新型コロナウイルス感染症の第3波に対応して政府は「1万床の拡充」を急いでいるが、肝心の医療現場からは「病床が増えても患者をみる看護スタッフがいない」という訴えがあがっている。熟練した看護スタッフが「バーンアウト(燃え尽き症候群)」で去るなどしている中、残された医療スタッフが派遣人材の教育や重症患者の転院まで背負わされ、二重苦を強いられているという。医療人材の不足問題にその場しのぎ的な対応を行ってきた政府の安易さを指摘する声もあがっている。
保健医療労組は23日、ソウル永登浦区(ヨンドゥンポグ)の保健医療労組生命ホールで記者会見を開き、「限界に突き当たっているコロナ医療人材のための特別対策を立てなければ、診療システムの崩壊は避けられない」と述べ、中央災害安全対策本部(中対本)に緊急面談と医療現場懇談会の開催を求めた。保健医療労組のナ・スンジャ委員長は「コロナ専門病院の人材はそのままだが、(防疫当局が)無条件に病床ばかりを増やしているため、看護師1人当たりの患者数は増えている」とし「(人手不足解消のために)支援人材が派遣されているが、彼らを教育せねばならないため二重苦、三重苦を強いられている」と述べた。
コロナの医療現場で奮闘する看護スタッフたちは、防疫当局が最近確保したと発表した病床統計と、実際に使用できる病床数の間に乖離があると指摘した。治療施設(病床)が設けられていても、専門の看護スタッフがいなければ、実際には患者を入院させられない。同労組国立中央医療院支部長で同医療院看護師のアン・スギョンさんは「政府は『病床を1000床増やした』といった施設統計ばかりにこだわった発表をするが、スタッフの状況は異なる」とし「国立中央医療院には重症患者治療のためモジュール病床(臨時病床)が30床用意されているが、そのために採用された経歴のある70人あまりの看護師のうち、(業務過重で)すでに5人が退職した」と述べた。現在、国立中央医療院でECMO(エクモ=人工心肺装置)などの専門医療機器を扱える人材は、550~600人いる看護師の10%ほどに当たる約60~70人だという。同労組京畿道医療院利川(イチョン)病院支部長のイ・ヒョンソプさんも「専門性を把握することなしに、免許などの資格条件だけを満たした派遣人材が配置されているため、彼らが現場で果たす役割は極めて限定的」とし、派遣人材中心の人材調達方式を指摘した。
看護師たちは、病床不足が続いていることで、患者の転院に失敗する事態が起きていると説明する。アン・スギョン支部長は「首都圏では、患者の転院のための共同状況室が稼動しているが、病床の割り当てが取り消され、救急車に乗った重症患者が道路の真ん中で待機することもあった」と話した。イ・ヒョンソプ支部長は「急激に状態が悪化した患者は転院しなければならないが、(重症患者が適切な治療を受けられる)病床がないため、私たちの病院で亡くなった方もいた」とし「(上級総合病院などの)病院で適切な治療を受けていたら、結果は違っていたかもしれない」と悔しさをにじませた。