3月25日午前7時6分。
東海に面している咸鏡南道咸州(ハムジュ)一帯から「未詳の飛翔体」が発射された。この飛翔体は東、つまり日本に向かって約450キロを飛んでから東海に落ちた。最高高度は60キロだった。
それから19分後、2体目の飛翔体が打ち上げられた。この飛翔体も最初の発射体同様の軌道を描いた。
今月21日の巡航ミサイルに続き、北朝鮮が4日ぶりに「未詳の飛翔体」を発射したことを受け、韓日当局には緊張が走った。
韓国合同参謀本部広報室は同日午前7時25分、記者団に送ったショートメールで、「北朝鮮、東海上に未詳の飛翔体を発射」という“第一報”を伝えた。“第二報”が出たのは40分後の午前8時15分だった。「朝、咸鏡南道一帯から東海上に向かって未詳の飛翔体が発射されており、追加情報については韓米情報当局が精密分析している」という内容だった。合同参謀は午前11時18分に送った最後のメールで、「軍は午前7時6分頃と7時25分頃、北朝鮮咸鏡南道咸州一帯で東海上に短距離ミサイル2発が発射されたことを把握している。今回の飛翔体の飛行距離は約450キロメートル、高度は約60キロであり、詳細な諸元は韓米情報当局が精密分析している」と明らかにした。同飛翔体が何なのかについては、記者団との非公式な質疑応答で、「弾道ミサイルである可能性に重点を置いて情報分析している」と答えた。大統領府は同日午前9時、国家安全保障会議(NSC)常任委員会緊急会議を開き「米国の北朝鮮政策の見直しが進められている中、ミサイル発射が行われたことについて深い憂慮」を示し、「米国をはじめとする関連国と今回の発射の背景と意図を精密分析しながら関連協議を強化していく」ことにした。
緊張が走ったのは日本も同じだった。朝日新聞の報道によると、菅義偉首相は発射直後の午前7時8分、「情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対し迅速・正確な情報提供を行うよう」指示した。さらに午前8時から約10分間、国家安全保障会議(NSC)を開いた。
日本防衛省も2回にわたって資料(お知らせ)を発表した。1回目の速報では「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射された」としたが、2回目の続報では「北朝鮮は…合計計2発の弾道ミサイルを東方向に発射したもようだ。従来から北朝鮮が保有しているスカッド(短距離弾道ミサイル)の軌道より低い高度を、いずれも約450キロメートル飛翔したものと推定される」と明らかにした。今回の飛翔体が弾道ミサイルなら、昨年3月29日以降1年ぶりの発射となる。
韓日軍当局による同日の資料には微妙な違いがある。韓国側は公式資料で「弾道ミサイル」の代わりに「未詳の飛翔体」「短距離ミサイル」などの用語を使った一方、日本側は速報で「弾道ミサイルの可能性があるもの」としたものの、続報では「弾道ミサイル」と断定した。また、日本が韓国より打ち上げ時間をそれぞれ2分早く特定したことも注目される。CNNなど米国メディアは米国当局者の話として、「北朝鮮が弾道ミサイルを発射した」と報道している。
同じ飛翔体をめぐり、韓日の情報分析に微妙な違いが見られるのは、朝鮮半島情勢を見る両国の立場が異なるためだ。韓国は北朝鮮が無駄な挑発を止め、一日も早く朝米対話に復帰し「朝鮮半島平和プロセス」が再開されることを望んでいる。米国も同じだ。米国のジョー・バイデン大統領は21日の巡航ミサイル発射について「挑発ではない」と述べており、米ホワイトハウス高官は23日の記者会見で「国連安全保障理事会の制裁違反ではない」としたうえで、「我々は(米国が)対話の可能性を残していないと(北朝鮮が)認識する状況を望んでいない」とまで述べた。
現在、国連安保理は北朝鮮のあらゆる種類の弾道ミサイル発射を禁止しているため、北朝鮮が本当にこのミサイルを発射したとすれば安保理決議違反になる。また、北朝鮮が対話再開を望む米国の"誠意"を無視した格好になる。朝鮮半島情勢は多方面にわたって複雑にならざるを得ない。
しかし、日本は北朝鮮が実質的な非核化措置に乗り出すまで「最大の圧迫」を加えなければならないという立場を貫いている。今回の飛翔体が弾道ミサイルと確認されれば、国連安保理決議違反を理由に北朝鮮への圧迫を強化することができる。菅義偉首相は「北朝鮮が弾道ミサイルを2発発射した。約1年ぶりのミサイル発射は我が国と地域の平和・安全を脅かすもので、国連安保理決議違反でもある」と述べた。
北朝鮮が発射した飛翔体をめぐる韓日の情報分析に微妙な違いが見られる中、近く最終結果が出る米国の「北朝鮮政策見直し」をめぐる韓日の駆け引きも激しくなる見通しだ。米国は来週、ソ・フン国家安保室長と北村滋国家安全保障局長を呼び、「米国の北朝鮮政策見直し」の結果を説明する。少しでも対話の余地を残したい韓国と、圧力を強化しようとする日本の間の悽絶な神経戦は避けられないものとみられる。