マラソンや400メートルの男女リレーなどの一部の種目だけが残っている2020年東京五輪陸上は、男女ハードル400メートルで世界新記録が相次いで誕生するなど、人間の挑戦の新たなフィールドを切り開いた。ジャマイカ出身で短距離のエレーン・トンプソンヘラ選手(29)は、女子陸上100メートルと200メートルで連続して金メダルを取る「ダブルダブル」に成功し、短距離の歴史を新たに刻んだ。100メートルでは10秒61、200メートルでは21秒53で決勝戦を通過した。さらに100メートルの記録は、1988年ソウル五輪で米国のグリフィス=ジョイナー選手が出した10秒62記録を0.01秒縮めたもので、33年ぶりの新たな五輪新記録となった。
陸上女子400メートルハードル決勝では、4日のシドニー・マクラフリン選手(22・米国)が51秒46で世界新記録を打ちたて、最初にゴールを通過した。51秒58で2位となった2016リオ五輪金メダリストのダリラ・ムハンマド選手(31・米国)の記録も世界新記録だった。前日の男子ハードル400メートルでも同様の光景がみられた。カールステン・ワーホルム選手(25・ノルウェー)とライ・ベンジャミン選手(25・米国)が、それぞれ45秒94と46秒17となり、これまでの世界新記録の46秒70を破り金・銀メダルを得た。
男子100メートルでは、事実上無名に近かったマルチェル・ヤコブス選手(27・イタリア)が9秒80で金メダルを取った。ただし、“人間弾丸”のウサイン・ボルト選手(35・ジャマイカ)の引退後、新たな皇帝の登場を待ちこがれた期待には及ばなかった。2017年に引退したボルト選手は、9秒58の世界新記録(2009年)をはじめ、9秒63(2012年ロンドン)五輪新記録も持っている。韓国はウ・サンヒョク選手(25)が男子走り高跳び決勝で2.35メートルを超え4位を記録し、メダルへの挑戦には失敗したが、1997年のイ・ジンテク選手が出した2.34メートルを越える新たな韓国新記録を出した。
陸上短距離の種目で各種の記録が出され、トラックへの関心を引いた。特に女子100メートル決勝では、8人の走者のうち6人が11秒未満で走った。女子400メートルハードル金メダリストのマクローリン選手は、ニューヨーク・タイムズとのインタビューで「トラックが弾みを再生して返してくれる」と語った。トラックはイタリアのトラック専門企業であるモンド社が製作した。モンド社は1976年モントリオール五輪を皮切りに東京五輪まで供給している。
女子5000メートルで金メダルを取ったシファン・ハッサン選手(28・オランダ)は、1500メートルと1万メートルの決勝にも出て、誰も成し遂げられなかった挑戦を続けている。彼女は2日の1500メートル予選で他の選手と衝突し倒れたのに再び走りだして1位で通過する快挙を見せた。さらに、同じ日の午後の5000メートル決勝では、14分36秒79でゴールを1位で通過した。2日後の4日には1500メートル準決勝に出場し1位を記録し、“鋼の体力”を誇った。7日に行われる1万メートルでも金メダルを取れば、驚異的な記録が誕生することになる。
7日と8日に行われるマラソンでも、新たな歴史が刻まれることを期待する。男子マラソンのエリウド・キプチョゲ選手(37・ケニア)が優勝する場合、五輪史上3人目となる2連覇を達成することになる。