政府の医学部定員拡大政策に反対し、医師国家試験の実技試験受験を拒否した医大生たちに、再受験の機会を与えるかどうかをめぐり賛否世論が激しく対立している。政府は2回も試験受付日を延長したものの、2700人余りの医大生が受験しなかった。大韓医師協会などは、新規の医師の輩出が少なくなることで生じる医療人材の空白を考慮し、再受験の機会を与えるべきだと主張しているが、集団休診後に与えた再受付の機会をも拒否した医大生たちに救済案を提供するのは不公正だという反対世論は小さくない。最近動き始めた医師・政府協議体も医大生の再受験問題で進展がない中、政府はこれといった対策を出せずにいる。
他の試験との公平性を無視? 国民世論は冷ややか
これまで政府は「国民的同意」が先行しなければ再受験の機会を与えないという原則を掲げてきた。実際に「医大生の救済に反対する」という大統領府国民請願に57万人以上が同意するなど、国民世論は冷ややかな状況だ。大学院生のKさん(25)は「(医師らによる)ストライキ当時、(医大生が)政府の政策が不公正だとして集団行動をとったと理解している。そのような行動をとった人々が、機を逃した試験を受けさせてほしいと言うのは矛盾」と話した。他の試験との公平性も損なうという指摘だ。市民社会も、中途半端に救済案を提供してはならないという気流が強い。全国保健医療産業労働組合のパク・ミンスク副委員長は「国民世論を考慮し、保健福祉部が原則を守るのが正しい。そうしてこそ、もう二度と患者の命と安全を人質にした集団的診療拒否をしないだろう」と主張した。当時、大統領府は国民請願に対して「国民の受容性などを総合的に考慮しなければならない状況」だとし、明確な答弁を避けた。
こうした世論が広がっているにもかかわらず、最近、政府・与党内では立場を変える可能性があるという雰囲気がうかがわれた。今月4日、チョン・セギュン首相が国会で「国家レベルで見れば、医療人を養成することも非常に重要な責任だ」と述べたのに続き、5日には福祉部の高官が記者団に対し、「政策的には医療人員の需給や、救急室での必須医療問題など考えなければならない部分が多い。保健当局としては悩ましい」と言及した。汎医療界闘争特別委員会も、医師国家試験再受験問題の解決要求と医・政協議体の対応を分離する方向で方針がまとまり、政府・与党と水面下で交渉が行われているのではないかという観測が流れた。
受験の機会を与えなければ、今後数年間医療人員の需給が深刻
政府が強硬対応だけで貫けないのは、第一線の医療現場の医療の空白問題が発生することになれば、その負担をそのまま抱え込まなければならないためだ。通常、全国約220の大規模病院は毎年3月初めに約3000人のインターンを採用する。しかし、来年は今年の受験者の14%のうち合格者である約400人だけがインターンを志願することになる。その結果、再来年にはレジデント1年目が不足し、インターン志願者は今年の未受験者を含めて2倍になるなど、数年間は需給問題が続くことになる。インターンとレジデントが病院内の応急室や手術室などで受け持っている業務は少なくない。「専攻医法」によって週に最大88時間まで「研修」という名のもとに仕事をさせることができるが、給与は専門医の半分にも満たない。
ある医大の4年生は「国家試験拒否のときは、専攻医の人材を活用する大規模病院の長たちが政府を圧迫するだろうから、結局は政府が再受験の機会を与えるだろう、という予想が多かった」と語った。医師養成体系が「医師国家試験による免許取得→大規模病院で専攻医(インターン1年、レジデント4年)研修→専門医取得後、追加研修、就業または開業」という手順で組まれている状況では、集団行動をしても救済案が提示されると考えたということだ。
これに加えて医療界は、専攻医が少なくなれば、選ぶ傾向の強い首都圏の大規模病院や皮膚科、整形外科などの人気の科に集中し、必須・地域医療はさらに脆弱になると主張している。兵役義務の代わりに農漁村などの保健医療脆弱地で働く公衆保健医も、例年より380~400人少なく投入される見通しだ。今年、漢方医や歯科医を除いた公衆保健医は全国で1908人だった。
政府はひとまず「入院担当専門医」制度の拡大で対策を取ることを検討している。これは、上級総合病院と総合病院が入院患者の初期診察と経過観察、相談、退院計画の樹立などを担当する専門医を置けば、別途に健康保険報酬を付与する制度だ。ただ、入院担当専門医の制度は医療界でも望ましい方向と見ているものの、人件費の差が大きく、すぐにも足りなくなる人材の空白問題が解消されるかは不透明だ。
専門家の一部は、再発防止の約束を前提に折衷案を講じることを提案している。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は「医大生の国家試験問題に対する国民の怒りを、8~9月の集団休診と切り離して考えてはならない」とし「国民を説得するには、二度と国民の命を担保にした集団休診をしないと医協が約束するか、救急室や集中治療室では集団休診による医療の空白が生じないような制度的装置を先に設けなければならない」と述べた。先月、主な大学病院の長たちは医大生の国家試験再受験を要請するという立場を明らかにし、国民に対する謝罪文を発表したが、当の医大生たちは謝罪したことがない。