新任のカン・チャンイル駐日韓国大使は、「国交樹立以来最悪」の韓日関係を解くために、日帝強占期の強制徴用などの歴史問題の「政治的解決策を模索すべき」と強調した。このかん政界は「政治的解決」の必要性を公然と提起してきたものの、これまでに政府が強制徴用賠償問題を「政治的」に解決するという立場を公式に表明したことはない。カン大使は、8日に損害賠償請求訴訟で「慰安婦」被害者が日本政府に勝訴した後の政府の対応過程に言及しつつ「過去の過ちを繰り返してはならない」と述べた。
カン大使は22日の赴任に先立って行われた17日の記者団とのオンラインによる懇談会で「この厳しい時期に両国関係の正常化と未来志向的な関係の構築という重大な課題を任され、重圧感を感じるほど肩が重い」と切り出した。カン大使は「今は1965年の(韓日)国交樹立以来最悪の状況」だとし「今は(過去と違って)歴史問題での対立から経済・安保分野にまで戦線が拡大」しているためと述べた。
カン大使は、強制徴用最高裁判決後の対立を通じて「我々は、歴史問題が経済問題ともつれれば、韓日双方にとってためにならないという教訓を得た」と述べた。そして先日の「慰安婦」被害者への賠償を命じた判決への「対応過程で過去の過ちを繰り返してはならないだろう」と付け加えた。
カン大使は、日本側の今回の判決への対応として、「韓国を国際司法裁判所(ICJ)に提訴すべきだ」との主張があることについては、「ICJ提訴以外にも、韓日協定文に問題があれば第三国に仲裁を任せるという方法もある」と述べた。韓日請求権協定で規定されている紛争解決手続きの一つの仲裁委員会の設置に触れたものだが、政府は先に、強制徴用賠償判決について日本政府による仲裁委への持ち込み要求を拒否している。
カン大使はこの日、数回にわたって「歴史問題は政治的解決策を模索していかねばならない」と強調した。カン大使は、強制徴用被害者問題の解決策については「(両国が)互いに大義名分と原則を守りつつ解決する方法はたくさんある」とし「専門家たちが提示した12の案がある」と述べた。12の案については具体的に紹介しなかったものの、すでに挙がっている代表的な解決策の中には、韓日両国の企業と国民の自発的な寄付金によって財団を設立し、被害者に慰謝料を支給しようという、いわゆる「ムン・ヒサン案」などがある。日本側は、2018年10月の最高裁判決で認められた日本企業の賠償責任を問わないという韓国政府の確約が必要だという立場であり、このような案には否定的な反応を示している。カン大使は「法は法であり、政治的に解決していかねばならない」とし「実際に(日本企業の韓国内資産の)差し押さえまでには時間がかかるだろう。最悪の状況に陥らないために両国が知恵を集めなければならない」と述べた。カン大使は、「韓国政府は2015年12月28日の韓日政府間『慰安婦』合意を履行していない」との日本側の指摘については「韓国政府は(合意内容について)、一度も問題を提起していない」とし「(和解・癒し財団の解消は)理事団などの財団関係者が辞表を出したために財団がなくなったものであって、韓国政府が合意を破棄したものではない」と主張した。
カン大使は、14日に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が信任状授与式で行った要請も紹介した。「文在寅大統領は、韓日関係の正常化と両国の協力体制の強化に努めてほしいと述べた」。また文大統領は「日本の東京五輪開催成功のために、必要ならばどんな役割もいとわない。菅義偉首相とも会って率直に話し合いたい」と述べたという。
一方カン大使は、20日に発足するジョー・バイデン米政権の「韓米日三カ国協力」の強化要求が韓国政府への圧力として作用する可能性はあるかという質問に答える中で、「GSOMIA(韓日軍事情報包括保護協定)は米国の強い意図によって拙速に実現したものだが、我々は受け入れた」と述べ、注目を集めた。カン大使はバイデン新大統領について「慰安婦問題をよく知っている方」とし、「米国は三カ国協力を重視するため、韓日の間で和解に多大な努力を傾けるだろう」との展望を示した。