金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は「国家経済発展5カ年戦略遂行期間が昨年で終わったが、掲げた目標をほとんどすべての部門で大きく下回った」と、5日に開幕した労働党第8回大会の開会の辞で明らかにした。
金委員長は「労働新聞」6日付の2面に掲載された4400字の開会の辞で、2016年5月の労働党第7回大会以降の5年間を「これまで見たことのない、最悪の中の最悪が続いた難局」だとし、このように述べた。さらに「党第7回大会以後、祖国と人民の運命を年年歳歳守り抜く強力な担保を用意した」と強調した。2017年11月29日「国家核兵器の完成」宣言などを念頭に置いたものと言える。「核」に直接言及しない表現法も目を引く。
金委員長の朝鮮労働党第8回大会の開会の辞の文面から、金委員長の最大の関心事であり心配事は“経済”であることが分かる。7回にわたる以前の朝鮮労働党大会では、最高指導者が「目標未達」を明示的に認めた前例がないことから、今回の開会の辞で「大きく下回った」と述べたのは極めて異例だ。金委員長特有の「率直話法」と「実用主義リーダーシップ」の延長線上にあるものと言える。
北朝鮮経済の不振は予見されたことだ。米国と国連の強力な長期制裁に加え、2020年の“超大型突発悪材料”である新型コロナウイルスと水害という“三重苦”が北朝鮮経済を根底から揺るがしたからだ。脆弱な保健医療基盤が原因で、新型コロナの感染拡大を防ぐため、長期の国境閉鎖を実施を余儀なくされ、「北朝鮮経済の外部生命線」と呼ばれる朝中貿易を昨年10月以降ほぼゼロの水準まで減らした。中国は北朝鮮の対外貿易の98%を占めている。2012年の金委員長就任後、「北朝鮮経済の3大成長軸」の役割を果たしてきた「市場化の進展→朝中貿易の拡大→国営製造業の回復」の好循環構造が作動不能に陥ったようだという分析もある。
金委員長は開会の辞で、「経済の失敗」の主な原因を北朝鮮の伝統的レトリック「米帝と南朝鮮の敵視孤立抹殺政策」から見出そうとはしなかった。金委員長は「前進を妨害・阻害する様々な挑戦は外部にも内部にも存在する」としたうえで、「欠陥の原因を客観ではなく主観で見出し、主体の役割を高めてすべての問題を解決していく原則」を強調した。金委員長が昨年8月、党大会召集決定以後4カ月間「現場で働く労働者や農民、知識人党員たちの意見に、真剣に耳を傾けるようにした」とか、「過去5年間の党の財政事業を分析・総和し、改善対策を研究した」と述べた部分に注目する必要がある。第7回党大会で「恒久的戦略路線」と規定した「自強力第一主義」に沿った自力更生による難関突破の意志を示したものと言える。韓国政府の元高官は「状況は厳しいが、金委員長の処方が思想だけを強調する“主意主義”に傾かないことを望んでいる」と述べた。
これと関連し、「中国共産党中央委祝電」の全文が、党大会初日のニュースを取り上げた「労働新聞」6日付5面に掲載された事実は注目に値する。祝電は「中国側は地域の平和と安定、発展と繁栄を実現するのに新しく積極的に寄与する用意がある」と明らかにした。金委員長が朝中関係の強化に活路を見出す可能性を裏付ける内容といえる。