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「判定勝ち」の韓国検察総長…公正性問題・検察不信・反感が克服すべき課題

登録:2020-12-25 08:38 修正:2020-12-25 09:11
法務部の懲戒圧迫を越えて復帰 
文大統領と張り合う状況で勝利
今月1日、裁判所の職務停止効力執行停止の決定で、最高検察庁に出勤したユン・ソクヨル検察総長/聯合ニュース

 憲政史上初の現職検察総長に対する懲戒、これを不服としてユン・ソクヨル検察総長が行った文在寅(ムン・ジェイン)大統領と張り合った法廷闘争の勝者は、ユン総長だった。自分が主導したチョ・グク前法務部長官の妻、チョン・ギョンシム教授事件の捜査が一審で有罪判決を受けたのに続き、懲戒執行停止まで受けたユン総長は、復帰後、自分の考えを迷わず行動に移すものとみられる。

 ユン総長の任期はあと7カ月しか残っていないが、懲戒の不当性が確認され、いつにも増して力を得た状態だ。ユン総長は昨年7月の就任から1カ月後に“着手”した「チョ・グク一家」の捜査で与党の集中攻撃を受けた。文在寅政権の検察改革の象徴的人物であるチョ前長官一家に対する捜査で、文在寅政権とユン総長の蜜月関係は瞬く間に壊れた。結局、チョ前長官夫妻を起訴したが、同時に文在寅政権の信任も失った。

 チョ長官の後任として就任したチュ・ミエ法務部長官との関係は悪化の一途をたどった。法務部長官と検察総長の人事協議はなくなり、チュ長官は人事正常化を名分にいわゆる「ユン・ソクヨル師団」を地方に飛ばし、ユン総長の“手足”を切って孤立させた。監察権を手段に、検察内部の不正疑惑が出るたびにユン総長との衝突も頻繁になった。ユン総長もチュ長官の攻撃に対応し、「検察とマスコミの癒着」疑惑の捜査を妨害するなど無理な手段を何度も使った。今年10月にユン総長が最高検察庁の国政監査で政治参加を示唆した発言は最大の失策だった。結局、チュ長官はこれまでの8件の不正疑惑を集めて懲戒を請求し、その結果、ユン総長は停職2カ月の懲戒が確定した。

 裁判所の今回の懲戒執行停止決定は、懲戒取り消しを請求した本案訴訟の一審判決から30日までの効力だ。懲戒の手続きと実体を争う事件であり、判例もない状況なので、一審判決が出るまで長い時間がかかる可能性もある。ユン総長としては任期を全うする可能性が高くなったということだ。チュ長官も辞意を表明した状態なので、ユン総長を制御する人もいない状況だ。チュ長官とユン総長の対立に対する世論の嫌気も大きかったため、後任の法務部長官もユン総長を尊重して関係を確立する可能性が高い。チョン・ギョンシム教授事件の一審判決で捜査の正当性まで認められたユン総長としては、より自信を持って職務を遂行できるようになった。

 もちろん、ユン総長が前途洋々というばかりではない。職務復帰後、大田(テジョン)地検の月城(ウォルソン)原発事件を指揮し「生きた権力に対する捜査」を強調するだろうが、最高検察庁の国政監査で政治参加を示唆した発言に足を引っ張られる可能性が高い。「退任後、政治はしない」という宣言・約束がない限り、文在寅政権と対立し勝利した野党の大統領候補として人気はさらに上がるだろうし、「政治家を目論む検察総長」の捜査指揮には公正性問題がつきまとうことになる。来年初めに発足する高位公職者犯罪捜査処(公捜処)も危険要素だ。ユン総長が「裁判部の政治傾向分析文書」の作成を指示したという職権乱用の疑いなどが公捜処の第1号事件になるという話が、早くも政界から流れている。ユン総長は職務に復帰し判定勝ちを収めたが、これを「検察の勝利」と解釈するのは性急かもしれない。ユン総長が文大統領と対立する姿から、司法府の判断とは別に検察に対して不信感と反感を覚える世論も少なくないからだ。

キム・テギュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/975884.html韓国語原文入力:2020-12-2507:06
訳C.M

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