結局「不動産選挙」だった。2016年の総選挙以降、4回の全国選挙で大勝を続けてきた共に民主党が4月7日の再・補欠選挙で惨敗を喫したのは、不動産政策に対する評価が決定的な理由となった。江南(カンナム)3区および麻龍城(マヨンソン。麻浦(マポ)、龍山(ヨンサン)、城東(ソンドン)の3区)などの住宅価格が急騰した地域では、保有税増税に怒った住宅所有層の野党支持が目立ち、相対的に不動産価格が上がっていない地域と住宅を所有していない賃借人層は、剥奪感から投票を放棄するか、国民の力支持に回ったとみられる。
集計の結果、8日に業務を開始したオ・セフン市長の江南区での得票率は73.54%で、ソウル市全体の得票率57.50%より16ポイント高かった。続いて高い順に瑞草区(71.02%)、松坡区(63.91%)、龍山区(63.44%)だった。地域ごとの得票率をもう少し詳しく見ると、オ市長は江南区の22の行政洞の中でも狎鴎亭洞(アプグジョンドン、88.30%)で最も圧倒的な支持を受け、大峙1洞(テチイルトン、85.11%)、道谷2洞(トゴクイドン、84.76%)、大峙2洞(81.29%)、清潭洞(チョンダムドン、80.27%)で80%を超える票を得た。いずれも高価格のマンション団地が密集していたり、団地の建て替えが予定されているところだ。ソウル市の425の行政洞(日本の町にあたる行政区画)ごとに見ても、江南3区の支持は圧倒的だ。得票率上位30の行政洞のうち27が江南3区の洞で、11位に龍山区二村1洞(イチョンイルトン、78.82%)、20位に同区西氷庫洞(ソビンゴドン、75.28%)、22位に永登浦区汝矣島洞(ヨンドゥンポグ・ヨイドドン、74.71%)が名を連ねている。30位圏外になると、ようやく龍山区漢江路洞(ハンガンノドン)と漢南洞(ハンナムドン)、陽川区木洞(ヤンチョング・モクトン)、城東区玉水洞(オクスドン)、麻浦区龍江洞(ヨンガンドン)などの名が現れ始める。不動産市場の暴騰期に人口に膾炙した江南3区と「麻龍城」などが、オ市長支持の基盤となったということを意味する。
江東区(カンドング)に住む40代の市民は、「家を買えなかった人たちが感じる剥奪感に比べればぜいたくな言い分だろうが、実際に居住することを目的として分譲を受けたのに、政策の失敗で価格が上昇したせいで税金ばかりが上がり、売却して引っ越そうとしても譲渡税、取得税のことで悩ましいのが現実」と語った。瑞草区に50年以上住んでいるある会社員は「不動産政策の失敗や保有税増税に対する不満もあったし、『それ見ろ。お前らも口ではもっともらしいことを言っておきながら、結局裏ではうまい汁を吸っていたじゃないか。自分は少なくとも偽善者ではない』という雰囲気が生じていたように思う」とし「今回は江南の人たちが投票所に出向く大義名分ができたと思う」と述べた。保有税引き上げなどの増税に対する反感とともに、不動産において「他人の過ちには厳しく、自分の過ちには甘い」政権担当層に対する信頼の危機が相乗作用を起こし、こうした「報復投票」を可能にしたということだ。これは、前日にリアルタイムで集計された自治区ごとの投票率からも予測されていた。平日に実施された4・7補欠選挙で、江南3区が早期に平均を上回る時間帯投票率を記録したことで、与党の審判へと転じた民意の離反が予想されるという観測が多く出されていたのだ。実際に明知大学のウ・ソクチン教授(経済学)は、ソウル市の各自治区の昨年の集合住宅公示価格の上昇率と前日の投票率の相関関係を分析し、統計的に有意義な比例関係が表れているという分析結果をフェイスブックに公表している。
一方、住宅価格の高騰でマイホーム購入を諦めた賃貸に住む人々や庶民階層は、不動産政策の失敗への失望から、民主党に票を投じなかったものとみられる。民主党を支持してきたある40代の市民は「結局すべてが不動産政策の問題なので、投票すべきかどうか本当に悩んだ。民主党にも国民の力にも入れたくなかったので投票もしたくなかったのだが、それでも投票はしなければと思って第3の候補に投票した」と述べた。江東区で伝貰(契約時に保証金を家主に預け、月々の家賃は発生しない不動産賃貸方式)で借家に住んでいる40代の会社員は「文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足直後から住宅価格を必ず安定させると大言壮語するのを信じてそれを待っていたら、その間に3億ウォン(約2940万円)台だった伝貰が8億ウォン(約7840万円)になった。政府与党を信じていたら貧しい伝貰難民になってしまって、あきれて投票する気も起きなかった」と話した。実際に、民主党支持が強い衿川区(クムチョング、52.2%)、冠岳区(クァナック、53.9%)、中浪区(チュンナング、53.9%)、江北区(カンブック、54.3%)などは、全体の平均(58.2%)に満たない低い投票率を記録している。
政治評論家のユ・チャンソンさんは「不動産保有税の増税に対する反感と『他人の過ちには厳しく自分の過ちには甘い』与党の姿勢が、高価マンションの集中する江南3区などで怒りの投票行動を招いたとすれば、伝統的な民主党支持層では投票を放棄する気持ちにさせるという双方向の影響を及ぼした」と指摘した。