下半期の朝鮮半島情勢の分水嶺として浮上した8月の韓米合同軍事演習をめぐり、「中止」を要求する北朝鮮・中国と、明確な立場表明を避ける韓国・米国の間で静かな対立が続いている。今回の合同軍事演習は、新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に大幅に縮小した形で行われる可能性が高いにもかかわらず、このように朝中の要求が露わになるほど、韓国が「政治的決断」を下す余地が少なくなり、不要な対立が深刻化する可能性があるという懸念が高まっている。
中国の王毅国務委員兼外交部長は6日、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議で、「韓米合同軍事演習は現在の情勢の下で建設的ではなく、米国が本当に北朝鮮との対話を回復しようとするなら、情勢を緊張させるいかなる行動も取ってはならない」と警告した。今月1日、「我が政府と軍隊は、南朝鮮側が8月に再び敵対的な戦争練習をするのか、それとも大きな勇断を下すのか、注視する」というキム・ヨジョン朝鮮労働党副部長の圧力を後押しする内容だ。外交部は王毅部長の発言について、「政府の立場を準備していない」と述べるなど、波紋を広げないよう務めている。朝中のこのような露骨な要求は、朝鮮半島情勢を安定的に管理するうえで、全くプラスにならないという認識を示したわけだ。
国防部は8日にも韓米合同軍事演習の実施についての発言を控えたが、韓国軍と海外米軍の増援軍、在韓米軍の規模を今年3月上半期の演習の時より縮小し、16日から「後半期の合同指揮所演習」を行う方向で準備しているという。ほかの韓国政府高官も「今回の演習は規模を最小化して実施すると聞いている」と述べた。
当初から今回の演習は実際の兵力を動かさず、コンピューター・シミュレーションだけの指揮所演習として予定されており、韓米両国は10~13日には事前演習に当たる「危機管理参謀訓練」、16~26日には本演習を行う計画だ。注目を集めた戦時作戦権移管のための未来連合司令部の完全運用能力(FOC)の検証は今回も行われない。国防部当局者は「正確な内容は軍事機密なので公開できないが、今回の演習では通常の戦時転換作戦を練習することになるだろう」と述べた。韓米両国の軍当局が普段から行ってきた「防御」から「反撃」へとつながる通常のシナリオに基づいて演習が行われるという説明だ。
米国も演習の実施有無に対する明確な言及を避け、「韓国と緊密に協議している」という立場だけを明らかにしている。ただし、米国防総省のジョン・カービー報道官は3日の記者会見で「演習の中止に関する韓国の要請はなかった」と述べ、演習が実施されることを強く暗示した。
8月の訓練をめぐる韓米と朝中の対立が激化すれば、ハノイでの朝米首脳会談が物別れに終わってから、朝鮮半島情勢が急激に悪化した2019年8月以降のような「最悪の状況」が再燃する可能性もある。韓国政府は2年前、北朝鮮の強い反対を押し切って8月5日から韓米合同演習を実施したのに続き、14日には大規模な戦力強化計画を盛り込んだ「国防中期計画」(2020~2024)を発表した。それを受け、北朝鮮は韓国に向かって「ゆでた牛の頭も仰天大笑するような出来事」だという感情的な論評を発表し、南北関係を破綻直前まで追い込んだ。
しかし今は、コロナ禍と経済制裁の長期化によって北朝鮮の経済事情が大きく悪化しただけでなく、すでに北朝鮮が南北通信線の復元で関係改善に乗り出した状況であるため、当時のような極端な対立に突き進まない可能性もある。