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フィッシングメールが判らない?…韓国青少年のデジタルリテラシー、OECDで最下位

登録:2021-05-17 01:41 修正:2021-05-17 07:37
「PISA」報告書 
2018PISA、読解力では「5位」だが 
情報信頼性評価はOECDで最下位 
情報偏向判断教育も平均以下 
OECD、「21世紀には新たな読解力が必要」 
「情報信頼性判断が読解力の核」 
 
専門家「長文の読めない世代、コミュニケーションに懸念」 
「学校でのデジタルリテラシー教育の強化が必要」
//ハンギョレ新聞社

 韓国の青少年のデジタル情報読解力(デジタルリテラシー)が経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)で最下位圏にあることが明らかになった。学校でインターネット情報の偏向性の有無を判断する教育を受けた生徒の割合もOECDの平均に満たず、生徒に対するデジタルリテラシー教育の強化が必要であることが分かった。

 OECDが3日(現地時間)に発表した報告書「PISA 21世紀の読者たち:デジタル世界における読解力の開発」(写真)によると、韓国の満15歳の生徒(中学3年、高校1年)たちは、詐欺性の電子メール(フィッシングメール)を識別する能力の評価において、OECD諸国の中で最も低い水準を記録した。

 フィッシングメールかどうかを識別することを通して情報の信頼性を評価するテストでは、デンマーク、カナダ、日本、オランダ、英国の生徒が最も高い水準だった一方、韓国はメキシコ、ブラジル、コロンビア、ハンガリーなどとともに最下位集団に分類されている。

 また韓国の生徒たちは、与えられた文章において事実と意見を識別する能力でも最下位を記録した。OECD加盟国の平均識別率が47%であるのに対し、韓国の生徒は25.6%にとどまり、最下位だった。これと関連の深い「情報が主観的だったり偏向的だったりするかを識別する方法について教育を受けたか」を問う調査でも、韓国はポーランド、イタリア、ギリシャ、ブラジルなどとともに平均以下のグループに属し、学校でデジタルリテラシー教育がきちんと行われていないことが明らかとなった。この問いに「受けた」と答えた生徒のOECD平均は54%だったのに対し、韓国は半分以下(49%)で、平均より低かった。オーストラリア、カナダ、デンマーク、米国などの生徒は、7割以上が情報に偏りがあるかどうかを判断する教育を受けたと回答した。

 今回の報告書は、OECDが加盟国を中心として満15歳の生徒に対して3年ごとに実施しているPISAの2018年の結果の、デジタルリテラシーに関する内容を分析して作成されたもの。読解力評価に重点を置いて行われた2018年のPISAにおいて、韓国は読解力の領域の点数はOECD平均(487点)より高い514点で、上位圏(37カ国中5位)を記録しているが、今回の発表で韓国のデジタルリテラシーに関する教育は最下位圏であることがあらわとなった。韓国の生徒たちの読解力は2006年のPISAでは556点で、調査対象国でトップだったものの、その後の12年間で調査のたびに点数、順位ともに下がっている。

 情報の信頼性を識別する調査は、生徒に対し、有名モバイル通信社の名義を詐称したフィッシングメールを送り、「様式どおりに利用者情報を入力すればスマートフォンがもらえる」というリンクに対する反応を見るかたちで行われた。事実と意見を識別するテストは、例文を提示し5つの問いに答えさせるという国語試験の形態で行われた。そのうちの一つはジャレド・ダイアモンドの著書『文明崩壊』の内容と評価を扱った例文を提示したテストだ。問いは、「この本で作家は、多くの文明圏が自ら決定した選択と環境に及ぼした影響によって崩壊を迎えたと叙述した」という文章が事実の記述であるか意見であるかを答えさせる、といったもの。

 OECDは報告書で「インターネットのおかげで誰もがジャーナリストや発行人になれるが、情報の真偽は明確に区分しにくくなった」とし「21世紀の読解力は、知識を自ら構築して検証する能力」だと述べている。OECDは、情報が多くなればなるほど、読者は不明確さを検討し、観点を検証する方法が重要になると指摘している。

 2012年のPISAでは、15歳の生徒の平均オンライン利用時間は週に21時間(1日3時間)だったが、2018年の調査では週に35時間(1日5時間)となり、67%の増となった。OECDは、PISAはコロナ禍前に行われたが、コロナによって学校が閉鎖され家庭でオンライン教育が行われている中では、生徒たちの読解力がより重要になっていると強調する。コロナ危機は、不確実で曖昧な世の中を生きていくために、青少年の自主的で一歩先を行く読解能力の育成が急務であることを示したというのだ。

 韓国国内でもこのところ、読解力教育への関心が高まっている。映画評論家が『パラサイト』を紹介した短い文章の中で用いた「明徴」「直照」という単語に対する反応や、「3日(サフル)」が「4日(サイル)」と誤解されるケースなども話題となった。教育放送が今年3月に放送した6部作のドキュメンタリー『あなたの読解力』は、デジタル環境で深刻化した読解力低下の実態を集中的に扱っている。

 「あなたの読解力」を制作したプロデューサーのキム・ジウォンさんは「デジタル機器に慣れた青少年たちは長い文章を読むことを苦手としており、語彙力低下現象も全国的に広範に確認されている」とし「今の10代はメディアに慣れていないからではなく、出典が多様な文書を読んで検証する方法を知らないうえ、批判的な読み方をしたこともほとんどない」と述べた。特に「3日」「しあさって」のような語彙を知らない世代が成長すれば、世代間の意思疎通が難しくなるという問題が生じる恐れもあるというのがキムさんの考えだ。

 スマートフォンやSNSを通じてフェイクニュースや操作された偽情報の影響力が増大し、コロナに関する間違った情報が急速に広まっている中、利用者自らが情報の真偽を判別するデジタルリテラシーの必要性は高まっている。漢陽大学国語教育科のチョ・ビョンヨン教授は「韓国の生徒は、教科書と問題を解く訓練のおかげで情報の把握と理解は上手だが、実際の環境においてそれを活用する能力である、情報の信頼性と価値を判断する能力は低い」とし「PISAにおいて、デジタルリテラシー教育を受けた生徒は情報の信頼性を判断する能力が高いことが表れていることからも分かるように、学校でのデジタルリテラシー教育の強化が必要だ」と述べた。

ク・ボングォン|人間科デジタル研究所所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/future/995403.html韓国語原文入力:2021-05-16 17:37
訳D.K

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