韓国政府が秋夕(チュソク、陰暦8月15日の名節、新暦では今年9月21日)直後から本格的な防疫緩和の議論を始める見通しである中、防疫当局者は英国式の「ウィズコロナ」ではないと一線を画しつつ、「段階的な日常回復」の方策を推進すると明らかにした。
中央事故収拾本部(中収本)のソン・ヨンレ社会戦略班長は6日のブリーフィングで「『ウィズコロナ(With Covid-19)』という用語は様々な意味で使われており、感染者の発生そのものは重要でないかのように考え、社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)をなくすという意味でも時々表現されている」とし「そのような議論は防疫の緊張感を低下させるという問題があると判断し、政府内部ではこの用語は使わず『段階的な日常回復策』という用語で議論していいる」と述べた。
政府は、ソーシャル・ディスタンシングの現行レベルを4週間延長したものの、6日から私的な会合の人数を拡大するなど防疫措置の一部緩和を行っている。「ウィズコロナ」への過渡期段階との期待が広がったため、政府は防疫の緊張感が緩むことを懸念して遮断に乗り出したわけだ。
ソン班長は「こうした方策を検討するためには、現在の流行規模が安定することが前提条件」だとし「現在、入院病床と集中治療室の稼働率は60~70%を示しているが、防疫緩和の流れが作られれば流行規模がすぐに拡大し、病室不足などの問題へと直結する危険性がある」と述べた。続いて「日常回復は、予防接種を拡大し、重症化率と死亡率が下がる過程で長期にわたって漸進的に進められるべきだ」とし「一気にソーシャル・ディスタンシングを大幅に緩和したり、なくしたりすることはない」と述べた。
ソン班長は、ウィズコロナの代表例である英国のように実施することはできないと念を押した。英国は3月から4段階にわたる防疫緩和を実施しており、7月からはすべての会合の制限とナイトクラブを含む施設の営業制限を解除した。マスク着用も個人の選択に任せた。3日現在、英国の人口に占める接種完了者の割合は63.41%だが、解除後は1日に3~4万人の感染者と100人前後の死者が出ている。ソン班長は「こうした方向性がウィズコロナという変化なら、我々としては受け入れ難く、望ましいとは思わない」と述べた。
しかし、ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は、「ウィズコロナへと向かうということは持続可能な防疫に切り替えるということであって、防疫を放棄しようというものではない」と述べた。「今すぐ英国のようにしようという人もいないが、英国やシンガポールは感染者ではなく重症患者中心の管理体系へと転換するという方向性を持っている」ということだ。
キム教授は、いきなりソーシャル・ディスタンシングを緩和すれば、準備ができていない状態で流行が再び拡散する可能性があるため、重症患者の発生状況と「3T(検査、疫学調査、隔離)力量の強化」と「病床および医療人材の拡充」を連動させ、ソーシャル・ディスタンシングを段階的に緩和することを提案した。致命率を0.1%程度に保てば、1日平均3000人の感染者が出て年間100万人に達しても、死者は1000人前後と推定される。
キム教授は、致命率管理のために保健所の防疫人員を約2000人増員し、検査と接触者の隔離を強化するとともに、1500床の重症患者の治療病床と約90の病院で1~3病棟ずつの中等症患者用病床を確保すべきと提案した。地域ごとに約50カ所の感染症センターを指定し、人材と施設、装備をそこに集中支援するほか、国立中央医療院の中央感染病院を中心とした感染症コントロールタワーを強化するという方策も提示した。
そして「ウィズコロナ委員会」を立ち上げ、医療専門家だけでなく自営業者や教育学者、経済学者など、多くの分野の専門家を含め国民参加度を高めることによって、防疫の責任を国民に転嫁し社会的弱者に被害が集中していた不公正なこれまでの防疫政策から脱却すべきだと主張した。感染者数の集計も毎日の発表をやめ、毎週1回の発表に切り替えようと提案した。
キム教授は、政府が秋夕前後に転換に向けた「ロードマップ(履行計画)」を提示し、それから準備を始めても、11月に開始するのにも時間が足りないと指摘した。各段階に少なくとも4週間かけて3~4段階を踏むこと、そして今冬に予想される第5波を考慮すれば、履行が完了するのは早くても来年4月になるとの見通しだ。
高麗大学安山(アンサン)病院のチェ・ウォンソク教授(感染内科)は「危険度が低く、社会的・経済的負担が大きい措置を段階的に緩和することが必要だ」とし「私的な会合の人数や場所を増やす措置が取られるだろうが、マスク着用義務を解除するのはその中でも最後にすべき」と述べた。