韓国政府は今月21日(現地時間)、米ワシントンで開かれる韓米首脳会談の主要議題として、両首脳が「南北関係の独自性」を確認する方案について米国と協議していることが分かった。ジョー・バイデン政権はまだ積極的な反応を示していないという。
本紙が18日、複数の政府・与党関係者を取材した内容を総合すると、政府は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のバイデン大統領の初の対面首脳会談で、南北関係を修復できる機会が生じた場合、朝米交渉の進展にかかわらず、独自に南北関係の改善を推進できるよう、米国側の“了解”を求めている。国連と米国の対北朝鮮制裁の枠を壊さず、南北が独自に協力できる領域について、米国側の“支持”をあらかじめ確認しようということだ。しかし、米国側は積極的な反応を示していないという。
そもそも政府はバイデン政権の北朝鮮政策見直し期間に、「朝鮮半島の完全な非核化」を目標に6・12朝米シンガポール共同声明に基づいた外交的かつ段階的アプローチが必要であり、南北関係の独自性に対する戦略的考慮が必要だという韓国政府の立場を米国側に伝えてきたという。
米国の北朝鮮政策が実用的アプローチなどで韓国が望む方向とほぼ合致しているのが明らかになったことを受け、韓国政府は南北関係の独自の領域を確保することに外交力を傾ける方針だ。まだ多少消極的な米国側の最終方針は、韓米両首脳の単独会談で結論が出る可能性が高い。文大統領が歓迎の意を表した米国の北朝鮮政策の骨子は、「韓米両国間の十分な理解」が前提となっており、今回の会談では「外交力を注ぐ必要はない」というのが政府関係者の説明だ。
政府がバイデン政権との初の首脳会談でこのようなアプローチをとっている背景には、トランプ政権時代、韓米作業部会に代表される米国の制裁システムが、南北関係の改善において障害物となったという認識がある。2018年に3回の南北首脳会談を行ったにもかかわらず、南北関係が思うように改善せず、むしろ長期の膠着局面に陥ってしまったのは、米国の制裁網の過度な作用に起因するところが大きいという声が、政府内外からあがってきた。米国側は「事前協議が不十分だった」という理由で金剛山(クムガンサン)行事に同行した取材陣のノートパソコンの持ち込みを禁止したり、インフルエンザ治療薬「タミフル」を載せたトラックが制裁に抵触する恐れがあるとしてストップさせるなど、南北関係改善の重要な節目に“制裁”を口実に介入した。政府が制裁対象ではないと判断した南北鉄道連結事業の北朝鮮区間の共同点検も、在韓国連軍司令部から許可が下りず、数カ月の延期を余儀なくされた。当時、トランプ政権が南北関係の特殊性を考慮せず、「南北関係も朝米非核化交渉と歩調を合わせなければならない」という立場を貫いた結果というのが、大方の見解だ。朝米交渉に進展が見られなかったことで、トランプ政権は制裁対象でない人道協力まで事実上阻止する姿勢を見せた。文大統領がバイデン大統領との初の首脳会談で「南北関係の独自性」の問題を取り上げようとするのは、トランプ政権時代の二の舞を踏まないという政策の意志の表れといえる。
また、今回の韓米首脳会談で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を交渉の場に導くためのこれといった“贈り物”がない点も、政府がこのようなアプローチを取った背景とみられる。実際、「米国の新しい北朝鮮政策には北朝鮮が(対話に)応じるほどの具体的な誘引策がない」と分析する専門家も多い。また、文在寅政権が任期中に力を注いだ朝鮮半島平和プロセスの動力を、いかなる形であれ次期政権に受け継がせるためにも、南北関係に対する戦略的考慮が必須だという判断も働いたものと見られる。
ただし、韓米両国が今回の首脳会談で、南北の一定の独自協力に共感したとしても、新型コロナ防疫を理由にした北朝鮮の国境封鎖が続く限り、可視的な成果に向けた糸口を見いだすことは困難だ。政府消息筋は「総論的に米国と合意しておけば、ディテールは(条件が整い次第)北朝鮮と協議すればいい」と述べた。