裁判所が、強制動員被害者が起こした損害賠償訴訟で最終敗訴した三菱重工業に、韓国企業が支払わなければならない物品代金債権を差し押え、日本企業の資産の「現金化」をめぐる韓国と日本の対立が新たな局面を迎えることになった。原告弁護団は、歴史的事実を認めて謝罪することを前提に円満な結論を引き出すための「協議」に出られると主張し、三菱側を圧迫した。
原告弁護団のイム・ジェソン弁護士は19日、 本紙との電話インタービューで「今回の裁判所の決定の特徴は、被告企業である三菱重工の現金性資産を差し押えたことだ。この決定の効力が確定すれば、取り立て命令により、ただちに日本企業の資産を現金化できる」と説明した。これに先立って行われた特許権と商標権の差し押えのときとは異なり、別途の資産評価などの手続きなしに、速やかに現金化の手続きを済ませられることになったという意味だ。
日本による植民地時代に勤労挺身隊に動員され大きな被害を受けたヤン・クムドクさん(90)ら原告4人は今月初め、トラクターなどを生産するLGグループ系列会社のLSエムトロンが三菱重工に支払う物品代金8億5000万ウォン(約8050万円)に対する債権を差し押さえるよう求め、差し押えおよび取り立て命令の申立てを裁判所に提出した。水原(スウォン)地裁安養(アニャン)支部は12日にこれを受け入れ、その決定文が18日にLSエムトロンに到達し、差し押えの効力が発生した。この決定により、LSエムトロンは当面の間、代金を三菱重工に支払えなくなった。
韓国人強制動員被害者らが、日本製鉄、三菱重工、不二越などの日本企業を相手取った損害賠償訴訟で2018年末に最終勝訴してから3年がたったが、このような複雑な手続きを踏んでいるのは、日本政府と企業が判決の履行をかたくなに拒否しているからだ。これに対し原告は、2019年初めから韓国内にある日本企業の資産を探し出し、差し押えを申し立てた後、強制的に現金化する手続きを進めてきた。
三菱重工の場合、原告は2019年3月に大田(テジョン)地裁に同社が韓国内に保有している資産である商標権2件と特許権6件について差し押え申立てをして勝訴した。しかし、日本外務省が差し押え決定文の送達を拒否し、1年以上の時間が浪費された末、ようやく昨年12月に「公示送達」の効力が発生した。すると三菱重工は1月初め、この決定に不服であると即時抗告を申し立てた。裁判所はこの申立てを棄却したが、企業側から6月9日に最高裁に再抗告した状況だ。このように差し押え命令の効力が確定されるとしても、売却手続きを進める過程でもう一度「債務者の意見陳述」と「資産に対する鑑定」など複雑な手続きを経なければならない。しかし、今回は現金資産を差し押えることになり、資産鑑定の手続きは避けられることになった。
しかし、現金化までは相変わらず道のりは遠い。この前の特許権と商標権の差し押さえの際と同様に、日本外務省の送達拒否→韓国裁判所の公示送達決定→日本企業の即時抗告→再抗告などの長い過程が予想されるからだ。イム弁護士は「日本企業は、すでに高齢に達したヤン・クムドクさんなどの事情を考慮し、原告との協議に誠実に臨んでほしい」と述べた。日本政府は予想どおり冷淡な反応を示した。加藤勝信官房長官は19日午前の定例会見で「旧朝鮮半島出身労働者問題に関わる韓国大法院(最高裁)判決および関連する司法手続きは、明確な国際法違反だ。仮に現金化に至ることになれば、これは日韓関係にとって大変深刻な状況になる。これは避けなければならない。これは韓国側に対して日本側から繰り返し申し上げ指摘している」と述べた。