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韓国検察総長の復帰、文大統領が謝罪しても与党は“激昂”…その背景とは

登録:2020-12-28 06:27 修正:2021-01-06 09:10
強硬論の背景には「マスコミ、法曹、野党の既得権同盟が総攻撃」という危機感も 
「ユン・ソクヨル弾劾論」に裁判所に対する攻撃相次ぐ …自重・自省の声も 
行政裁判所が検察総長懲戒処分効力執行停止申立てを認容し、ユン・ソクヨル検察総長が今月25日、業務に復帰した。27日午前、ソウル瑞草区の最高検察庁前にユン総長を応援する花輪が置かれている/聯合ニュース

 韓国の裁判所は24日夜10時ごろ、ユン・ソクヨル検察総長が懲戒処分を不服として提起した執行停止申立てを認めた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は16時間後の25日午後2時20分、「裁判所の決定を尊重する」として判決を受け入れると共に、「混乱を招いたことに対し、国民にお詫び申し上げる」と述べ、国民に謝罪した。

 一方、与党の共に民主党の反応は違った。「制度改革で検察改革を完遂する」という党の立場とは裏腹に、「ユン総長の弾劾」や「検察捜査権の完全廃止」、「判事カルテル(の解消)」など、強硬発言や主張が相次いだ。こうした反応の背景には「メディアや保守野党、検察が共に民主党を攻撃している」という認識が色濃く残っている。

公式の立場は制度改革だが…

 共に民主党の公式の立場は「検察改革シーズン2」に突入するということだ。判決翌日の25日、イ・ナギョン代表とキム・テニョン院内代表、国会法制司法委員会所属の民主党議員らは非公開会議を開き、裁判所でも認めた問題点に注目し、再発防止対策を講じるなど、制度的検察改革に重点を置く方針を固めた。このため、党の権力機関タスクフォース(TF)を検察改革TFに発展させ、ユン・ホジュン法制司法委員長にTF委員長を任せることにした。

 しかし、議員たち個人の間では強硬発言が相次いでいる。キム・ドゥグァン議員は前日に続き、27日にも「弾劾と同時にユン総長とその家族に対する特検を進めたり、公捜処でユン総長個人の犯罪行為に対する捜査に着手すれば、憲法裁を説得することができる」と主張し、再び弾劾論を展開した。イ・ヘチャン代表時代に秘書室長を務めたキム・ソンファン議員はフェイスブックに「公捜処発足を控え、検察の強い抵抗に隠れていたが、一部判事も自分たちの既得権益カルテルが壊れることを快く思っていないようだ。司法と検察の過剰な政治化が民主主義を根本的に損ねる恐れがある。これからはオンライン上で巨大な既得権益カルテルに対抗するろうそくを掲げなければならない」と書き込んだ。キム・ビョンギ議員は「左遷され、閑職に追いやられていたユン検事を破格的に抜擢したのが文大統領だ。ユン総長は大統領に心から感謝すべきであり、人間としての道理も尽くすべきだ」と主張した。

 イ・ナギョン代表もこのような反発に加わった。イ代表は「裁判所の決定を尊重する」という文大統領のメッセージが発表された直後、フェイスブックに「大韓民国が司法から過剰な支配を受けているという国民の懸念が高まっている。政治の司法化、司法の政治化が限界を超えたという嘆きも聞こえる」という書き込みを残した。裁判所が“政治的判決”をしたのではないかと、遠回しに非難したのだ。

根深い「被包囲」意識…強硬支持層のご機嫌伺いも

 党内では今回の事案を「保守メディアと法曹、野党の『国民の力』が一丸となって動いた結果」と見る認識が広まっている。「検察は検察-メディア-保守野党につながる強固な既得権益同盟の先鋒だ。検察を改革しなくては大韓民国の未来も民主主義の発展も大統領の安全も保障できない」というキム・ドゥグァン議員の発言は、こうした認識をよく表している。ある再選議員は「『カルテルの結果、このような判決が出た』という主張には同意しないが、『そのようなカルテルが形成されており、作動している』ことについては、私をはじめ党内で共感が広がっている」と述べた。

 ユン総長の懲戒処分に対する裁判所の判断がチョ・グク前法務部長官の妻、チョン・ギョンシム教授に対する一審判決の翌日に出たのも、議員たちを激昂させた。これにソウル・釜山(プサン)市長補欠選候補の党内選挙やイ・ナギョン代表の後任を選ぶ次期全党大会、2022年大統領選候補党内選挙につながる大型党内選挙を控え、党指導部と議員が党員世論を主導する強硬な支持層の顔色をうかがう側面も無視できない。

 ただし、週末には「冷静に制度改革に集中しよう」という自省の声もあがった。ホ・ヨン共に民主党報道担当は26日、フェイスブックに「我々も感情をコントロールしなければならない」とし、「弾劾は憲法裁の棄却につながる可能性がある。再び口実を、逆風を提供してはならない。法的名分を徹底的に立てなければならない」と主張した。

週末に入ってからは慎重・自省論も

 当選6回のイ・ソクヒョン元国会副議長もフェイスブックの書き込みで「ユン総長弾劾を主張する与党重鎮がいるが、良い戦略とは思えない」と指摘した。彼は「国会が(弾劾請求の議決を)しても、憲法裁判所が(これを認容するのは)難しいだろう。(検事)懲戒委員会で解任でも免職でもない、停職2カ月の処分を下したことが、弾劾決定には大きな障害(になる)」と指摘した。また「騒ぎ立てた割には中身のない弾劾よりも、検察の捜査権の分離と意識ある公捜処長を選ぶことが、いま国会がやるべきことだ」と強調した。

 初代大統領府報道官を務めたパク・スヒョン党広報疎通委員長もフェイスブックに「検察総長の弾劾、判決判事の弾劾、公捜処で攻撃など、党内の意見が多岐にわたっており、まとまっていない。冷静に秩序を見いださなければならない」とし、「検察改革とユン・ソクヨル問題を同一視したが、ユン・ソクヨル懲戒がなぜ検察改革なのかを国民に説明できなかったのが敗因」だと分析した。さらに「これからは立法と国会と民主党の時間だ。『捜査権と起訴権の分離』を制度化し、肥大化した警察に対する不安も解消しなければならない」と指摘した。

キム・ウォンチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/976079.html?_fr=mt1韓国語原文入力:2020-12-2721:59
訳H.J

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