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強制徴用、賠償の可能性高まるも…実際の賠償には壁

登録:2021-08-23 02:19 修正:2021-08-23 06:40
「勤労挺身隊ハルモニと共にする市民の会」の会員が日本政府、三菱重工業に謝罪と賠償を求めるスローガンを叫んでいる/聯合ニュース

 裁判所が先日、戦犯企業である三菱重工業の韓国国内の取引代金の差し押さえ・取り立てを命じたことを受け、日帝強占期(日本の植民地時代)の強制動員の被害者が実質的な賠償を受けられるかどうかに関心が集まっている。これに先立って現金化が難しい特許権や商標権などを差し押さえた時とは異なり、今回の取り立て命令は戦犯企業の取引代金に対するものであることから、すぐに現金化が可能だという評価が出ているが、一方で壁は高く、実際の賠償までには時間がかかるだろうとの見方も出ている。

 水原(スウォン)地裁安養(アニャン)支部は12日、三菱重工が国内企業LSグループの系列会社LSエムトロンから受け取ることになっている約8億5000万ウォン(約8050万円)相当の物品代金に対する債権の差し押さえおよび取り立てを命じた。差し押さえられた金額は、最高裁判決で確定した4人の強制動員被害者に支給されるべき損害賠償金と遅延損害金などを合わせたものだ。最高裁は2018年、強制動員の被害者が三菱重工を相手取って起こしていた損害賠償請求訴訟で、三菱重工に対し、被害者にそれぞれ8000万ウォン(約742万円)から1億5000万ウォン(約1390万円)を支払うことを命じる判決を下し、確定している。しかし三菱重工はこれまでこれを履行せずにいる。被害者とその家族は、三菱重工業がLSエムトロンと取引してきた事実を確認し、物品代金の債権の差し押さえを裁判所に求め、これが受け入れられたのだ。

 裁判所が三菱重工の国内現金資産である物品代金に対する債権差し押さえ・取り立てを命じたのは今回が初めて。大邱(テグ)地裁浦項(ポハン)支部は2019年1月に日本製鉄(旧新日鉄住金)とポスコの合弁会社PNRの株を、大田(テジョン)地裁は同年3月に三菱重工が韓国に登録した特許・商標権をそれぞれ差し押さえている。しかし、株と特許・商標権は直ちに現金化することが難しいうえ、裁判所の差し押さえ命令を不服とした三菱重工が控訴・上告して時間稼ぎしているため、実際の賠償までには至っていない。

 裁判所による初の現金資産差し押さえ命令によって、被害者が実質的に賠償を受ける道が開かれたわけだが、障害も少なくない。まず外交的状況だ。加藤勝信官房長官は19日の定例会見で、今回の裁判所の決定について、「明確な国際法違反だ」として直ちに反発した。LSエムトロンの取引対象も問題となっている。同社は「三菱重工ではなく、その子会社の三菱重工エンジンシステムと取引した」と主張している。差し押さえ・取り立て命令が下された金は、三菱重工業ではなく、別法人の三菱重工エンジンシステムに行くべきものだとの主張だ。トラクターのエンジンなどを生産・販売する三菱重工エンジンシステムは、三菱重工業が100%の株式を保有する。両社を事実上一つの会社と見なすこともできるとの見解もあるが、一方では差し押さえ・取り立て執行取り消し紛争などへとつながりうるとの観測も出ている。

 強制動員被害者の代理人を務めたイム・ジェソン弁護士は「LSエムトロンは、差し押さえ決定文送達以前までは三菱重工との取引関係を様々な方式で認めていたが、差し押さえ決定文送達後は、取引対象企業が異なると主張している」とし「LSエムトロンの債権者が三菱重工業なのか、エンジンシステムなのか確認され次第、後続手続きを取る予定だ」と述べた。

チョ・ユニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1008652.html韓国語原文入力:2021-08-22 18:44
訳D.K

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