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帰国を目前にした移住労働者、「ビニールハウス宿舎」で冷たい遺体となって発見

登録:2020-12-24 10:10 修正:2020-12-24 12:34
カンボジア出身の女性農業労働者 
帰郷のため来月10日の航空券を買ったが 
抱川農場の宿舎で一人で泊まり、遺体で発見 
 
暖房の故障で同僚4人は移動 
氷点下18度の寒さの中、「凍死の可能性」高く 
市民団体「違法な臨時宿舎を禁止すべき」
寒波警報の出た20日、カンボジア国籍の移住労働者が京畿道抱川市の農場の宿舎で遺体で発見された。23日午後、現場で抱川移住労働者相談センター代表のキム・ダルソン牧師が説明している。同日、農場の代表は記者が訪ねると警察を呼んで取材陣を防いだ=イ・ジョングン記者//ハンギョレ新聞社

 30歳の女性の農業移住労働者Aさんは、故郷のカンボジアに帰るため来月10日発の飛行機のチケットを買った。しかし、飛行機のチケットだけを残し、ビニールハウスの宿舎の冷たい部屋で独り死んでいった。

 Aさんは20日午後4時30分ごろ、京畿道抱川市(ポチョンシ)のある農場のビニールハウスで死亡しているのが発見された。Aさんを最初に発見した同僚労働者のBさんは、Aさんが自分の部屋で斜めに横たわっていたため、寝ていると思って起こそうとしたところ息をしていなかったと、移住労働者団体に説明したという。

 23日、移住労働者団体はAさんが宿泊していた宿舎の暖房施設の故障が多かった点などを根拠に、Aさんが凍死した可能性が高いと主張した。移住労働者支援団体「地球人の停留所」のキム・イチャン代表は、「Aさんの同僚のCさんが『厳しい寒さが続いた17日夜、当該宿舎には電気が入らず暖房が効かなかった』と話した」と伝えた。抱川一帯は14日から氷点下10度以下の厳しい寒さが続いていた。共に暮らしていた女性労働者5人のうち3人は到底耐えられず、18日に他の労働者の宿所に移って週末を過ごし、Aさんと同じ部屋を使っていたBさんも19日に宿所を出たという。Aさんだけが一人で残り19日の夜を過ごし、20日午後に遺体で発見された。19日は農場が位置する抱川一帯の気温が氷点下18度にまで下がり、寒波警報が発令されていた。

死亡したAさん=抱川移住労働者相談センター提供//ハンギョレ新聞社

 この日、現場を訪れたところ、Aさんが泊まっていた宿舎はビニールハウスの中にサンドイッチパネルで仮設の建物を設置したものだった。暖房の故障について、農場関係者はハンギョレの取材に「女性たちが使う部屋なので他の所よりも常に暖かくしていた」とし、「おかしな噂が立っているだけ」と凍死疑惑を否定した。

 Aさんの正確な死因は、24日に実施される予定の解剖の結果が出れば分かる。同僚たちは、Aさんが「普段から病気もなく健康なほうだった」と話した。事件現場で血痕が発見されたため、警察は新型コロナウイルス感染による喀血の可能性を確認するため検体検査を依頼したが、結果は陰性だった。死亡したAさんは2016年3月に非専門外国人労働者ビザで韓国に入国した。議政府市(ウィジョンブシ)で働き始めたAさんは、2018年10月ごろ事業所の変更を申請し、今の職場に移った。Aさんは、最長許容労働期間の4年10カ月を満了し、来年1月10日に故郷に帰る予定だった。Aさんが死亡した事実は、同僚の労働者と大使館を通じてカンボジアにいる家族に伝えられたという。

 移住労働者の宿舎問題は指摘され続けてきたが、政府はこれといった対策を打ち出せずにいる。国会環境労働委員会のヤン・イ・ウォニョン議員(共に民主党)が雇用労働部から提出を受けた資料によると、外国人雇用許可を受けた事業所1万5773カ所のうち、雇用労働部が定めた外国人宿舎の最低基準(冷暖房施設、消防施設などの完備)に満たない事業所は5003カ所(31.7%)にのぼる。

 50あまりの市民社会団体は「農業移住女性労働者死亡事件対策委員会」を設置し、「なぜ21世紀に労働者が宿所で凍死するなどという事態が起こるのか」と強く批判した。対策委は政府に対し「被害労働者についての徹底した調査を通じて死因を究明し、遺族に対する謝罪を行い、適切な補償策を講じよ」とし、「ビニールハウス、仮小屋、組み立てパネルなどの違法な臨時施設宿所を禁止し、二度とこのようなことが発生しないよう対策を講じよ」と要求した。

抱川/イ・ジェホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/975694.html韓国語原文入力:2020-12-24 07:46
訳C.M

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