禁固以上の罪を犯した医師の免許を取り消すことを内容とする医療法改正案が19日、国会保健福祉委員会の審議を通過し、今月25日には法制司法委員会に上程される。大韓医師協会(医協)は、改正案が法司委で可決されれば「新型コロナウイルスワクチン接種への協力」を中止することを表明しているが、専門家や世論の視線は厳しい。韓国は他国と比べても罪を犯した医療従事者への処罰が軽く、医師協会の自主規制も容易ではなく、医師も弁護士などの他の専門職と同様に社会的責任があるという判断のためだ。
今回の医療法改正案は、禁固以上の刑を言い渡された者は、刑執行終了後5年間にわたって医療関係免許を取り消すことを規定している。ただし医療行為のうち、業務上過失により死に至らしめたケースは例外とし、医療陣が手術を拒否する状況が生じないようにした。
もともと、医療法は1973年から「犯罪の区分なく禁固以上の刑を言い渡された場合」を免許取り消しの事由としていた。しかし、2000年に政府が医薬分業を推進する過程で、医師側との裏合意の末、医療法を改正することによって、免許取り消し対象となる犯罪の範囲を「虚偽診断書作成などの刑法上の職務に関する犯罪と保健医療に関する犯罪」に狭めた。
しかし、医療従事者の処罰範囲が狭く、刑罰も軽いという指摘は常に提起されてきた。昨年11月に国会保健福祉委員会のホン・ヒョンソン首席専門委員が作成した検討報告書によると、日本では「(犯罪の制限なしに)罰金以上の刑を受けた者」に対し、医療関係免許を取り消すことになっている。ドイツでは、医療過失による傷害、詐欺、性犯罪、文書偽造、脱税など、職務と直接・間接的に関連性のある罪を犯した医療関係者の免許と許可を取り消す。英国では、患者との不適切な関係のような業務上の犯罪だけでなく運転、暴行、性犯罪、不正行為などの個人の犯罪も、医療関係登録の取り消し・停止の対象となる。
今回の医療法改正案には、性犯罪を犯した医療関係者に対して繰り返し「1カ月の資格停止」という軽い処分が出たことに対する問題意識も込められている。保健福祉部の資料によると、2015年以降の医師や漢方医による性犯罪事件は5件だが、いずれも資格停止1カ月の措置を受けたのみ。大腸内視鏡検査を受けるため、睡眠導入剤を打たれて寝ていた女性患者3人に強制わいせつを働き、懲役2年6カ月を言い渡されたY医師が代表的な例だ。
さらに今回の改正案は、医療関係者の免許を永久に剥奪するのではなく、事実上5年の資格停止にとどまる。その後は免許の再交付を申請できるが、2015年からの5年間で124件の免許再交付申請のうち、再交付が承認されたのは96.8%(120件)にのぼる。
「意図的でない交通死亡事故により禁固以上の刑を受け、資格が取り消される可能性もある」との医協の主張も、政府は一蹴した。保健福祉部のイ・チャンジュン保健医療政策官は22日のブリーフィングで「交通事故による死亡事故は大半が罰金刑で、実刑や禁固以上の刑は無免許運転や事故相手となった運転者に対する暴行など、意図的かつ悪質な事故の場合に限られる」と述べた。
弁護士が起こした憲法訴願において、「医師などは職務範囲が専門領域に制限されている一方、弁護士は法律事務全般に及ぶ」との趣旨の言及をした2019年の憲法裁判所の決定を引用し、職務範囲が異なる医師と弁護士を同程度に処罰するのは不当だとする医協の主張に対しても、反論が出ている。元憲法裁判所研究官のノ・ヒボム弁護士は「医協は我田引水的に解釈している。当時の憲法裁の決定は、医師に公共性や社会的責任がないと言ったのではなく、医師を優遇するのは正しいとすることの根拠として使える決定でもない」と述べた。
医師でもある保健医療団体連合のチョン・ヒョンジュン政策委員長は「昨年の集団休診時にも見られたように、医師社会は医協が統制できていない状況なので、重大犯罪を犯した医療従事者に対する自主規制はまともに行われ得ない」と述べた。ソウル大医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は、「不合理な部分があるなら代案を示して要求すべきであり、はじめから『ワクチン接種への協力はしない』『ストをする』と主張する医協の態度は、ワクチン接種に社会全体が死活をかけている局面では非常に不適切」と指摘した。