京畿道抱川(ポチョン)のある野菜農場で働くネパール出身の移住労働者Aさん(27)は、トイレに行く度に重ね着をする。抱川はマイナス20度にまで下がるが、簡易トイレが設置されているのは、Aさんの住むビニールハウスの外だからだ。「冬は寒くてトイレに行くのがつらいです」。夏には、簡易トイレに充満する排泄物のにおいが、ビニールハウス内にサンドイッチパネルで建てられた縦横2.5メートルの掘っ立て小屋にまで入ってくる。「『社長』は(大変だと訴えても)聞くふりすらしません」。Aさんはクリスマスも掘っ立て小屋で疲れた体を休めなければならない。
30歳の女性移住労働者が今月20日、ある農場のビニールハウス宿舎で死亡しているのが発見されたことで、移住労働者の劣悪な居住環境の改善を求める声が再び強まっている。
移住労働者の支援活動を行っている人々は、労働者たちが住む臨時居住施設は「人が住んではいけない所」だと言う。抱川移住労働者相談センター代表のキム・ダルソン牧師は「ビニールハウス宿舎は床が薄すぎて断熱ができておらず、すきま雨がひどい。暖房設備は電気カーペットと電気ヒーターだけ」と語った。
火災や水害などにも弱い。今年9月には、京畿道抱川のある野菜農場のビニールハウスで火災が発生し、5人の移住労働者が命を失いかける事故も起きている。キム・ダルソン牧師は「サンドイッチパネルなので火災に弱いのに、火災感知器や消火器は見られない」と話した。8月に豪雨で京畿道利川市栗面(イチョンシ・ユルミョン)の山陽(サニャン)貯水池の堤が決壊した際には、地域の被災者避難所に収容された人の80%以上が移住労働者で占められた。常時浸水の可能性のある農地に移住労働者のビニールハウス宿舎があったためだ。
加えて、移住労働者の寮として使用される「ビニールハウス住居」は違法だ。昨年、労働基準法施行令には「寮の構造と設備」および「寮の設置場所」規定が追加された。自然災害の危険があったり、湿気や浸水の恐れがある場所には寮の設置はできず、採光のための窓、換気や防災の設備を必ず備えるべきことが定められている。このような「違法」臨時居住施設や作業場付属空間に居住している、農畜産漁業に従事する移住労働者は、実に58.1%に達する(「2018年移住労働者の労働条件と居住環境実態調査」移住と人権研究所・国家人権委員会)。
にもかかわらず、移住労働者たちはわずかな賃金で高い寮費を払わされている。「地球人の停留所」のキム・イチャン代表は「寮費として1日に2時間分の賃金を払わされるところが多い。ビニールハウスに住んでいても、月に50万ウォン(約4万6900円)以上の金額を寮費として支払っている」と話した。雇用労働部は「農畜産業標準勤労契約書作成ガイドライン」を作成し、農場主が臨時居住施設で食住を提供する際には、その対価を月額賃金の13%以内とするよう定めている。キム・ダルソン牧師は「規則があるのみで、家賃は農場主の言い値。無法地帯だ」と指摘した。
一方、雇用労働部は24日、「今後、農畜産業の外国人労働者の居住施設を改善するため、ビニールハウス内のコンテナ組み立て式パネルなどを宿舎として提供する場合は、雇用許可を出さないことにした」と発表した。しかしキム・イチャン代表は「劣悪な環境にいま現在置かれている移住労働者のための対策はない」とし「事業主と移住労働者の関係を『主従関係』にする雇用許可制が廃止されない限り、劣悪な居住環境についても抗議できない移住労働者の苦しみは続くだろう」と指摘した。