北朝鮮は、15日に発射した弾道ミサイル2発が「鉄道機動ミサイル連隊の検閲射撃訓練」だったと明らかにした。これまで北朝鮮は、移動式の発射車両からミサイルを射ったことはあったが、鉄道に載せて発射する「鉄道機動ミサイル連隊」の訓練の公開は初めてだ。16日付の労働新聞によると、北朝鮮のパク・ジョンチョン労働党秘書は「鉄道機動ミサイル体系は、全国各地での分散的な火力任務遂行により、同時多発的に脅威勢力に深刻な打撃を与えられる効果的な対応打撃手段」と述べた。
15日には韓国が独自開発した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射試験に成功した。SLBMは隠密性と生存性が高い兵器だ。海中を航行する潜水艦は見つけ出すことが難しい。SLBMの攻撃を受けた側は、いつどこからミサイルが飛んできたのか分からないままやられてしまう。そのため、SLBMは戦場の勢力図を変える「ゲームチェンジャー」と呼ばれる。
ところで、南北はなぜ、鉄道や潜水艦にミサイルを載せて射つのだろうか。陸上のミサイル基地は、安定的かつ体系的なミサイル配備と運用が可能だという長所があるにも関わらずだ。米国とソ連が核兵器で正面対決した冷戦時代に始まった軍事戦略だ。街中での争いでは先にパンチを食らわせる方が効果的だが、核戦争では2回目の報復核攻撃(second strike)能力の確保が重要だった。相手の1回目の核攻撃(first strike)を受けても生き延びる核兵器で敵に深刻な打撃を与えることができてこそ、核戦争を防ぐことが可能だと考えた。相手が2回目の核攻撃能力を確保したことが確かであれば、自分が先に1回目の核攻撃をしたとしても、相手の2回目の攻撃を受けて自分も一緒に破滅するため、先に攻撃することはできないということだ。米国とソ連は、「相互確証破壊」戦略を基に、どちらも先制攻撃ができなくなる「核抑止」戦略を展開した。
冷戦時代の米国とソ連は、「2回目の攻撃」能力の確保に必死になった。SLBMは代表的な2回目の攻撃戦力だ。先制核攻撃を受けても、海中の潜水艦は生き延びてSLBMを発射し、相手を灰にすることが可能だからだ。陸上基地にある核ミサイル格納庫(サイロ)を地下深くに配備し、サイロの壁を厚い鉄とコンクリートで作った。しかし、核ミサイルの正確さと破壊力がはるかに強くなり、このような対策では限界があった。米国とソ連は核ミサイルを陸上基地に固定配備せず、移動式でも様々な手法で運用した。相手の攻撃に対抗し生存性を高めるために、ミサイルを移動式の車両や列車に分散して配備した。
RT-23はソ連が開発した列車移動式核ミサイルだ。1980年代から1991年にソ連が崩壊する前まで、ウクライナで設計され実戦配備されたこのミサイルは、地下サイロ型や列車移動式で運用された。ソ連は列車10台ほどを運用したことが知られている。鉄道に載せられたミサイルは、鉄道網に沿って全国を回ることができ、相手の攻撃に対する生存性に優れている。民間の列車との区別が難しく、相手が攻撃することも難しい。しかし、相手の攻撃により鉄道網が破壊されれば、足止めを食うという短所もある。ウクライナ情報当局は2011年に北朝鮮工作員を検挙したが、彼らが奪おうとしていた情報のなかには、RT-23ミサイル関連の情報も含まれていたという外信報道もあった。
米国も「ピースキーパー」という核ミサイルを開発し、地下サイロ方式と鉄道配備を並行しようとした。当初のピースキーパーは移動可能で設計され、米国は1980年代にピースキーパーを鉄道に配備する予定だと発表した。通常は米空軍施設に列車を配備し、それぞれ2発のピースキーパーを搭載した列車が、ソ連との軍事緊張が高まれば基地を出発し、米国全域の鉄道網を走ることになる。1990年に試作の鉄道車両が走行試験まで終えたが、1991年にソ連が崩壊し、計画は取り消された。当初は列車に載せられ米国全域を回ることになっていたピースキーパーは、サイロに入った。