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文在寅大統領の新年の辞、変化と改革より「回復」と「包容」に重点

登録:2021-01-12 06:07 修正:2021-01-12 06:45
文在寅大統領が11日、大統領府本館で新年の辞を発表している=大統領府写真記者団//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は11日、今年の新年の辞で「回復」と「包容」を国政運営のキーワードとして前面に出した。昨年に全世界を襲った新型コロナウイルス感染症による生命と安全への脅威と疲弊した国民の生活に対処し、社会のセーフティーネットを強化するという意味だ。文在寅政権発足後の2018~2020年における歴代の新年の辞で強調した検察改革推進や不動産投機との戦争などには言及しなかった。政権5年目に入っただけに、改革と変化よりは新型コロナの克服と国民経済に集中するという基調だと解釈される。

 文大統領はこの日午前、大統領府本館で新年の辞を通じて「新型コロナとの長い戦争は終わらなかった」としながらも、「新年は明らかに違う年になるだろう」と述べた。この日の新年の辞で最も多く登場した単語は「回復」で、合計15回だった。新型コロナの長期化による国民の苦しみと経済難から1日も早く脱し、日常に戻ろうという意向を込めたのだ。文大統領は「回復」の具体的な約束として、新型コロナウイルスのワクチンの全国民への無料接種を提示した。文大統領は「マスクから解放される平凡な日常に早く戻ることが急務」だとしながら、「優先順位にしたがい順番に全国民が無料で接種できるようにする」と明らかにした。これまでは、医療関係者など優先接種者に1年間の無料接種を検討してきた。

 文大統領は続いて「国家経済がよくなっても、雇用を回復し、小商工人や自営業者が被った打撃から回復するには、さらに多くの時間がかかるだろう」としながら、「新型コロナでさらに強まった格差を減らす包容的な回復を成し遂げることが何より重要だ」と述べた。それと共に、30兆5000億ウォン(約2兆9000億円)の雇用予算の第1四半期への早期投入、特殊雇用職への雇用保険の適用拡大、扶養義務者の基準廃止、傷病手当、全国民雇用保険制度など、これまで明らかにしてた政策を推進する意向を繰り返し強調した。

 1年前は「不動産投機との戦争で決して負けない」という意向を明らかにした文大統領は、今回は不動産市場への不安について「申し訳ない」という表現を初めて使った。文大統領は「住居問題のひどさに大きく落胆している国民の皆さまには大変申し訳ない。住居安定のために必要な対策作りをためらわない」と述べた。続いて文大統領は「特に供給拡大に重点をおき、早急な効果をみられる様々な住宅供給案を迅速に用意する」と述べた。

 常に文在寅政権の中心的な改革課題として登場していた検察改革については言及しなかった。代わりに、まもなく発足する高位公職者犯罪捜査処を念頭に置いた「権力機関の制度化」という表現を用いた。彼は「権力機関の改革とは、抑制と均衡を成し遂げること」だとしながら、「昨年、長い間の課題であった法制度的な改革をついに成し遂げた」と述べた。

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長のソウル答礼訪問など、南北関係改善の意向を積極的に表明した昨年とは異なり、今年は南北関係には多くの時間を割かなかった。「いつでもどこでも会い、非対面の方式で対話できるという私たちの意志は変わらない」と強調し、新型コロナの防疫および保健医療の協力を基盤とする「平和・安保・生命共同体」を作ろうと述べた。

 文大統領が回復と包容を越えて提示したビジョンは、「先導国家」への飛躍だった。気候危機を乗り越える方法として「2050カーボンニュートラル」推進計画を具体化する一方、水素経済と低炭素産業で世界市場を主導していこうと提案した。また、昨年に国内外で大成功をおさめた防弾少年団(BTS)やBLACKPINK、映画『パラサイト』のようなK-コンテンツを始め、サッカーのソン・フンミン選手、野球のリュ・ヒョンジン選手、ゴルフのコ・ジニョン選手などのスポーツ選手に言及し、ソフトパワーでも先導国家としての地位を固めようと述べた。

 この日の文大統領は、K-防疫の成功とともに、経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかで最高の成長率、国民所得増加、株価指数と株価上昇率などを、新型コロナによる逆境の克服の根拠として提示した。しかし、このような数値では、韓国社会で強まっている資産両極化や不平等、OECD加盟国のなかで最悪の産業災害死亡率などの問題を説明できないという点で、「回復」と「包容」の意向を示すのには不足しているという指摘が出ている。議題と戦略グループ「トモア」のユン・テゴン政治分析室長は、「任期序盤の文大統領の力は共感とコミュニケーションだった。現在はあまりにも多くの人の苦しみが深刻であるだけに、政府がこれに対する責任を率直に認めアプローチしたとすれば、より説得力があっただろう」と述べた。

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/978252.html韓国語原文入力:2021-01-11 18:42
訳M.S

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