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強制動員被害者、戦犯企業を相手取った訴訟でまたも敗訴

登録:2021-09-09 04:14 修正:2021-09-09 08:24
裁判所「2012年基準とすると消滅時効が経過」 
2018年の最高裁判例は適用せず 
「最近の判決主旨を前向きに検討すべき」
8日午前にソウル中央地裁で行われた日本製鉄を被告とする損害賠償請求訴訟の終了後、民族問題研究所のキム・ヨンファン対外協力室長(左から2番目)とチョン・ボムジン弁護士(中央)が取材陣の質問に答えている=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 強制動員被害者の遺族が、日本の戦犯企業に対して起こした損害賠償請求訴訟でまたも敗訴した。同事件の請求権消滅時効の判断は、下級審が2012年の最高裁の判例を基準にするケースと2018年の最高裁全員合議体の判例を基準にするケースがあり、食い違いがあらわになっている。最高裁で改めて整理する必要がある。

 ソウル中央地裁民事25単独のパク・ソンイン部長判事は8日、強制動員被害者のJさん(死去)の遺族が日本製鉄(旧新日鉄住金)を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、日本製鉄側に勝訴の判決を下した。

 被害者の遺族は、父親のJさんが1938年に日帝の国家総動員法にもとづき強制動員され、1940~42年に日本製鉄釜石製鉄所で働かされたと主張し、2019年4月に損害賠償請求訴訟を起こした。

 パク部長判事は、強制動員被害者の慰謝料請求権は韓日請求権協定の適用対象に含まれないとする趣旨の最高裁の判断がすでに2012年に出ているが、2019年になって訴訟を起こしているため、民法に定められた消滅時効(3年)が過ぎている、と敗訴の理由を明らかにした。パク部長判事は「遺族の客観的な権利行使障害の理由は、2018年10月の最高裁判決ではなく、2012年5月の最高裁判決ですでに解消されていた」と説明した。

 すでにパク部長判事は先月、5人の強制動員被害者が三菱マテリアル(旧三菱鉱業)を相手取って起こした損害賠償請求訴訟でも同じ理由で原告敗訴の判決を下している。これは、2018年10月に下された最高裁全員合議体の判決で強制動員被害者の損害賠償請求権が最終的に確定したという2018年12月の光州高裁民事2部(チェ・インギュ裁判長)による判断とも食い違う。光州高裁の判断は「2012年の最高裁破棄差し戻し判決は(再度の判断を命ずる)差し戻し判決であるため、強制動員被害者の損害賠償請求権が直ちに確定したものではない」というもの。

 ただしパク部長判事は、2018年の最高裁全員合議体の判決にもとづいて被害者の個人請求権を認めるとともに、韓国の裁判所に裁判管轄権があると判断した。一方、ソウル中央地裁民事34部(キム・ヤンホ裁判長)は、85人の強制動員被害者が日本製鉄などの戦犯企業16社を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、裁判管轄権を認めた最高裁全員合議体の判決を真っ向から覆し、却下判決を下している。同法廷は、日本との関係、韓米同盟、日本の外貨を通じた「漢江(ハンガン)の奇跡」などまで判決理由として持ち出し、物議を醸した。

 被害者の遺族の代理人を務めるチョン・ボムジン弁護士は、一審判決後、記者団に対し、「光州高裁の判例では、2018年の最高裁全員合議体の判決が出た時点を消滅時効の起算点と判断している。2012年の最高裁破棄差し戻し判決は暫定的な判決であるため、控訴審で十分に争うに値すると考える」とし、控訴する意向を示した。

 民族問題研究所のキム・ヨンファン対外協力室長は「最高裁の確定判決後も日本の戦犯企業は対話に応じていないため、被害者は苦しみ続けている。裁判所は被害者の損害賠償請求権を認めた2018年の最高裁確定判決の趣旨を前向きに検討すべきだ」と指摘した。

チョ・ユニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1010903.html韓国語原文入力:2021-09-08 11:19
訳D.K

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