物の外で待機しなければならないが、(こうした状況で)患者を待機させたら、自分のせいで悪化するのではないか、救急室に入室させたら、コロナ陽性が出たらどうしよう、というジレンマに陥ることもある」と語る。

 彼らの切実さは一つの願いへと収れんされる。「せめてこれからは、体系的な公共医療システムの拡充と十分な医療人材の拡充によって、崩壊しかねない医療システムを立て直してほしい」(救急室の看護師Cさん)

チャン・イェジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1003704.html韓国語原文入力:2021-07-15 17:06
訳D.K

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