英語講師のAさんは英会話教室の院長から「仕事をする時は短いスカートか濃い色のストッキングを履くように」と要求された。院長は「『プロフェッショナル』な姿が重要だ」とし、椅子に尻だけを引っ掛けて座る姿勢まで指導した。これに対し、Aさんが国家人権委員会(人権委)に陳情を出すと、人権委は「職務とは関係のない露出を強要し、性的屈辱感を与えた」として、教室の院長がセクハラを行ったと判断した。
人権委は20日、この事例を含め、2018~2019年の2年間に是正勧告を行ったセクハラ陳情34件が書かれた『セクハラ是正勧告事例集』を発行したと明らかにした。人権委は「最近の陳情を見ると、被害者がセクハラ事実を訴える過程で否定的な世論や不利益となる措置、精神的被害にさらされるなど、2次被害を訴えるケースが増えている」と報告した。2018年以降に本格化した「MeToo運動」の影響とみられる。人権委の判断も変化した時代像を積極的に反映している。
人権委はまず、「被害者保護は単に加害者に対する懲戒などの人事措置にとどまらず、組織内の被害者に対する否定的な認識やうわさによる2次被害の防止まで含めなければならない」と判断した。同僚職員から受けた強制わいせつ被害を訴えてから、郡庁内でむしろ「互いに好意を抱く関係だったのに、今になって強制わいせつを受けたと言っている」「浮気されて夫が苦しんでいる」などといった悪意あるうわさを耳にしたBさんが出した陳情に対する決定文の一節だ。決定文において人権委は「(責任者の)郡長は、セクハラ2次被害防止のため、積極的に介入する必要がある」と明らかにしている。
また人権委は、性暴力において「被害者の明示的な拒否意思」は重要ではないと判断した。事件当時は拒否しなかったとしても、「むしろ表では応じ、心の中では耐えなければならない二重の苦痛があったはず」との判断だ。飲み会に参加した後輩職員に「王様ゲーム」などの過度なゲームへの参加を強要したり、わいせつなものが含まれる複数の単語で三行詩を作らせたりしたある新聞社のチーム長に対して出した決定文の一節だ。被害者のCさんは、このチーム長の相次ぐセクハラにより、精神科で処方される薬を服用するほど被害を受けたとして、人権委に陳情を出している。
影響力を持つ相手に自分を良く見せようとして褒めたからといって、性暴力を「合意による関係」とは断定できないと判断したケースもあった。教え子に「君とは夜の相性が良さそうだ」と発言するなど、性暴力を続けていた教授のD氏は、人権委の調査で「教え子が『教授は天才だ』、『教授の著書は世界的名作だ』と称賛した」と述べ、合意による関係を主張したが、人権委はこれを受け入れなかった。人権委は「これは師に対する尊敬の表れ、または陳情人の学業遂行に莫大な影響力を持つ被陳情人(教授)に自分を良く見せたいという気持ちの表れであって、これを超える理性的な好意の表れと考えることは困難」とし、大学に捜査を依頼することを勧告した。